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【スズキ・クロスビー試乗】デザイン良し、走り良し、居住性良し。だがシートと安全装備、そして価格が…。


「ハスラーの小型車版を」という、そのハスラーが2013年末の発表当初から上がっていた市場からの声に応える形で、ちょうど4年後の2017年末にデビューした、AセグメントのクロスオーバーSUV「クロスビー(XBEE)」。実際に見て、触れ、乗ってみると、単なる「ハスラーの小型車版」に留まらない、高い実力を備えていた。

東京モーターショー2017に参考出品されたスズキ・クロスビー
東京モーターショー2017に参考出品されたスズキ・クロスビー


このクロスビーは、昨年の東京モーターショー2017に参考出品されているが、9月の事前発表時に配布された内外装の写真を見た時点の印象は、まさに「ハスラーワイド」。かつてのワゴンRやジムニーなどに見られるように、軽自動車のハスラーを小型車サイズに拡大しただけのクルマのように感じられた。

東京モーターショー2017のスズキブースに展示されていたハスラー
東京モーターショー2017のスズキブースに展示されていたハスラー


だが実車を見ると、その印象は180度変わる。特にエクステリアは、ハスラーとは似て非なる、実にグラマラスなボディとなっていることが分かる。特に東京モーターショーでは、クロスビーのすぐそばにハスラーが展示されていたため、直接見比べるとその違いは一目瞭然だった。実際にクロスビーとハスラーで共用した部品は一つもないという。

スズキ・クロスビーの運転席まわり
スズキ・ハスラーの運転席まわり


スズキ・イグニス
スズキ・イグニスの運転席まわり


車内の運転席まわりを見るとさらに両車の違いは明確で、デザインのテイストこそ似ているものの幅方向のゆとりが決定的に異なる。一方でメーターパネルとフルオートエアコンのスイッチ類がイグニスとほぼ共通のため、ハスラーよりもイグニスとの兄弟関係が見て取れた。

スズキ・クロスビーのボディ骨格。紫が1180MPa級、金が980MPa級、青が440~780MPa級鋼板

そして、ボディやシャシー、ドライブトレインなど「走り」の部分は、より一層イグニスとの共通点が多い。イグニスやソリオと同じAセグメント車用の最新世代「ハーテクト」をベースとしながら、Bピラーやサイドシルに1,180MPa級の超高張力鋼板を使用するなど、ボディ全体の高張力鋼板使用比率を重量比ベースで47%に向上。FF車で960kg、4WD車で1000kgと、イグニスに対する重量増を80kgに抑えている。




ボディサイズは全長×全幅×全高=3760×1670×1705mm。同じプラットフォームを使用するイグニスおよびソリオの中間に位置するサイズで、より共通点が多いイグニスに対し60mm長く、10mm広く、110mm高い。ホイールベース2435mm、最低地上高180mmという数値はイグニスと同一で、4WD車のシステムもイグニスと同じ、通常走行時は前輪のみ駆動し、滑りやすい路面では後輪にも駆動力を配分するビスカスカップリング式となっている。

クロスビー全車に搭載されるK10C型ターボエンジン+マイルドハイブリッド

ただしパワートレインは、イグニスの1.2ℓ直4NA+CVT+マイルドハイブリッドではなく、K10C型1.0ℓ直3直噴ターボエンジンにマイルドハイブリッド、6速ATを組み合わせたものを全車に搭載。エンジンの最高出力は8ps高い99psで、さらに最大トルクは32Nm上回る150Nmを1700~4000rpmの低く広い回転域で生み出すというから、スペックを見ただけでも余裕のある走りが期待できるというものだ。

気になるクロスビーの走り、居住性、使い勝手は?

