企業広報戦略研究所(電通PRC内)が 「非財務クロスバリューモデル」を開発
2024年4月8日
株式会社電通PRコンサルティング
個人投資家が重視する企業の非財務情報を明らかにする「非財務クロスバリューモデル」を開発
株式投資の際、3人に1人強(35.5%)が非財務情報を参照
個人投資家が重視する非財務情報は「企業価値向上のための経営計画の説明」
企業広報戦略研究所(所長:阪井完二、所在地:東京都港区、株式会社電通PRコンサルティング内)は、慶應義塾大学総合政策学部(神奈川県藤沢市)保田隆明教授の監修の下、企業の非財務情報に対する個人投資家の評価を数値化する新たな指標「非財務クロスバリューモデル」を開発しました。このモデルを活用することにより、個人投資家視点で、非財務・ESG情報のコミュニケーション設計を行うことができます。
昨今、個人投資家の増加、ESG投資市場の広がりなどから、企業の財務情報だけでなく非財務情報も注視されるようになりました。「非財務クロスバリューモデル」では、国際統合報告評議会(IIRC)のフレームワークのうち、財務資本を除いた人的資本、知的資本、社会・関係資本、製造資本、自然資本の“非財務情報”5項目に「環境、社会、ガバナンス(ESG)」の3項目をクロスさせ、合計15の領域を定め、個人投資家が業種・企業に期待する“非財務情報”を分析・把握することが可能となります。 本リリースでは、この「非財務クロスバリューモデル」を活用した個人投資家(※)2,000人を対象に実施した「個人投資家調査2023」の結果についてもご案内しています。
※個人投資家:国内・海外上場株式保有者
「非財務クロスバリューモデル」の特長
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202404059080-O1-1ekBG400】
■自社の非財務に関する活動状況を5つの「非財務資本」×3つの「経営課題」=15 領域に分類できる
■個人投資家が重視する非財務情報の領域が分かる
■個人投資家視点で非財務コミュニケーション課題が把握可能に
「個人投資家調査2023」調査結果のポイント
■株式投資の際、財務情報を参考にした人は55.0%、非財務情報を参考にした人は35.5%
■株式投資に影響を及ぼす非財務情報は「企業価値向上のための経営計画の説明」(社会・関係資本×ガバナンス領域)
■個人投資家の投資時の情報源は、新聞記事、一般金融情報サイトがTOP2、会社四季報が続く
「非財務クロスバリューモデル」とは
5つの『非財務資本』×3つの『経営課題』=15領域で測定
近年、企業価値の評価において、人的資本をはじめ非財務情報の重要性が増しています。
今回、慶應義塾大学の保田隆明教授の監修の下開発した「非財務クロスバリューモデル」は、国際統合報告評議会(IIRC)のフレームワークにある6つの資本のうちの、財務資本を除いた5つの「非財務資本」と、その資本を用いて、社外・社会から解決を求められている「経営課題(ESG)」をクロスして計15領域に分類することで、各項目が持つ「非財務“価値”」を見える化したものです。
このモデルは、非財務資本という企業の内部資本に、ESGという投資の尺度として用いられる「社外からの」評価を掛け合わせていることが特長で、これにより、社内・社外の“両面から非財務情報を捉える”分類・分析が可能になります。そして、その項目を個人投資家を対象に調査することで、株式投資の際に重視されている非財務情報を明らかにしました。
このモデルを用いて自社の非財務情報を整理・分類し、さらに個人投資家など重要ステークホルダーの評価を把握することで、自社の非財務コミュニケーションの課題を把握することが可能です。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202404059080-O3-0UmIfldg】
「個人投資家調査2023」結果 ~注目の非財務情報の領域とは~
1. 株式投資に影響を及ぼす非財務情報はガバナンス関連に集中
「非財務クロスバリューモデル」を活用し、 15領域それぞれについて具体的な企業活動を2つずつ(合計30項目)設定し、上場企業株式を保有する個人投資家2,000人に、株式投資する際、対象企業のどのような非財務情報を重視しているかを調査しました。
