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感じたスポーツの意義=東京五輪旗手の須崎―企画・大役の夏を経て(下)


 昨夏の東京五輪で日本選手団旗手を務めたレスリング女子50キロ級金メダルの須崎優衣(23)=キッツ=は、国立競技場での開会式で小さな体ながら日の丸を高々と掲げ、笑顔を浮かべながら先導した。自国開催で踏んだ初舞台から1年を経て、「スポーツの力や意義を感じられた大会だったと思う」と振り返った。
 旗手の打診は日本選手団結団式直前だった。「うれしかったし、びっくりした」。憧れの吉田沙保里さんも2012年ロンドン五輪で務めた大役。重圧は感じなかったという。「自分にできることを全うしようという気持ちで引き受けた」と当時の心境を打ち明けた。
 決勝を含む全4試合で無失点のテクニカルフォール勝ちを収め、圧倒的な強さで頂点まで駆け上がった。「五輪で金メダルを獲得するために全てを懸けてきた。自分の全てを出すことができた」。小学生の時から追い求めてきた夢も実現し、笑顔で閉会式に臨めた。
 心残りは無観客開催だったこと。「応援されると力になるタイプ。次の五輪は満員のお客さんの中で戦って、金メダルを獲得する姿を見てもらいたい」。2年後のパリ五輪での連覇を思い描く。
 追われる立場になっても泰然と構え、「逆に自分が追うという気持ち。金メダリストという肩書は一切、気にしていない」。現状に満足せず、挑戦者の気概でさらなる高みを目指している。
 東京五輪は1年延期された上に、新型コロナウイルス下での開催可否をめぐって世論が揺れた。「五輪前は批判的な声が多かったが、開催を機に応援してくれる方がさらに増えた。影響の大きさを改めて感じた」。懸命に戦う姿が見る人の心をつかんだと思っている。
 難しい状況の中で開かれた自国での五輪は、果たして何を残したのか。そう問い掛けると少し考えてから答えた。「たくさんの方に勇気や元気をお届けできたと思う」
 ◇須崎優衣の略歴
 須崎 優衣(すさき・ゆい)東京・安部学院高を経て、早大を今春卒業。キッツ所属。世界選手権は高校3年で初めて出場した17年に48キロ級、18年には50キロ級を制した。9月の世界選手権(ベオグラード)50キロ級代表。23歳。千葉県出身。 (了)
【時事通信社】
〔写真説明〕東京五輪のレスリング女子50キロ級で金メダルを獲得した須崎優衣=2021年8月7日、千葉・幕張メッセ
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