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三菱『歴代デリカのすべて 連載第3回』星を継ぐもの……三代目デリカのサクセスストーリー


誕生から50周年を迎えた三菱デリカの五世代50年の歴史を振る連載企画の第3回。三代目デリカは二代目に続き「スターワゴン」を名乗り、二代目にも増してレジャービークルとして進化していく。4WDワンボックスワゴンを時代が後押しし、歴代トップの販売台数を記録。そのモデルライフに迫る!

愛され続けて50年! 三菱デリカのアニバーサリー!

ボディを拡大し、エンジンはシリウスからサイクロンへ

デリカスターワゴン4WD(1986)

 1986年6月にデリカは7年ぶりのフルモデルチェンジを果たす。7年といえば、当時おおよそ4年ごとだった乗用車のモデルサイクルと比べると長く感じるが、モデルライフの長い商用モデルをラインナップしていることを考えれば当然といえば当然だったと言えるだろう。




 開発自体は83年春頃から始まっており、衝突安全性の向上と、ラゲッジルームから運転席までのウォークスルーを可能とするフルフラットフロアを実現すべく、セミキャブオーバーレイアウトにする構想もあったという。83年当時のワンボックス車は商用車がメインでありスペース効率に優れるフルキャブオーバーが当たり前だった。デリカは商用モデルもラインナップする以上、セミキャブオーバーは時期尚早と判断され、最終的には二代目と同じくキャブオーバースタイルを踏襲していく。




 とはいえ三代目に進化するにあたり、軽量化とボディ剛性向上を図るべくモノコックボディを採用。直線基調だった二代目に比べてやわらかな曲線でフォルムを構成する「ソフトキューブスタイル」とし、全長も二代目から200mm延長されている。

デリカスターワゴンに搭載されたサイクロンエンジン

 エンジンは1986年2月のギャランΣ/エテルナΣ、ミラージュ、ランサーフィオーレのマイナーチェンジモデルで初搭載されたサイクロンエンジンを採用。




 4D56型2.5リッター直列4気筒OHCディーゼルターボ(85ps/20.0kgm)とG63B型2.0リッター直列4気筒OHCガソリンエンジン(91ps/15.4kgm)が用意され、拡大したボディと重量増に対応する出力と新時代の環境性能、燃費性能が与えられた。

サイクロンディーゼルエンジン(4D56型2.5L直列4気筒OHCディーゼルターボ)
サイクロンガソリンエンジン(G63B型2.0L直列4気筒OHCガソリン)


「スターワゴン」を襲名し、よりタフに!よりゴージャスに!

デリカスターワゴン4WD(1986)
デリカスターワゴン(1986)


デリカスターワゴン4WD(1986)

 モデルチェンジを果たした三代目デリカのワゴン車は「スターワゴン」の名称を二代目より引き継ぐ。二代目モデルで既に4WDキャブオーバーワゴンのリーダーカーとしての地位を確立していただけに、三代目はキープコンセプトの正常進化したモデルだったと言えるだろう。




 しかし、時代はバブル景気が膨らんでいく過程にあり、デリカスターワゴンにもより豪華な装備が施されていくことになる。

三代目デリカスターワゴン

 この時代、アウディクワトロがオンロードを前提としたフルタイム4WDに先鞭を付けたとはいえ、まだまだ4WDはオフロード走行のため機能と認識されており、デリカに搭載される4WDシステムもオフロードでの走行を前提としたパートタイム式を二代目より踏襲していた。三菱がフルタイム4WDを採用するのは、1987年に登場した六代目ギャランVR-4(E38/E39)となる。

デリカスターワゴン4WD(1986)

 デリカスターワゴンはあくまで二代目から支持されてきたオフロード性能を徹底して磨き上げ、エクステリアではフロントガードバー、サイドステップ、リヤアンダーガードなど“オフロード”をイメージ付けるアイテムを装備。さらにこれらをホワイトで統一するとともに15インチのワイドタイヤをアルミホイールに装着し、タフで精悍なイメージを強調した。

ロングスライドパーソナル回転シート

 インテリアでは、セカンドシートに「ロングスライドパーソナル回転シート」を採用。二代目の回転対座シートからさらにアレンジ幅を広げ、広い室内をさまざまな用途に合わせて使えるシートアレンジを可能としていた。




