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10月も終わりへ、第五十三候「霎時施(こさめときどきふる)」です


どう読むのかしら、と「霎」の字を漢和辞典でひくと「こさめ、きりさめ」とあります。天気予報で聞く「こさめ」とは違うのでしょうか? 晴れれば気持ちのよい天気になりますが、朝夕はそろそろ厚手のジャケットやコートも欲しくなりそうなこの時期の「霎」とはどんな雨なのでしょう。長雨をもたらす秋雨前線とはまた違うのでしょうか? 霜降をむかえたこの時期に降る雨や空模様について興味が湧きましたのでちょっと調べてみました。おつき合いください。


この「霎(こさめ)」ってどんな雨?

さらに漢和辞典では「こさめ、きりさめ」の他にも「しばし、短い時間」「雨の音」とあり、「霎々」は雨の音、「霎時」は短い時間、と用例を見ていきますとなんとなく「短い時間に降る雨」を「霎」と言うことがわかってきました。

それでは具体的にはどんな雨なのだろうと紐解いたのは『雨のことば辞典』です。秋に「短い時間に降る雨」を探してみると、晩秋から初冬にかけて降ったりやんだりをくり返す通り雨「時雨(しぐれ)」が見つかりました。「霎(こさめ)」はどうやら「時雨」と考えてよさそうです。

大きな特徴は大陸から東シナ海、日本海を渡ってくる北西の季節風からできる雲にあるようです。雲の筋が風に流され、雲が通るたびに1~2時間の周期で降ったりやんだりをくり返す雨。雲が来ると暗くなり冷たい雨が降るが、通り過ぎると雨はうそのようにあがり青空から日が差してくる、そんなことの繰り返しが時雨です。時雨のようすをよく表した俳句もありました。

「しぐれけり走り入りけり晴れにけり」 広瀬惟然

「馬はぬれ牛は夕日の北しぐれ」 坪井杜国

移り変わる天気の慌ただしさ、雨の時間の短かさなどを読みとることができますね。これを読みながらそういう天気が身のまわりにあったかなぁ、と不思議に思われる方もおられるでしょう。この「時雨」は北海道から本州の日本海側、九州の西岸、京都北部の日本海側に近い山間部で降るということです。では太平洋側はどうかというと、太平洋側は空っ風が雲を吹きとばした「冬晴れ」の空になるとのこと。

南北に長く中央に背骨のように高い山をもつ日本は、太平洋側と日本海側では天気に大きな違いがあることをあらためて感じます。また天候の変化を敏感に感じとっている季節の暦が、生活の指針として大切に伝えられてきていることも嬉しいですね。

参考:

『新漢語林』大修館書店

倉嶋厚、原田稔編著『雨のことば辞典』講談社学術文庫、2014年


雨があれば晴れもある!「小春日和」を満喫しましょう

「小春日和」なんとも長閑で気持ちの好いあたたかな響きを感じます。

低気圧が過ぎたあとに大陸からやって来た高気圧におおわれると、好く晴れて風も穏やかな日和が続くことがあります。秋から冬に移行する中での暖かい日はまるで春のようだということで「小春」と呼ぶのでしょう。

「先生と話して居れば小春かな」 寺田寅彦

なんとも素敵なそして羨ましいような師弟関係です。寅彦が漱石との交流を心から楽しんだようすが冬の季語「小春」に託されています。読んだものにもほのぼのとした心地よさが伝わってきます。のんびりと小春日和を満喫するも良し、たまっていた洗濯ものを片づけたり、家中を開け放しての掃除をしてしまうなど、ちょっと面倒に感じることを思いきってやってしまうには、「小春日和」はチャンスですね。


「木の実時雨」ってご存じですか? こんな音で風情を感じたいですね

落葉の中に埋もれているどんぐり、目で見つけ出すよりも靴の裏にコツっとかたく感じて気づくことのほうが多くありませんか? 里山のハイキングや広い公園でのんびり散歩しているときに見つけるどんぐりは心を子どもに戻します。栗よりもずっと小さくてかたい皮とお椀のような殻に包まれた褐色の木の実、どんぐりが落ちてくる音を「木の実時雨」というそうです。

「森に降る木の実を森の聞きゐたり」 村越化石

森の中の営みは自然の中で行われていきます。そこには土の中の虫たちから、動き回る動物たちまでたくさんの命を支えています。森も木の実を降らせることで、新たな発芽を動物たちの力にゆだねています。そのきっかけとなる木の実の落ちる音のほんの一瞬は未来への鎖のひとつ。いまでは動物たちの貴重な食料となっている木の実ですが、縄文時代には人間にとっても重要な食料だったようです。土器の発達は木の実を蓄え調理をするためだったと考えられています。近年熊が人の住む地域に出没して驚かされますが、十分な木の実を作る森を動物たちに残しておかなければと感じます。私たちも「木の実時雨」を聞いて移りゆく季節を感じたいと思うのです。

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