<DeNA0-1阪神>◇12日◇横浜
阪神中野拓夢内野手(27)が母への感謝をバットに乗せた。ピンクの手袋で振り切った打球は痛烈なライナーで右翼線にはずんだ。0-0の3回2死一、二塁からの決勝打。緊迫した投手戦で値千金の1点をたたき出し、盛り上がる三塁側ベンチに敬礼ポーズを返した。
「どうしてもカウント不利に進められるのがすごく多かったので、なるべく早く仕掛けた」
2死から投手の才木が四球を選び、1番井上の中前打でつくったこの日唯一の好機。カウント1-1からDeNA大貫の甘く入ったフォークを強振した。「甘い球が来なかったですし、チームとしてもなかなかチャンスがないかなという状況。しっかりと仕留められたので良かった」。きっちり仕留め、充実感を漂わせた。
5回には守備でもピンチを救った。5回1死一塁。8番京田の中堅方向にフラフラと上がった飛球に快速を飛ばし、背走したまま間一髪のタイミングでグラブに収めた。一塁走者はすでに三塁付近まで到達。一塁へ送球し、併殺を奪った。
ピンクの手袋を身につけて臨んだ「NPBマザーズデー」。「ここまで丈夫に産んでくれたのもお母さん。ありがとうを伝えられたら」と攻守の活躍を喜んだ。昨年の「母の日」は母節子さんへ、淡い黄色の上着をプレゼント。「明るい色も着てみたら」と言葉を添えた。普段は黒や白の服をよく着るという母は「自分ではあまり選ばないタイプの色」と喜び、甲子園に観戦に訪れた際にも着用している。幼い頃は絵や手紙を贈っていた中野。今年は感謝の気持ちをプレーと言葉で伝えた。
チームは3カードぶりのカード勝ち越し。前日11日には7点差を逆転されていただけに、中野もホッとひと安心だ。「今日の試合がすごく大事というのは分かっていましたし、先制点を取られてしまうと嫌な流れは続く。なるべく早く才木に援護点を与えたかった」。選手会長の一打がこの日、間違いなく空気を変えた。【村松万里子】