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不思議な勘定で一杯 ── 落語「花見酒」


開花が待ち遠しかった桜……。しかし早いもので、今年の桜もさかりを過ぎつつあります。

みなさんはお花見でお酒を楽しみましたか? 花見にお酒はつきものですが、うららかな陽気と人の多さに気分がゆるんでついついお酒が進み、飲みすぎて失敗してしまうこともままあるでしょう。

今回紹介する落語にも、なんともだらしのない二人が登場します。

満開の桜の下での一杯。春の訪れに心も弾み、ついついお酒も進んでしまうもの

満開の桜の下での一杯。春の訪れに心も弾み、ついついお酒も進んでしまうもの


花見酒で金もうけしようと、目論むが……

お酒の好きな二人が、花がまっさかりという季節になってぼやいています。花見でお酒が飲みたいのに、先立つものがないのです。

そこで兄貴分、「いいことを思いついた、金もうけをしようじゃなないか」と弟分に持ちかけます。

お酒を用意して、花見客に一杯10銭で売ろうというのです。

「必ずもうかるぜ。もうけた金で一杯やろう」。なんのことはない、飲むために売ろうというのです。

そこで二人は、酒屋に掛け合って3升の酒を借り、天秤棒を担いで向島(むこうじま)へ出かけます。

さて道中、弟分は天秤棒(てんびんぼう)の後ろ側を担いでいますから、お酒のなんともいい匂いが鼻先に漂ってきます。

「兄貴、俺に一杯売ってくれないか」

普通だったら、「商売物だからダメだ」というところですが、ここが落語界の住人です。

「どうせ誰に売ったって同じだ。ただし銭は払えよ」

弟分は、釣り銭に持ってきた10銭を兄貴分に払い、ぐいっと一杯飲み干します。

落語では、こんなポーズよく見ますね

落語では、こんなポーズよく見ますね


二人で全部、飲んじゃった!

見ている兄貴分も、「なんだい、どうにもうまそうだな」と我慢できません。

さっきもらった10銭を払って今度は自分が飲みます。さあ、こうなるともう止まりません。

二人は、花見客を尻目にひとつの10銭をやったりとったりしながら、交互に飲み始めてしまい、向島についたときには酒樽は空っぽに。当然、二人はベロベロ状態です。

そこで二人は、酒を売ろうとしても、もう一滴も残っていないのに気がつきました。さらに、懐(ふところ)には10銭しかありません。「なんで用意した酒が全部売れたのに、売り上げが10銭しかねえんだ?」

「なんだと? 考えてみれば当たり前だ……。

あすこでオレが一杯飲んで、ちょっと行って、てめえが一杯。

またあすこでオレが一杯買って、またあすこで、てめえが一杯……」

そう思い返してみた二人は、交互に酒をすべて飲んでしまったことに、あらためて気がついたのです。

「……ああそうか。そりゃ無駄はねえ」

不思議な計算で、納得してしまう二人の酔っ払いでした。

罪のない、なんとも馬鹿馬鹿しい噺(はなし)ですが、それだけにいかにもどこにでもありそうです。

それもそのはず、この噺の原型と思われるのは、韓国の小話にあるということです。

── 東京以南では桜は散りゆきましたが、桜前線は北上中。東北地方の方は桜の美しさと陽気に浮かれて、くれぐれもお酒に飲まれてしまわないように気をつけてくださいね(笑)。

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