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スズキ新型スイフトスポーツは派生モデルではなく、ほぼ専用設計のエキサイティングなモデルだった


新型スイフトスポーツの評判がすこぶるいい。雑誌やWEBですでにその評判はお見知り置きとは思いますが、試乗した多くの自動車ジャーナリストの方たちが手放しに太鼓判を押しています。モーターファンでも試乗する機会を得ました。ターボエンジンの搭載とワイドボディによる3ナンバーにしたことで、新たな性能領域へと進化していました。

標準車同様、軽量高剛性の新プラットフォーム「ハーテクト」を採用。車両重量は、6MTで970kg、6ATで990kgと先代モデル比70kg減を実現。スイフトスポーツのみリヤドラ開口部上部とテールゲート開口部下側に合計12点のスポット溶接打点を追加している。

試乗会へ出向く前に、少しくらい情報を入れておこうと発表時に入手したプレスリリースを拝読していますと、




「高出力・高トルクな1.4ℓ直噴ターボエンジンを搭載」


「軽量高剛性な新プラットフォーム“HEATECT(ハーテクト)”の採用で1tを切るボディ」


「ワイドトレッド化した初の3ナンバーボディ」


「床下に空力カバーを広範囲に配置」




と、我々メディアが飛びつきそうな性能や技術に関する謳い文句が列記されています。大幅なトルクアップ、軽量化、ロー&ワイド化、優れた空力特性など改良された性能を鵜呑みにして信じれば、先代のスイフトスポーツを余裕でしのぐ「速さ」を手に入れているはずです。




先代のスイフトスポーツ(ZC32S型)がフルモデルチェンジを受けた際、初代スイフトスポーツ(ZC31S型)からの“キープコンセプト”ということでしたが、ホイールベースは40mm延長され、中身は安定指向にふられました。また、エンジンは1.6ℓ・直4NAのM16A型をそのまま引き継いでいるものの、世の中の燃費至上主義の波に乗せられたのか、基本はスポーツなんだけど、どことなくマイルドになった。ZC31Sの登場で、スイフトスポーツは“ピュア・ホットハッチ”としてチューニングする層に非常に高い支持を受ける車種となったが、二代目のZC32Sはクルマとして進化はしているものの、チューニング層からは少しガッカリしたという声は少なくありませんでした。




昨年末、第三世代のグローバルコンパクトカーとしてひと足先にデビューした標準車のスイフトは、Bセグメント向け新型プラットフォーム「HEARTECT(ハーテクト)」を得て、120kgの軽量化を実現。我々の度肝を抜きました。スイフトスポーツももちろんハーテクトを採用しております。標準車のポテンシャルアップが走りの本質を非常に高いレベルまで押し上げていただけに、それに比例してスイフトスポーツも良くなっているだろうということは否が応でも期待してしまいます。果たして新型スイフトスポーツ(ZC33S型)は、ZC32S型の性能を上回り、ZC31S型のようなワクワク度を与えてくれるでしょうか?




結論から言うと、6MT車を短時間かつ短距離の試乗でしたが、その実力の片鱗は十分に窺えるデキでした。それでは試乗して感じた率直な感想に対して、シャシーやエンジンの開発に携わったエンジニアからの見解を述べる形でレポートしようと思います。

【シャシー】タイヤの支持剛性の大幅アップにより、走りが劇的に進化

電動パワーステアリングは、標準車からブラシレスモーターを採用する。このクラスにもブラシレスは増えつつある。さらにスポーツはモーターサイズを変更し、切り側と戻し側に細かい制御を入れている。標準車より世代的にはワンランク上の制御となっているということだ。
ハブユニット化は新型のキーテクノロジーのひとつ。ユニット化された専用ハブリングにより、コーナリング旋回時におけるサスペンションシステム全体の曲げ剛性を15%向上。ハブは、先代モデル同様、5穴のPCD114.3だ。


