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コロナと共に始まった新生活、今注目したい「ふつうのおんなの子」のちから!?


感染予防に細心の注意を払いつつ、手探りながら経済活動が再開されました。長い自粛期間をどのようにすごされたのでしょうか。私はハッとする1冊に出会いました。生命科学者である中村桂子さんの『「ふつうのおんなの子」のちから』です。「21世紀がどんな時代であって欲しいか」を考え、子供の頃に読んだ本の主人公の生き方を通して、人間として幸せのあり方をもう一度考えてみませんか? と優しく熱をこめて語っています。

子供の頃はこんな風に伸び伸びとした心だったんじゃないかなと、読みながらもう一度生きる幸せとは何か? を考えたくなりました。駆け足を余儀なくされる日常に戻ろうとしている今、新しい生活を豊かにするためにもぜひ読んでいただきたい、と感じた本です。


「ふつうのおんなの子」って? 著者の中村桂子さん、そしてあなたもきっとそうです

中村氏のいう「ふつう」とは「そのひとのあるがまま」という意味です。ですからここでは基準や平均はありません。現代に生きる私たちは機械化された産業構造の中で、規格にあっているかどうかが最も大事なことと感じる場面が多くあります。そこから生まれてくる差別や競争意識で、私たちの生き方はあれこれ制限されてしまっているのではないでしょうか。そんな規格を取り払って「あなたのあるがままの個性」の力を大切にしましょうと話されています。

サブタイトルに「こどもの本から学んだこと」とあります。それは『あしながおじさん』のジュディや『長くつ下のピッピ』、『若草物語』のジョー、『トム・ソーヤーの冒険』など誰もがきっと一度は手にしたことのある本の主人公たちの生き方です。

性格は「快活」で「無邪気」「善悪の判断ができ」「独立心が強い」「信念を通すねばり」があります。元気いっぱい、でも失敗もたくさんして大いに落ち込みます。それでもめげている暇などありません、次へと進んで生きて行く力があります。

大切なのは日常のささいなことを丁寧に生きていくこと。まわりのみんなに気をくばりながら、ちゃんとやるべきことをやってのける力でしょう。その一瞬一瞬を丁寧に生きて幸せを見つけていく力です。

中村氏は「ふつうのおんなの子」としましたが、年齢や性別に関係なくこんな生き方のできる人なら誰でも「ふつうのおんなの子」の力をもっている人とされています。


生命科学ってどんな学問? 「生命誌」を提唱する中村桂子氏の研究とは?

現在地球上にいる生きものの種類は5000万にも及ぶそうです。この5000万種の根源にあるのはたったひとつの細胞です。38億年の時間をかけて1つの細胞が2つになり4つになり、と分裂をくり返して進化をとげました。人間は人間、虫とはまったく違うと思っていますが、実は大きなつながりの中にいるのです。

「生命誌」とは生き物をどのような構造と機能をもっているのかで理解するだけではなく、どのような歴史をへて今その生きものとなったのかをゲノム(DNA)を切り口として研究するものだそうです。そこから生きものの共通性と多様性にもスポットライトがあてられていきます。

中村氏が今年の初めまで館長を務めていた「JT生命誌研究館」では、小さな昆虫の研究から地球規模の成果があがっています。飛べない昆虫オサムシは小さな虫ですが、日本列島に分布する全種類のオサムシのゲノム解析をしたところ、日本列島は地域的に大陸が移動してできたことが証明されたそうです。これは日本だけでなく世界でも珍しい研究成果として評価されているということです。生命のゲノムは人の目に見えないものですが、地球のことまでも解ってしまうくらい壮大な研究となる、ということに驚きました。


私たちが発揮できる「ふつうのおんなの子」の力って、どんなことでしょう?

生きものには共通性と多様性がある、というのが「生命誌」の基本にあるようです。私たちが社会生活の中で悩まされているのが正にこれではないでしょうか。

一緒に同じ仕事をしているのに、どうも自分の方が評価が低いようだと勘ぐってしまったり、人はそれぞれ違う個性、特性をもっているとわかっていても誰かを羨んでしまったりと、自分や相手を認めることが私たちはどうも苦手のようです。日々自分のやるべきことを大切に喜んでやっていくこと、辛いことも苦しいこともあるけれど勇気を持って乗り越えていくことは、ほかの誰かと比べたり競争して勝つこととは関係ない、自分自身の覚悟なのだとわかってきます。

そんなことを考えていたら昔読んだヘミングウェイの小説『老人と海』を思い出しました。若くも女の子でもありません。主人公は歳をとり漁師としての力も衰えてしまった老人です。

かつては運とその腕をならして仲間からも一目置かれたものでしたが、今やその面影はありません。釣果のない日が続こうが毎朝小さな舟を漕いで漁に出て行きます。ある日自分の舟より大きなカジキマグロが餌に喰いつき何日もかけて格闘した末捕獲します。喜びもつかの間、血の匂いに群れよるサメとの壮絶な戦いも空しく、カジキマグロは食い尽くされてしまいます。帰り着いた老人は自分の小屋のベッドに倒れ込み眠ります。浜辺の舟に括り付けられた巨大なカジキマグロの骨を見た漁師仲間の驚きと感嘆の声。何があっても自分の仕事を全うしようとする老人に対する賞賛の声が聞こえてきます。きっとこの老人が発揮したのも中村氏は「ふつうのおんなの子」のちから、とおっしゃるのではないでしょうか。

新しい生活が始まりました。大切な自分の命を守ることは相手の命をも共に守ることに繋がります。お互いに助け合って生きていくもの同士です。個性を尊重したあなたの「ふつうのおんなの子」のちから、を発揮していきませんか。



参考:

『「ふつうのおんなの子」のちから』 中村桂子著 集英社

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