 さらに、2WD車のみではあったが、後席ルーフの左右をグラスウインドウとした「クリスタルライトルーフ」を採用し、世界初の電動サンシェードも装備。広大な面積のガラスエリアにより明るく開放的な室内空間を手にいれることとなった。

クリスタルライトルーフ

多様なボディバリエーションと地道な改良

 ボディバリエーションはホイールベースの長さを「標準」と「ロング」の二種類用意するとともに、ルーフも標準の「エアロルーフ」と「ハイルーフ」を用意し、それぞれ組み合わせが可能だった。ただし、1986年の登場時は4WD車は全高を小型車枠(5ナンバー枠/全高2.0m以下)に収めるため標準ボディとエアロルーフの組み合わせのみの設定だった。




 4WDイメージの強いデリカではあるが、2WD車も引き続きラインナップしており、「如何にもオフロード!」といった外観の4WDに対し、クリーンでシンプルなスタイリッシュさを備えるとともに、クリスタルライトルーフを用意することで4WDとは異なったイメージを演出していた。


 


 87年9月の改良で電子制御燃料噴射装置「ECIマルチ」を採用。2WD車に大型樹脂バンパーを装着することで安全性の向上を図っている。88年8月には4WD車に4速AT仕様を追加し、4WD車のイージードライブ化に対応した。

デリカスターワゴン4WD/4速AT
デリカスターワゴン4WD/4速AT


 1989年8月の改良ではガソリンエンジン車にマルチポイントインジェクション(MPI)を採用した4G64型2.4リッター直列4気筒OHCガソリンエンジン(115ps/18.7kgm)を搭載。ユーザーから指摘されていたパワー不足を解消することに成功した。




 この排気量アップは、1990年度から2.0リッター以上の乗用車の自動車税が大幅に引き下げられることと無関係ではなかったと思われる。排気量2.4リッターの自動車税は、89年度までは8万1500円だったのが、90年度からは4万5000円になる。2.0リッターの自動車税3万9500円との差額は縮まり、バブル景気下の経済状況でこれくらいの税額アップあればむしろパワーアップの方が歓迎されたのではないだろうか。


 


 同時に、これまで設定のなかった4WD車のハイルーフ仕様とクリスタルライトルーフ仕様を追加。もともと人気のあったクリスタルライトルーフ仕様が4WD車に追加されたことで、デリカスターワゴンの販売はこの仕様が中心になっていく。これも自動車税の税率が、ボディサイズによる5ナンバー(小型車枠)/3ナンバー(普通車枠)とは関係なくなったことが影響しているのかもしれない。




 たゆまぬ改良は続き、90年8月にはヘッドライトを4灯式プロジェクタランプ化し、フロントマスクにガーニッシュを追加。4WD車は大型フロントガードを新デザインに変更し、2WD車はフロントバンパーを変更するなどフロントマスクを刷新している。

デリカスターワゴン4WD(1990)
デリカスターワゴン(1990)


 さらに最上級グレードとなる「スーパーエクシード」を追加。内装にエクセーヌ生地を採用し、カラオケ機能付きオーディオまで装備していた。




「スーパーエクシード」をトップに据えた「エクシード」系のグレードは、セカンドシートをキャプテンシートとして7名乗車とし、より室内の快適さを求めた仕様となっていた。

デリカスターワゴン/7名乗車(1990)
デリカスターワゴン/7名乗車(1990)


 91年8月の改良では、これまで5速MTのみだった2.4リッターガソリンエンジン車に4速ATを追加。衝突安全性の向上を図るべく、全グレードにサイドドアインパクトビームとハイマウントストップランプを追加している。




 インテリアでは本格派4WDに相応しい、ダッシュボード上の三連メーターを設置。高度計と傾斜計に加え、内外気温計を追加した。

高度計と傾斜計に加え内外気温計を追加したダッシュボード上の三連メーターを装備するデリカスターワゴン4WD(1991)。オフロード走行時に使用する助手席用の姿勢保持グリップがデリカの素性を感じさせる。

デリカスターワゴン4WD(1997)

 以降も、細かな改良を施しつつ、1997年10月に最後のマイナーチェンジを実施。フロントバンパーとクリアランスランプ、ターンシグナルランプを変更し、エアバッグを標準装備とした。