──乗って、まず驚いたのはシャシー性能の高さです。新プラットフォーム「ハーテクト」により基本性能を高めたボディの影響はもちろんですが、それよりももっとタイヤからの入力に近い車軸の支持剛性がしっかりしている感じで、ステアリングを握った手やシートに埋めるお尻から強靭さが感じ取れます。もともと世界戦略車として登場した初代スイフトスポーツからボディ剛性の高さは定評がありましたが、この感覚は先代モデルでは体感できなかった部分です。それによってタイヤが路面を捉えている状況がドライバーに伝わりやすく、走行安定性の底上げがなされているのは間違いないようです。




「サスペンションに関しては、先代のスイフトスポーツでやりきれなかったダンパーの作動抵抗を低減することにこだわって設計しています。スポーツになるとタイヤからの入力が強烈ですので、入力点に近いタイヤの軸のブレを抑制することが重要です。そのためにフロントのハブベアリングをユニット化しました。路面とタイヤの接地角度の無駄な変化を抑制し、少しでもダンパーをスムーズに動かしてきっちり仕事をさせようという狙いです。サプライヤーさんには、ベアリング間隔を拡大してベアリングに変な荷重がかからない位置を指定させてもらい、キャンバーの剛性を上げています。


リヤも同じで、従来までトレーリングアームから、別体のブラケットを介してハブを取り付けていましたが、標準車も含めて、トレーリングアームにダイレクトにハブベアリングを取り付けて、それ自体で曲げ剛性を上げています。また、トーションビーム本体も標準車からねじり剛性を30%アップして強化しています。トーションビームは構造上、モーメントが入りやすいので、トレーリングアームの断面形状や板厚も見直しました。どちらもスポーツ専用設計です」

モンロー製のストラットはアウター径を、標準車の45mmΦから50mmΦにアップし、ストラット曲げ剛性を向上させている。

──土台がしっかりしたおかげで、ダンパーのストロークが有効活用されていてバンプ・リバンプともしっかり仕事をしている感じで、アンジュレーションのある路面もしっかり追従してくれます。スポーツらしく適度な硬さはともない、橋桁の継ぎ目などではある程度ショックはきますが、想像よりもかなり少ないです。うまく伸びるし、そのあとの縮むときの減衰コントロールが秀逸。スッと戻らないで、戻り切る寸前で抑え気味になっているとでも言いましょうか。タイヤからのゴツゴツ感もありません。




「ストローク感をうまく使えるようにセッティングしています。タイヤはコンチネンタルSportContactで、タイヤサイズは先代モデルと同じ195/45R17です。タイヤの仕様としてはワンランク上の車重でもいいくらいで、先代より車重が70kg軽くなったことを考慮して、タイヤのタテばねはオリジナルのものにしてもらっています。路面からの大きな入力の一発目はタイヤのタテばねのしなりで受け止め、そのあとショックアブソーバーの減衰で受ける順番になるような味付けにしています。ショックアブソーバーは、歴代モデルから引き続き、テネコオートモーティブ社のモンロー製です。ただ、バブル構造を見直して減衰力特性は、ピストン速度の低い低速域から減衰を出して、ピストンスピードが速いところでもリニアに効かせるようにしています。ストローク値は先代モデルと比べると、フロントは5mmくらい伸ばしています。リヤはほぼ一緒です。フロント5mmと言っても体感的にはほとんどわからないレベルですが、フロント側の伸び側の減衰を落として伸びるようにして、路面の追従性をよくしています」

ステアリングの支持剛性が向上したことにより応答性がよく、狙ったラインをトレースしやすい。

──タイヤの支持剛性の向上によりがっちりと路面を捉えるセッティングは、コーナリングでも威力を発揮してくれます。標準車より+30mm、先代モデル+40mmワイド化(3ナンバー)された影響も加味されてロール剛性が高く安定感が増しています。ステアリング操作に対しての応答性もリニアです。さらに、そこからコーナーの立ち上がりではアクセルをガバッと開けて入っても、しっかりとトラクションを受け止めて支えてくれるので非常に安心感があります。






