2018年のニュルブルクリンク24時間レースが終わりました。

日本でも各種媒体の中継やパブリックビューイング等で応援された方も多いのではないでしょうか。GAZOO Racing、スバル/STIチームをはじめ、ドイツのRING RACINGとタッグを組んで出場したNOVELチーム、そしてファルケンタイヤ、ブリヂストンタイヤなどといった日本勢の奮闘を、皆さんそれぞれの視点で楽しんだのではないかと思います。

今年のレースも本当に多くの出来事がありました。感動的なゴールシーンに心を奪われましたが、少し時間が経過したところで、冷静に今年のレースを振り返ってみましょう。

 TOYOTA GAZOO Racingは、2015年から継続して参戦してきたレクサスRCが2017年のレースでSP3Tクラス2位を獲得したことから三年計画に区切りをつけ、2018年のレースにはレクサスLCを投入してクラスもSP-PROクラスに変更。新たなトライを開始した。

 これは、単に車種を刷新しただけではない。市販車に採用されているパーツの耐久テストを行なったり、将来的採用を見込んだ先行技術のテストも兼ねている。レースカーはもちろん、市販車をより良いクルマにするための様々なテストが行なわれるのだ。

 テストとはいえ、ニュルブルクリンク24時間レースに挑戦するにあたっては、当然日本国内やニュルブルクリンクでの事前テストをこなし、そこで発生したトラブルを解決した。そしてドライバーから指摘されたポイントを改善し、信頼性を確保したうえでの本番となったはずだった。

 しかし、いざレースが始まってみると、予想もしなかったアクシデントが次々にLCを襲った。

 スタート直後には、追突されたことでマフラーが破損。また、ブレーキトラブルやタイヤのバーストも。さらに、3速を失ってトランスミッションを交換するシーンも。エンジンにはECUのトラブル、最後には雨水がエアクリーナーに侵入して電気系のトラブルも発生。まさにモグラたたきゲームのように、次から次へと現れるトラブルをシューティングする必要性にかられた。

 トヨタのエンジニアはその都度原因を究明し、さらにトヨタ社員で構成されるメカニックがなんとかしてマシンを修復。まさに不眠不休のレースとなった。

 トラブルの原因を即座に発見・判断して対処法を選択したエンジニアの頭脳。また、レース中、たえず作業を実行し続けたメカニックの執念と技術と体力は、賞賛に値する。

 そして、ピットのメンバーと同様に、ドライバーの「センサー」にもスポットを与えるべきだろう。非常事態が発生しているクルマの傷が致命傷となる前に察知し、ピットにクルマを届けることに何度も成功したのは、決して「運」ではない。

 チームの三者ががっちりとシンクロしたことで、満身創痍のLCはスタートから24時間後のゴールまでたどり着くことができたのだ。

 レース後のミーティングで、プロジェクトを統括した緒方エンジニアリーダーは参加者全員に謝辞を述べつつも、声を詰まらせて大粒の涙を流した。

「本当に走り切れるのかと心配でした。メカニックの迅速な作業やエンジニアの判断を見ていると、まだまだ行けるなと、最後まで行けるなという気持ちにさせてもらいました。悔しい思いがいっぱいありますし、得るものもありました。来年のステップアップに期待してください」と、緒方エンジニアリーダーはモーターファンに語ってくれた。それは、チェッカーを受けるという最低限のミッションをクリアした安堵もあるだろうが、自分たちが作ったクルマにトラブルが出続けたというショック、チームに迷惑をかけたという謝意が強かったようにも見えた。

 GAZOO Racingカンパニーの友山茂樹プレジデントは

「やっぱりニュル。さすがニュル。新参のクルマにこれほど苦しい思いをさせてくれるというのを、久しぶりに思い知ったレースでした。途中心配になってピットに行ったら、血走った目で『絶対感想させますから』と3回ぐらい言ってくれました。本当に、最後まで完走させてくれてありがとう。みんな、いろいろ悔しい思いとか、情けない思いとか、不完全燃焼という思いもあるかと思います。でも、今回は久しぶりにGAZOOらしいレースができたと思っています。皆さんの頑張りに敬意を表したいと思います」と全員を前にして語った。



 関谷チーフメカニックも

「2008年、2009年、2010年にも、なんでこんなことが起こるの?というようなことがニュルのレース中にあり、なんとか頑張ってきたことを思い出しました。同じような経験を、今回若いメンバーが経験できたことは良かったと思います。これがニュルなんです。でも、ぜったいにこのままでは終われませんよ」と、目を輝かせて語ってくれた。



 完走・クラス優勝という栄誉を得た2018年のニュルブルクリンク24時間レースだったが、エンジニアリング的には「完敗」と言えるだろう。

 この「完敗」の原因を検証・解決することでLCは「成長」する。そして、TOYOTA GAZOO Racingのメンバーが「完敗」を克服することで「人」も成長する。

 それこそがニュルブルクリンク24時間レースに参戦する「理由」なのだ。

 今回のレースに参加した全員が、そして彼らのレースを見た全員が、GAZOO Racing活動の「原点」を感じることができたはずである。

PHOTO:雪岡直樹(NAOKI YUKIOKA)、渡辺文緒(FUMIO WATANABE)

TEXT:渡辺文緒(FUMIO WATANABE)

情報提供元:MotorFan
記事名:「 「ニュルブルクリンク24時間レース」参戦の原点に立ち返ったTOYOTA GAZOO Racing