春夏秋冬を彩る特別仕様車にも注目

 レジャービークルとして人気を博していたデリカスターワゴンは、クラス唯一の本格4WD車を設定するということもあり、アウトドア志向のユーザーからは特に支持が厚かった。特に1980年代以降のスキーブームでは、多数の乗員とスキー板を乗せて出掛けられるゲレンデムーバーとして人気を集めていた。それだけに、二代目デリカスターワゴンで、スキーに特化した特別仕様車「シャモニー」が設定された(1985年)のも当然と帰結と言えた。




 もちろん、三代目デリカスターワゴンにも同様にシャモニーは設定され、フルモデルチェンジ間もない1986年10月には早々に追加されている。以降、87年から93年まで毎年設定される定番の特別仕様車となった。

デリカスターワゴン「シャモニー」(1986)
デリカスターワゴン「シャモニー」(1986)


デリカスターワゴン「シャモニー」(1986)
デリカスターワゴン「シャモニー」(1986)


デリカスターワゴン「シャモニー」(1986)
デリカスターワゴン「シャモニー」(1986)


デリカスターワゴン「サンタモニカ」(1987)

 1988年4月に登場した「サンタモニカ」は夏の特別仕様車。フランス東部、フレンチアルプスの観光地モン=ブラン=シャモニーに由来する冬のスキー仕様「シャモニー」とは一転、ロサンゼルス近郊のリゾート地から取った「サンタモニカ」はマリンスポーツをイメージしていた。




 2WDの「エクシード」グレードをベースにしており、2.0リッターガソリンエンジンと4速ATの組み合わせのみで、専用の内外装をまとい、標準とは異なるカラーのクリスタルライトルーフを備えていた。




 限定400台という設定だったが、こちらは残念ながらシャモニーと違い単発で終わってしまっている。

デリカスターワゴン「サンタモニカ」(1987)
デリカスターワゴン「サンタモニカ」(1987)


 1994年には春・夏シーズンをイメージした内外装に、オートキャンプを中心としたフィールドレジャーに適した機能を充実させた特別仕様車「ジャスパー」を発売。




 その翌年、95年に最後の特別仕様車となる「アクティブワールド」を発売し、これが三代目デリカスターワゴンの最後の特別仕様車となった。

デリカスターワゴン「ジャスパー」(1994)

働くデリカ……トラック&バン

デリカトラック(1994)

 三菱デリカはトラックとバンもスターワゴン同様に1986年6月にフルモデルチェンジ。ホイールベースを二種類用意し、バンにはエアロルーフとハイルーフ用意するのも同様だ。バンは荷物の積み下ろしを考慮した両側スライドドアを採用しているのがスターワゴンとの大きな違いとなっている。




 また、エンジンも二代目に搭載された1.4リッターと1.6リッターが残され、ディーゼルエンジンにもノンターボ(76ps)が用意されており、ワゴンとは異なるラインナップだった。


 


 バンボディのトピックといえば、1987年6月に登場した「キャンパーAタイプ/Bタイプ」。バンのロングボディをベースとしたベーシックキャンパーだ。




 その後、ドイツのライモ社製パーツなどを採用した本格キャンピングカー「キャンパー」「キャンパーロング」を特装車として発売。さらに、91年6月には特装車デリカ「キャンピングカー」シリーズを発売。タイプIはスターワゴン4WDがベースとなったが、タイプII〜タイプIVまではバン4WDがベースとなっている。




 さらに、93年5月にデリカキャンピング特装車「JB500」を発売。これはトラック4WDをベースとした本格的なモーターホームだった。




 バン&トラックの商用ユースに応えつつ、メーカー自らキャンピングカーを設定するのは初代以来であり、ユーザーからの期待の表れとも言えるだろう。

デリカバン4WD(1986)

デリカは滅びず……

四代目となるデリカ「スペースギア」

 1994年5月に四代目となる「スペースギア」が登場……にも関わらず三代目の「スターワゴン」はその後99年まで製造された。さらに、販売に至っては在庫販売が終了する2004年まで続いたというのだから驚きだ。




 確かに、キャブオーバーの「スターワゴン」からセミキャブオーバーの「スペースギア」に変身したことで、キャブオーバースタイルのユーティリティや取り回しの良さを求める根強いファン層がいたのは確かではあるのだが……。




 そんなこともあり、三代目デリカは86年から99年という実に14年に及ぶモデルライフを全う。その総生産台数は、三菱自動車の自社生産分でスターワゴン、バン、トラックを合わせて43万2748台に達した。これは歴代デリカ最多の登録台数だ。