「トレッドを広げたのは商品企画からの提案で、シャシー側は渡りに船って感じでした(笑)。ワイドトレッド化でいうと、フロントのロアアームを長くしています。長くすることでスカッフ変化が少なくなる。そうするとキャンバー変化を抑えられるメリットがあります。リヤ側もトレーリングアームの形状を変更し、標準車と同じ取り出しの位置から、外側に張り出しを大きくしています。先代の標準車比でいうと片側20mm広がっています。通常は、遠くなればなるほど剛性は弱くなる方向ですが、トレーリングアームの断面積を微妙に増やして、タイヤが支持剛性を上げながらワイド化しました。タイヤの軸ブレを抑制し、専用のスタビライザーやコイルスプリングでロール剛性を最適化しながら、その先は早めにバンプストッパーに当てて、ジワリとロールさせつつ荷重移動を行なえるようなセッティングにしています。そのためパンプストッパーはゴムからウレタン製に変更しました。


ステアリングの支持剛性アップもキモです。サスペンション同様、スポーツになるとタイヤからの入力が強烈なので、ステアリングの支持剛性を上げていかないと正確なハンドリングができません。従来モデルは、サスペンションフレームの上に、別体のブラケットを介して、ステアリングギヤボックスにマウントし、必要に応じて補強して補っていました。それを今回の新型ではブラケットを介さず、ダイレクトマウントにして剛性を上げています。これはやはり新型のプラットフォームの存在が大きくて、もともと開発陣が狙っていた最終着地点はスポーツでした。シンプルな部品で構成することで軽量化にもつながっています」

【パワートレーン】エンジンチューニング、吸排気、冷却などはすべてが専用設計

──新型スイフトスポーツのトピックは、1.4ℓ・直4直噴ターボエンジン(K14C型)です。従来までの1.6ℓNAエンジンをやめ、エンジンをターボ化してパフォーマンスを上げてきました。出力こそ3kW増しの103kWですが、最大トルクは70Nm増しの230Nmを2500-3500rpmで発揮します。トルクウエイトレシオは4.2kg/Nm! 低回転・高トルク型エンジンと、軽量化が功を奏して、ひと転がり目から軽さを感じることができるレベルです。スペックどおり、低速トルクがものをいっていて、本当に1速、2速でもキレイに発進していくので非常に扱いやすい。クラッチミートポイントも適正化されていて、坂道発進でもスイスイ前に進んでいきます。また、シフトストロークが5mmショート化され、カチッカチッとしたシフトフィールではないものの、引っかかることなく、スコスコと気持ちよくシフトチェンジできるのも、扱いやすさを助長してくれています。






「スポーツというキャラクターを考えた時に、これからの時代に沿って、ダウンサイジングで過給をかけて、2.2~2.3ℓクラスに勝てるようなトルクと出力を出すというのをコンセプトとしていました。市場は国内とヨーロッパにあるんですが、どちらにも対応できるようなエンジンを考えて、1.4ℓ直噴ターボのK14C型ブースタージェットエンジンを選択しました。国内では今夏にデビューした新型エスクードから初めて搭載しましたが、エスクードは少し燃費側にふった仕様だったので、スイフトスポーツ専用にパワーと燃費を両立させたチューニングしています。


エスクードと異なる点と言えば、ウェイストゲートの制御が違っています。エスクードは、燃費を重視して低負荷域ではウェイストゲートバルブを開くノーマルオープン制御を採用していますが、そうするとコンプレッサーの回転が低下し、アクセルを踏んだときのレスポンスに遅れが生じます。ですので、スイフトスポーツではノーマルクローズ制御を採用し、ウェイストゲートバルブを閉めてタービン回転数を高く保つことでアクセルに対する応答スピードを上げています。ウェイストゲートバルブは電子制御方式ですが、開閉そのものは負圧で行なっています。そのほうがスムーズに過給がかかるという判断です。電動だとレスポンス遅れや音の問題があります」

