理化学研究所(理研)創発物性科学研究センター創発ソフトシステム研究チームの福田憲二郎専任研究員、染谷隆夫チームリーダー、東レの北澤大輔主任研究員らの国際共同研究グループが、耐熱性と高いエネルギー変換効率(太陽光エネルギーを電力に変換する効率)を兼ね備えた「超薄型有機太陽電池」の開発に成功した

新しい半導体ポリマー「PBDTTT-OFT」と従来材料「PBDTTT-EFT」の構造式。直線状の側鎖(赤枠)を持つことが新しい半導体ポリマーの大きな特徴で、これによって高い結晶性と耐熱性を実現している

この研究成果は衣服貼り付け型の電源応用に大きく貢献すると期待できるもので、共同研究グループは理研独自のウルトラフレキシブル有機半導体デバイス技術に加え、新しい半導体ポリマーを開発することで、超柔軟で極薄の有機太陽電池の耐熱性とエネルギー変換効率を大きく改善。有機太陽電池は、最大エネルギー変換効率10%を達成しながら、100℃の加熱でも素子劣化が無視できるほど小さいという高い耐熱性を持ち、また大気環境中で80日保管後の性能劣化も20%以下に抑えられる。このような高効率と高安定性の両立により「ホットメルト手法」を用いた衣服への直接貼り付けが可能だという。



この研究成果で重要なのは、高エネルギー変換効率と高耐熱性を併せ持つ新しい半導体ポリマー「PBDTTT-OFT」を開発したことにある。耐熱性と高エネルギー変換効率を両立する「PBDTTT-OFT」は、これまで有機太陽電池の材料として広く用いられてきた「PBDTTT-EFT(またはPTB7-Th)」に似た骨格を持っているものの、「PBDTTT-EFT」に比べて直線状の側鎖を持ち、高い結晶性を持つ膜を形成し、熱による導電性の低下が従来の「PBDTTT-EFT」に比べて小さい。

超薄型有機太陽電池の電流・電圧特性。ガラス基板状の太陽電池特性(黒)と、超薄型有機太陽電池特性(赤)の比較。ガラスと比べても遜色のない性能を持つことが確認され、エネルギー変換効率は最大で10%を達成した

さらに、超薄型基板材料と封止膜にも新たな工夫を追加。従来の超薄型基板として用いていたパリレンに比べ表面平坦性と耐熱性に優れた透明ポリイミドを基板に用い、従来の超薄型有機太陽電池よりも高いエネルギー変換効率と耐熱性を実現。また、撥液性に優れたポリマーとガスバリア性に優れたポリマーの二層からなる封止膜構造(二重封止膜)を採用したことで、大気安定性を大きく改善した。



今回開発した超薄型有機太陽電池はガラス支持基板から剥離した状態で高いエネルギー変換効率を示す(右図)。具体的には擬似太陽光(出力100 mW/cm²)照射時における複数素子の平均値で、短絡電流密度(JSC)が17.2 mA/cm²、解放電圧(VOC)0.79 V、フィルファクター69%であり、エネルギー変換効率9.4%、最大10.0%を達成した。同研究グループは、これまでに超薄型有機太陽電池でエネルギー変換効率を7.9%まで改善していたが、本研究によってさらに約1.3倍向上させることに成功した。



また、この有機太陽電池を5cm角の超薄型基板に110個形成した上で電気的に接続させることにより、大面積モジュールを形成。このモジュールで、擬似太陽光(出力100 mW/cm²)照射時における最大電力36 mWを達成している。

ホットメルト手法による衣服への貼り付け試験

このような高い耐熱性を持つことにより、アパレル作製時に布地の接着などに一般的に用いられているホットメルト手法が使用可能になり、布地への貼り付けに成功した。布地の材質にはポリエステルを用い、超薄型有機太陽電池と布地の間に加熱によって溶けるポリウレタン製のメルトフィルムを挟み、加熱圧着をすることで太陽電池を布地に貼り付け(左図)。なお、同手法の前後で太陽電池の特性の変化や劣化はほとんど観測されなかったという。



本研究では、新しい半導体ポリマーと新しい基板材料、封止構造を組み合わせることで、耐熱性と高いエネルギー変換効率を持つ超薄型有機太陽電池を実現し、また太陽電池性能を劣化させることなくホットメルト手法で布地へ密着させることにも成功。衣服貼り付け型の太陽電池を容易に実現できるだけでなく、加熱を伴う過程にも耐えうるフレキシブルな電源となり、車内などの高温・多湿環境下でも安定して駆動する軽量な電源の実現が期待できる。

情報提供元:MotorFan
記事名:「 バッテリーを着る時代、到来?