スズキ・クロスビー

今回試乗したのは上級グレード「ハイブリッドMZ」の4WD車だが、実際に走り出すと、その期待を全く裏切らない加速感が、アクセルを踏み始めた瞬間から味わえる。イグニスに対する80kgの重量増を全く感じないどころか、CVTではなく6速ATとなりラバーバンドフィールから解放されたことも相まって、非常にレスポンス良く軽快に速度をコントロールできるのだ。

走行モード切替スイッチ。左からヒルディセントコントロール、グリップコントロール、スノーモード、スポーツモード

なお、クロスビーの4WD車には、アクセル開度に対するトルクの発生量を高め、エンジン回転も高めを維持する「スポーツ」と、逆にアクセル開度に対するトルクの発生量を減らし、雪道やアイスバーンでタイヤの空転を抑える「スノー」、2つの走行モードが実装されているが、ドライの一般道および高速道路では前者が演出過剰で、後者はハッキリと鈍い。デフォルトの状態がまさにちょうど良く、メカニズムを理解しスポーツドライビングを好むドライバーが少ないと思われるこのクルマにはベストセッティングと思われた。




このほか、今回は試す機会を得られなかったが、滑りやすい路面での発進を容易にする「グリップコントロール」、急な下り坂で自動的に車速を7km/hに維持する「ヒルディセントコントロール」を備え、オン・オフ問わず軽快かつ安全に走れるよう配慮しているのは、特筆すべき事項だろう。

スズキ・クロスビーFF車の前ストラット式、後トーションビーム式サスペンション

イグニスでは軽快というより神経質な面が目立ったハンドリングは、大人5人がアウトドアに出掛けることを主眼とするこのクロスビーでは大幅に改善。直進安定性を重視したロングツーリング向けのセッティングとなり、高速道路を走ってもイグニスより110mm高い1705mmの全高を感じさせない。それでいながらコーナリングも、操舵レスポンスが鈍く強アンダーステア……というトレードオフの関係になっておらず、こちらも敏感すぎず鈍すぎない、乗用車として理想的な走り味に仕上げられている。

傾斜角が極めて少ないスズキ・クロスビーのAピラー

そしてもう一つ美点として挙げたいのは、ハスラーと同じく丸みを帯びたスクエアなフォルムがもたらす、視界の良さと広大な室内空間だ。




空気抵抗低減のためAピラーを寝かせるモデルが多いなか、ハスラーそしてクロスビーは際立って直立に近い設計となっている。そのため交差点などで、斜め前方にいる歩行者や自転車を発見しやすい。しかも、ボンネットとドライバーの距離が前後上下方向とも近く、フロントフェンダーの両端が盛り上がっているため、車両感覚が非常につかみやすいのだ。

スズキ・クロスビーのリヤシート
スズキ・クロスビーのフロントシート


これはその他のピラーを含む左右方向も変わらず、そのおかげで全長×全幅×全高=3760×1670×1705mmの小柄なボディながら2175mmもの室内長を稼ぎ、かつ前後席とも窮屈さを全く感じさせない居住性を備えている。




なお、後席は165mmのスライド機構を備えているが、身長174cmの筆者が適切なドライビングポジションを取ったうえでこれを最前端にセットしても、拳1つ分のニークリアランスが得られたのには驚かされた。

防汚タイプのフロアを備えるハイブリッドMZのラゲッジルーム

その分荷室容量は決して大きくなく、後席が最後端の場合は124ℓ、最前端では203ℓ、後席を倒した状態でも520ℓに留まる。だがその際のフロア形状はフラットで、さらにFF車で81ℓ、4WD車で37ℓのラゲッジアンダーボックスを備え、しかも「ハイブリッドMZ」には防汚タイプラゲッジフロアと撥水加工シートが標準装備されるため使い勝手は非常に良く、5人フル乗車で一泊以上のアウトドア……という場面でもない限り、不便を感じることはないはずだ。

デザインと走り、使い勝手の魅力を打ち消しかねない大きな欠点とは?