各シリンダーに7つの噴射口を持つインジェクションノズルを配置し、20MPaをメインとした高圧燃料ポンプによって高微粒化した燃料を噴射する。排出ガスのクリーン化とエンジン高出力化の両立に貢献する。

──レブリミットが6000rpmとMT車にしてはやや低めですが、ターボ車に乗っている感じはなくエンジン特性がとてもフレキシブルだから、どの回転、どの速度域からでも力強い加速をしてくれます。スポーツだからといってあえて高回転まで回さなくても、アクセルレスポンスが良いので低回転だけでも十分速く走れちゃう感じです。今回は時間の制約のため実現できませんでしたが、ワインディング走行はけっこう面白そうです。スロットルコントロールひとつで姿勢変化や荷重移動が作ることができ、ここは2速、ここは3速とギヤを決めずに走れます。かといって高回転域がダメかということはなく、高速道路では6速からでも追い抜きがかけられる力があります。




「スイフトスポーツのエンジンはこのご時世でもハイオク仕様にしているので、ノッキングが気になる低回転域の点火を進角して、実用トルクを稼ぐことができたのは、開発側からすると非常にありがたかったです。ターボの過給圧制御やウェイストゲートのノーマルクローズ制御と合わせて、アクセルの応答遅れを最小限に抑え、太いトルクを発生します。


また、スイフトスポーツでは専用インジェクターを採用しました。エスクードのインジェクターは6孔でしたが、ひとつ孔を増やして7孔にして、さらに噴射圧をあげて噴霧の高微粒化して燃焼をよくしてあげることで、キレイに燃やしてあげるようにしています。そもそもエスクードのK14Cエンジンも噴射圧は3〜20Mpaと高かったのですが、スイフトスポーツのL14Cエンジンは20MPaをメインにしています。インジェクターの変更により、排ガス規制や燃費性能にも貢献しています」

そして、何よりコストパーパフォーマンスが高い! これだけの性能向上や装備内容が充実されているにもかかわらず、先代モデルの価格からほぼ据え置きの183万6000円(6MT)。今回か単眼カメラ+レーザーレーダーによる衝突被害軽減ブレーキシステムをはじめ、初採用となった車線逸脱抑制機能など先進安全装備のオプションをつけても200万円を超えません。これはかなり魅力です。




最近のスズキの新型車は、華やかさはないけれど走行性能と燃費の相反する性能を両立する「軽さ」を武器に、走りの本質を極めるブレないクルマづくりをする印象が強く好感が持てます。スイフトスポーツはまさにその真髄をいっています。スイフトスポーツは冒頭で述べたようにチューンングする層に熱いファンが多い車種です。開発エンジニアの話では、タービンサイズをワンランク上げてもエンジンの耐久性としては問題ないとのことでしたから、究極の速さを突き詰めていくと、筑波サーキット1分切りも夢ではないのでは? そんなポテンシャルを感じます。ただ、ノーマルの完成度が高いので、そのバランスを崩さずにレベルアップできればという条件つきですが……。

SPECIFICATIONS


スズキ・スイフトスポーツ(ZC33S・6MT)


■ボディサイズ:全長3890×全幅1735×全高1500㎜ ホイールベース:2450㎜ ■車両重量:970㎏ ■エンジン:直列4気筒DOHC直噴ターボ 総排気量:1371cc ボア×ストローク:73.0×81.9㎜ 圧縮比:9.9 最高出力:103kW(140ps)/5500rpm 最大トルク:230Nm/2500〜3600rpm ■トランスミッション:6速MT ■駆動方式:FWD ■サスペンション形式:Fマクファーソンストラット Rトーションビーム ■ブレーキ:Fベンチレーテッドディスク Rディスク ■タイヤサイズ:F&R195/45R17 ■環境性能(JC08) 16.4km/ℓ ■車両本体価格:183万6000円
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