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十月の呼び名は多彩!それぞれの名前にはちゃんと理由があるんです


十月の別名といえば「神無月」が知られていますが、他にも多くの別名が付けられています。稲が稔り、菊が咲き、山々が色づいて自然界が大きく姿を変える時季だからでしょうか。気がつけば日が落ちるのが早くなり、夜は長く、過ごしかたや楽しみかたもさまざま。今年も残り3ヶ月と気づいても焦ってはいけません、十月ならまだまだ余裕があります。心地よい空気を存分に楽しめる時季を逃す手はありません。まずじっくりと秋を楽しんでおくのが得策とは思いませんか。

秋の白糸の滝 (福岡県糸島市)

秋の白糸の滝 (福岡県糸島市)


「小田刈月」先ずは今年の収穫を祝いましょう

秋の印象は寂しさをそそります。勢い盛んな春や夏から一転して静かに枯れていくようすが、何かもの悲しい心持ちを起こさせるからでしょうか。その反面秋だからこそ、植物や木々には枯れながらも1年の稔りが溢れていきます。十月の一番に挙げられるのは「小田刈月」、稲を収穫する月です。

黄金色に染まった稲穂が頭を垂れ、秋の風に揺れる稲田の広がりは日本の秋の美しさ。稲刈りはお米を収穫すると同時に、来年のための種籾を確保することでもあります。籾を傷めないように脱穀し乾燥した後は大切に保存されます。秋の稔りは私たちに命の糧をもたらすだけでなく、次の新しい年の稔りへと伝えられ、未来へ繋げていく大切な役割をも持っているのです。

稲刈りは刈り取りの時期がもっとも大切です。稔りの時を見極めて短時間に刈りあげる忙しさは、人を頼んでの作業も多くなり、機械化される前は月夜の稲刈りもあったとか。

〈約束はいづれも稲を刈ってから〉 橘千代子

〈土手に鎌投げて稲刈り終りけり〉 菅原典子

〈山影となりゆく稲を刈りにけり〉 小黒葭浪子

何はさておき、新米の刈り取りを済ませなければ本当の秋は始まらないようです。


「菊月」秋こそ一番美しい姿を見せます!

お仏花として一年中手軽に買うことができる菊ですが、本来の花の季節は秋です。各地で菊祭が開かれ来場者の目を楽しませてくれます。丹精して育てられた花は大きくふんわりと開き、花弁の色の美しさもさることながら、厚みや形といったさまざまな菊の表情に気づかされます。

〈秋はまづ目にたつ菊のつぼみかな〉 去来

〈村百戸菊なき門も見えぬかな〉 蕪村

江戸時代の俳人の句から、菊の花が生活の中に今よりも数段溢れていた秋だったのだな、と想像できます。近・現代になると菊はより鑑賞の対象となっていったように思われます。

〈丹精の菊みよと垣つくろはず〉 久保田万太郎

〈母が活けし菊に小菊を挿しそへぬ〉 三橋鷹女

旧暦九月九日は「重陽の節句」陽の最大数「九」が重なるめでたさを祝うものですが、同時に「菊の節句」ともいわれ、盛りとなった菊を楽しむ時季でもありました。また菊の花びらをうかべた菊の酒を飲んで長寿を祷った、という旧い中国の風習も伝えられています。このようなことから、かつて宮中では「観菊の会」が開かれ楽しまれていたようです。

秋といえば夜長を楽しむ時季でもあります。暗い中に咲く菊の花を観賞しながらのお酒、聞こえてくる虫の声、秋の一日の終わりには穏やかな楽しみ方もいいですね。


「色取月(いろどりづき)」こんな言い方、ご存じでした?

秋のお楽しみのひとつは木々の葉がそれぞれの色に染まり、カラフルに華やぎ始めることです。だから「色取」ふだんは「紅葉」とか「もみじ」または「錦に染まる」などの表現をよく耳にしますが、「いろどる」という響きもいいですね。

赤くなったり黄色くなったりは、色素の生成が変化し起こる現象、と聞いたことがあります。冬にむかって枯れていく中にも、ひととき明るい美しさを見せてくれる木は、葉を落とすことによって来年への芽吹きの準備を始めていきます。春夏秋冬の循環を強く感じるのが秋の収穫の時かもしれません。

色取り豊かな木々や里山の風景を楽しみに行く「紅葉狩」も、秋の行楽のひとつでしょう。お弁当をもってハイキング気分で郊外へ、休日の素敵な過ごし方ですね。そこまでできないな、という方は街中で楽しみましょう。最近はビルとビルの合間や屋上、テラスなどに自然を再現している場所の数が多くなりました。そんなところを見つけてコーヒー片手に染まり始めた葉の色や木のようすを眺めて楽しむ秋も、また有りではありませんか。ひとりで過ごすも好し、友とのんびりおしゃべりしながらも、きっとしみじみとしたよい時間になりますね。

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