スズキ・クロスビーの前後シート

しかしながら、その高いユーティリティに貢献している前後シートが、これまでに挙げたクロスビーの長所を全て打ち消しかねないほど、大きな欠点を抱えている。端的に言えば、前後席とも絶対的にサイズが小さく、クッションが柔らかすぎるのだ。しかもこのクッションが、背もたれ・座面ともセンターとサイドで硬さが変わらず、形状もフラット。旋回時には全くと言ってよいほど身体をホールドしてくれない。これではアウトドアのためのロングツーリングはおろか、近所へ買い物に行くだけでも疲れてしまう。

スズキ・クロスビーのフルオートエアコンユニット

インパネの素材と設計にも問題点が少なくない。これは昨今のスズキ車の多くに当てはまることだが、ダッシュボード天面のハードパッドの質感が低く、面積の広いカラードパネル共々、室内に入り込んだ直射日光を強烈に反射する。また、イグニスから流用されたフルオートエアコンのスイッチ類は、高めのポジションから斜め下に見下ろすと、文字が仕切り板に隠されてしまう。しかも各スイッチの色・形状が全て同じため、じっくり目視せずに操作するのは事実上不可能だ。

スズキ・イグニス ハイブリッドMGの運転席まわり

しかしながら、イグニスの廉価グレード「ハイブリッドMG」に標準装備されるマニュアルエアコンのダイヤル式スイッチは非常にシンプルな設計で、誰もが直感的に操作でき、ブラインドタッチも極めて容易。見た目の質感向上は必要だが、フルオートエアコンのスイッチ類もこれをベースにすべきだろう。

「スズキセーフティサポート」のレーダーレーザーと単眼カメラ

さらに言えば、ホットハッチのスイフトスポーツが持つアダプティブクルーズコントロール(ACC)と車線逸脱抑制機能(LKA)が、ロングツーリングを主眼とするこのクロスビーにオプション設定すらされていない。「ハイブリッドMZ」に標準装備、標準グレード「ハイブリッドMX」にオプション設定の「スズキセーフティサポート」が実装する機能は、事故防止には役立っても疲労軽減には寄与しないものが多いため、ACCとLKAはぜひとも追加してほしいところだ。

スズキ・スイフトスポーツ

そして、最も不満かつ不安なのは、同一グレード同士の比較でイグニスより税別24.5万円(FF車)~25万円(4WD車)高とされたその価格。今回試乗した「ハイブリッドMZ」4WD車の車両本体価格は税別1,987,000円・税込2,145,960円に達しており、FF車でも税別1,855,000円・税込2,003,400円と、ほぼ同等の装備を持つスイフトスポーツ6速AT車の「セーフティパッケージ装着車」が掲げる税別1,845,000円・税込1,992,600円を超えている。




クロスビーは高い付加価値を持つクロスオーバーSUVとはいえ、そして現時点で事実上ライバル不在とはいえ、登録車では最小のAセグメントに属する小型車である。それがBセグメントのホットハッチを超える価格というのは、やや強気に過ぎるのではないだろうか? 現在の価格を維持し、かつ商品価値と拮抗させるには、少なくとも先に述べたシートやインパネの改良、安全装備の追加が必要だと筆者は思う。




クロスビーの月間販売目標台数は2千台、そして12-1月の登録台数は4028台。ハスラーはデビュー3ヵ月後の2014年3月以降、月間販売目標台数の5千台を大幅に上回る大ヒット作となったが、クロスビーにハスラーのような“もうひと伸び”は起こるだろうか?

Specifications


スズキ・クロスビー ハイブリッドMZ(4WD・6AT)


全長×全幅×全高:3760×1670×1705mm ホイールベース:2435mm 車両重量:1000kg エンジン形式:直列3気筒DOHC直噴ターボ 排気量:996cc ボア×ストローク:73.0×79.4mm 圧縮比:10.0 エンジン最高出力:73kW(99ps)/5500rpm エンジン最大トルク:150Nm(15.3kgm)/1700-4000rpm モーター最高出力:2.3kW(3.1ps)/1000rpm モーター最大トルク:50Nm(5.1kgm)/100rpm JC08モード燃費:20.6km/L 車両価格:2,145,960円
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