その結果、重視されている領域トップ3は「社会・関係資本×G(ガバナンス)」(55.0点)、「人的資本×G」(54.3点)、「知的資本×G」(52.3点)の順となりました。つまり、個人投資家は「ガバナンス」項目を重視する傾向が鮮明になりました。中でも、「社会・関係資本×ガバナンス」が高く、「製造資本」、「自然資本」については、「E(環境)」「S(社会)」のいずれで見ても、株式投資での優先順位は低い結果でした。下図は全体の領域別スコアですが、業種別でも算出したところ、全体とは違った傾向がみられました。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202404059080-O4-g7vBLfc8】
「個人投資家調査2023」結果 ~注目の非財務情報の項目とは~
2. 株式投資に影響を及ぼす非財務情報の項目は
「企業価値向上のための経営計画の説明」
30項目の中で、1位となったのは「社会・関係資本×G(ガバナンス)」領域の「企業価値向上のための経営計画の説明」(56.2点)でした。さらに上位6位までを「ガバナンス」項目が占める結果となりました。
上位に「ガバナンス」の項目が多いのは、
●昨今、企業側にとって「E(環境)」の項目をコミュニケーションするのはもはや当たり前の状況である
●企業間では大きな差を見いだしにくい「環境」の項目よりも、「ガバナンス」の項目で企業活動の差を見極め、経営に信頼が置ける企業を投資先として選定している。
●あらゆる市場でゲームチェンジが起こりつつあり、持続的な成長を可能にする企業統治(ガバナンス)項目に投資家の視線が集まっている
などの理由が推察されます。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202404059080-O8-34UTkH20】
「個人投資家調査2023」結果 ~非財務情報の参照状況~
3. 株式投資の際、財務情報を参考にした人は55.0%、非財務情報を参考にした人は35.5%
個人投資家2,000人に、メインに投資している業界へ株式投資をする際、対象企業の財務情報や非財務情報を参考にしたかを聞いたところ、財務情報は過半数(55.0%)が、非財務情報は3人に1人強(35.5%)が“参考にした(とても参考にした+やや参考にした)”と回答しました。また、「財務情報を参考にした」1,099人のうち、6割近く(57.9%)が非財務情報も“参考にした”と回答しています。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202404059080-O5-kN0db347】
「個人投資家調査2023」結果 ~非財務情報への意識~
4. 非財務情報の開示で、半数近くが企業に“関心・興味が高まり”、“信頼形成に影響”
非財務情報開示に関する意識を聞いたところ、半数近くが「企業への関心や興味が高まることがある」(とてもそう思う+ややそう思う計47.4%)、「企業に対する信頼形成に影響を与えている」(同46.4%)と回答し、非財務情報を開示することで興味・関心を喚起し、信頼形成に影響を与えることが分かります。さらに、約半数が「企業の評判やイメージを高めるには、非財務情報の開示が必要」(同49.5%)と考え、約4割が「非財務情報を開示する企業に投資したい」 (同38.1%)としています。このことからも、非財務情報の適切かつ効果的な開示は今後ますます重要になってくると考えられます。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202404059080-O6-0d5ve9Ug】
「個人投資家調査2023」結果 ~投資の情報源~
5. 個人投資家の投資時の情報源は新聞記事、一般金融情報サイトがTOP2、
会社四季報が続く
個人投資家が株式投資する際に情報源にしているものは、最多は「新聞記事(経済面)」(28.9%)、次いで「一般金融情報サイト」(28.0%)、「会社四季報」(27.7%)の順でした。株式投資においては、報道機関による第三者視点が加味された「記事・番組」の影響力が高いことがうかがえます。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202404059080-O2-VHy3CD5c】
「個人投資家調査2023」結果 ~投資情報源の年代別特徴~
6. 若年層はSNS、特にYouTubeを株式投資の情報源として活用
情報源を年代別で見ると、「シェアードメディア」は若い層ほど高く、特に「投資系インフルエンサー(個人投資家など)のYouTube」、「金融機関のYouTube」、「アナリストなど専門家のYouTube」などで20代~30代が高くなっており、ソーシャルメディア、とりわけYouTubeの影響力の高さがうかがえます。その数値はオウンドメディアに含まれる「統合報告書・CSR報告書」などを上回っており、今後この数値はさらに伸びてくるものと思われるため注目です。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202404059080-O7-Vc8kFgl1】
