【ロサンゼルス(米カリフォルニア州)14日(日本時間15日)=斎藤庸裕】ドジャース大谷翔平投手(29)の銀行口座から金を盗んで不正送金したとして銀行詐欺などの罪に問われた元通訳の水原一平被告(39)が罪状認否のため、ロサンゼルスの連邦地裁に出廷した。4月12日以来、2度目となる出廷。銀行詐欺罪や虚偽の納税申告の罪状認否では無罪を主張したが、今回は手続き上の理由で形式的なもの。既に罪を認める司法取引に応じているとされ、同被告は次回審理で罪を認める見通しだ。
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水原被告の応答は、別室のスピーカーから聞こえてきた。「Yes,mom(承知しました)」と女性判事へ丁寧語を使って返答を繰り返した。罪状認否については「Not Guilty(無罪)」と答えた。手続き上、形式的に無罪を主張。午前11時40分過ぎから審議が行われ、わずか4分ほどで終わった。治安判事には法定刑の上限が禁錮1年以上の「重罪」について有罪答弁を取り扱う権限がないため、この日は形式的な無罪主張となった。
第1回の出廷時とは異なり、メディアは別室に移動を命じられた。地裁のスタッフから「判事の決断」とだけ説明され、約50人が着席。複数の記者がその理由を求めたが、事態は変わらなかった。「報道の自由の侵害だ」といった不満が出る中で、AP通信のステファニー記者が立ち上がり、異議申し立ての署名を周囲に求めた。その場から拍手が上がり、46人の署名が集まった。だが、審議が始まると判事から「セキュリティー(安全)を考慮して。メディアの方々には申し訳ない」などと謝罪されて終了。結局、立ち入りは許されなかった。
審議の場ではもちろん、別室でも携帯電話の使用は禁止。手持ちのバッグで隠しながらメッセージを送っていた米記者の1人は、地裁スタッフから退室を命じられた。室内には液晶テレビが設置されていたが、質疑応答の様子が確認できたのはスピーカーで聞こえてくる声のみだった。
連邦地検によると、同被告は21年11月ごろ~24年3月ごろ、違法スポーツ賭博で抱えた借金返済のため、大谷の銀行口座から賭博の胴元側に約1659万ドル(約25億7000万円)を不正に送金。さらに、口座から得た金を課税所得として報告しなかったとする虚偽の納税申告の罪にも問われている。
NBCテレビは14日(同15日)、大谷が連邦地裁に対し、詐欺行為が自身に与えた影響について説明する見通しだと報じた。連邦地検を通じて書面を提出するとみられる。
刑期は最長で禁錮33年だが、連邦地検は司法取引に基づき、刑の軽減を申し入れる。水原被告が有罪答弁をする日程は今後決定される。米メディア「ジ・アスレチック」によると次回審理の日時は6月14日(同6月15日)が予定されている。数カ月以内には量刑が決まる見通しで、今後も判決までの経過が注目される。