 モデルライフがバブルの好景気がもたらすレジャーブームと、それに基づくRV(Recreational Vehicle)ブームという時代背景も、三代目デリカが登録台数を伸ばした要因でもあったと思われる。




 なお、三代目デリカは輸出仕様が2013年まで生産されていた。さらに、現在は台湾のCMC(China Motor Corporation/中華汽車)で生産が続けられており、「スーパーデリカ」として今も販売中である。




 ちなみにCMCは三菱自動車の現地パートナー企業で、三菱ブランド車に加え自社ブランド車の生産・販売を行なっており、デリカ(得利卡)は創業以来の1973年から生産している。

CMC(China Motor Corporation/中華汽車)SUPER DELICA/三菱得利卡

あぶないデリカ

 二代目デリカが銀幕に登場した話は第2回でお伝えしたとおりだが、三代目デリカも二代目に続き銀幕に登場しているのはご存知だろうか? 二代目よりも時代的に最近のハナシだし、登場する作品が自動車業界的に有名なモノだけに覚えている読者も多いと思う。




 二代目デリカが登場した作品は『あぶない刑事リターンズ』。ご存知、人気刑事ドラマ『あぶない刑事』の劇場版第4作で、1996年9月に東映系で公開された作品だ。『あぶない刑事』といえば日産レパード(F31)があまりにも有名だが、『あぶない刑事リターンズ』では三菱自動車が車両提供となったこともあり、デリカスターワゴン4WD(「GLXエアロルーフ」)が登場。ルーフやガードバーの間に赤色灯を追加した姿で激走している。




 物語終盤の登場ながら、カルト組織のアジトに壁を突き破って突入し、デリカから降り立つタカ(鷹山敏樹/舘ひろし)とユージ(大下勇次/柴田恭兵)……というド派手な活躍が印象深い。




 ちなみにRVRスポーツギアターボも登場しており、覆面パトカーとして仲村トオル扮する町田透がステアリングを握っている。

デリカ・スターワゴン EXCEEDエアロルーフ4WD(1986)


全長×全幅×全高:4460mm×1695mm×1975mm


ホイールベース:2240mm


トレッド:(前)1430mm/(後)1415mm


室内長×室内幅×室内高:3130mm×1530mm×1175mm


最低地上高:210mm


車両重量:1740kg


乗車定員:7名


最小回転半径:5.0m


エンジン型式:4D56型 水冷直列4気筒OHCディーゼル


ボア×ストローク:91.0mm×95.0mm


排気量:2476cc


圧縮比:21.0


最高出力:85ps/4200rpm(ネット)


最大トルク:20.0kgm/2000rpm(ネット)


使用燃料/タンク容量:軽油/60L


燃費:ー


駆動方式: 4WD


トランスミッション:5速MT


ステアリング形式:ラック&ピニオン


ブレーキ:(前)ベンチレーテッドディスク/(後)リーディングトレーリング


サスペンション形式:(前)ダブルウィッシュボーン式トーションバースプリング/(後)半楕円リーフスプリング


フレーム形式:ー(モノコックボディ)


タイヤサイズ:215SR15








デリカ・スターワゴン EXCEEDハイルーフ 2WD(1986)


全長×全幅×全高:4300mm×1695mm×1950mm


ホイールベース:2235mm


トレッド:(前)1445mm/(後)1380mm


室内長×室内幅×室内高:3130mm×1530mm×1260mm


最低地上高:190mm


車両重量:1440kg


乗車定員:7名


最小回転半径:4.5m


エンジン型式:G63B型 水冷直列4気筒OHC


ボア×ストローク:85.0mm×88.0mm


排気量:1997cc


圧縮比:8.5


最高出力:91ps/5500rpm(ネット)


最大トルク:15.4kgm/3000rpm(ネット)


使用燃料/タンク容量:レギュラー/60L


燃費:8.4km/L


駆動方式: FR


トランスミッション:4速AT


ステアリング形式:ラック&ピニオン


ブレーキ:(前)ベンチレーテッドディスク/(後)リーディングトレーリング


サスペンション形式:(前)ダブルウィッシュボーン式トーションバースプリング/(後)半楕円リーフスプリング


フレーム形式:ー(モノコックボディ)


タイヤサイズ:185SR14
『歴代デリカのすべて 連載第1回』初代デリカ誕生の物語三菱『歴代デリカのすべて 連載第2回』スター誕生……二代目デリカの躍進
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