監修
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202404059080-O9-40hJ1muO】
保田 隆明先生 慶應義塾大学 総合政策学部教授
リーマン・ブラザーズ証券、UBS証券で投資銀行業務に従事した後に、SNS運営会社を起業。同社売却後、ベンチャーキャピタル、金融庁金融研究センター、小樽商科大学大学院准教授、昭和女子大学准教授、神戸大学大学院経営学研究科准教授および教授を経て、2022年4月から現職。2019年8月より2021年3月までスタンフォード大学客員研究員としてアメリカ・シリコンバレーに滞在し、ESGを通じた企業変革について研究。複数社の上場企業の社外取締役および監査役も兼任。主な著書に『ESG財務戦略』(ダイヤモンド社、2022年)、『地域経営のための「新」ファイナンス』(中央経済社、2021年)、『コーポレートファイナンス 戦略と実践』(ダイヤモンド社、2019年)等。博士(商学)早稲田大学。
1974年兵庫県生まれ。
2023年7月東京証券取引所が発表した上場企業の「株式分布状況調査」によれば、2022年の個人株主数は6,982万人で、過去最多を更新し続けています。2024年から始まった新NISAにより、ますます個人投資家は増加することが予想され、個人投資家とのコミュニケーションはどの企業にとっても大きな課題といえます。
近年、ESG投資市場の拡大やサステナビリティへの意識の高まり、人的資本の重要性の認知などの背景から、財務情報以外の情報、つまり非財務情報の開示も求められています。非財務情報を開示することで、投資家などステークホルダーからの評価や信頼が高まり、企業の価値が向上するのです。
今回の調査結果でも、株式を保有している個人投資家のうち、株式投資にあたり過半数が企業の財務情報を参考にしている、と回答していました。さらに、財務情報を参考にしている人の約6割は、非財務情報も参考にしている、と回答していることから、これからは個人投資家とのコミュニケーションには非財務情報の開示が必須になっていることが分かります。
ただ、闇雲に非財務情報を開示しても、投資家、特に個人とのコミュニケーションは十分ではありません。今やESG関連情報をはじめとする非財務情報はどの企業も積極的に発信しており、個人投資家が適切に投資判断をするのは容易ではなく、せっかくの非財務情報も活かしきれていないのが実状です。従って企業は、企業価値を判断するためのなんらかの指標を基に自社の非財務情報を洗い出し、整理、分類し、一本筋の通った自社の価値として提供しなければなりません。その非財務情報を整理する際に、今回開発した「非財務クロスバリューモデル」を活用することも有用ではないでしょうか。このモデルは、自社にとって重要な非財務情報をつまびらかにできるだけでなく、個人投資家との有益なコミュニケーション手段も明確にでき、今後の非財務コミュニケーションの一助になるのではないかと考えます。
個人投資家調査2023 概要
■調査対象 全国の20歳以上の個人投資家※ 計2,000人
※国内または海外の上場株式を保有
※月1回以上売買する1,000人、それ以下の売買頻度1,000人
■調査方法 インターネット調査
■調査モデル 非財務クロスバリューモデル
■期間 2023年10月16日~10月18日
※本リリース上のスコア構成比(%)は小数第2位以下を四捨五入しているため、表において加減の結果が小数第1位で異なる場合や、合計が必ずしも100%にならない場合があります。
<お願い>本調査内容を転載・引用する場合、転載者・引用者の責任で行うとともに、当研究所の調査結果である旨を明示してください。
企業広報戦略研究所とは
(Corporate communication Strategic studies Institute : 略称C.S.I.)
企業経営や広報の専門家(大学教授・研究者など)と連携して、企業の広報戦略・体制などについて調査・分析・研究を行う、(株)電通PRコンサルティング内の研究組織です。2013年12月設立 所長:阪井完二企業広報戦略研究所サイト http://www.dentsuprc.co.jp/csi/
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