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ブルガリアの国営企業LB Bulgaricum社と乳酸菌に関する共同研究 乳酸菌の種類を容易に分類し性質を解析


乳酸菌研究の効率化に貢献の可能性

 株式会社 明治(代表取締役社長:松田 克也)は、LB Bulgaricum社※1とブルガリア共和国(以下、ブルガリア)の生乳における乳酸菌の収集・分類および性質の解析を共同で実施し、その成果を2023年8月27~31日にオランダで開催された国際学会「14th International Symposium on Lactic Acid Bacteria」にて発表しました。

 これまで当社は、LB Bulgaricum社との乳酸菌に関する共同研究を通じて、ヨーグルトのさまざまな可能性の探索を続けてまいりました。その代表商品である「明治ブルガリアヨーグルト」は2023年12月に発売から50周年を迎えます。
 今後も、LB Bulgaricum社との共同研究をさらに強化し、両社の関係を深化させるとともに、ヨーグルトのさらなる価値向上につなげてまいります。

【研究成果の概要】
①単一の遺伝子配列を用いて乳酸菌Lactobacillus delbrueckii (以下、L. delbrueckii)の亜種(細菌分類における種を細分化したもの)を簡便に分類する方法が、ブルガリアの生乳由来のL. delbrueckiiに対しても有用であることを確認しました。
②生乳から分離した乳酸菌L. delbrueckiiについて、5つの分類区分に分けて菌株数を比較したところ、日本とブルガリアの生乳では菌株の分布・構成比が異なっていることを確認しました。
③日本の生乳において菌株の少なかった区分に分類されたブルガリアの菌株の性質を解析したところ、従来の菌株とは異なる性質を持っていることが確認されました。

【研究成果の活用】
 本研究で用いた手法は乳酸菌L. delbrueckiiの亜種を容易に分類する方法として活用が期待されます。また、解析結果は乳酸菌の地理的分布や生育環境に関して新しい知見である可能性が高く、学術的な意義があると考えられます。引き続き、収集した乳酸菌の性質の解析を進めるとともに、新しい商品開発への活用も視野に入れて検討を進めてまいります。

【研究の目的】
 乳酸菌L. delbrueckiiは6つの亜種に細分化されており、なかでもLactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus(ブルガリア菌)やLactobacillus delbrueckii subsp. lactis(ラクティス菌)はヨーグルトやチーズといった乳製品の製造に欠かせない乳酸菌です。そのため、L. delbrueckiiの亜種を正確に分類することは、乳業界において非常に重要な意味を持っています。その分類方法としてMLSA法※2が知られていますが※3、7種の遺伝子を解析するため、時間と労力を要します。当社はこれまでに日本の生乳から分離されたL. delbrueckiiについて研究を行い単一の遺伝子(hsp60遺伝子)配列だけでも亜種を容易に分類できることを見出しました※4。そこで、今回さまざまなL. delbrueckiiについても、当方法が有用であることがわかれば、効率的な亜種の分類が可能となるため本研究に取り組みました。

【これまでの取り組み】
 LB Bulgaricum社と当社は、2018年より共同研究を開始しています。前回、2021年8月に開催されたLAB13では、ブルガリアの生乳サンプルから多数の乳酸桿菌※5と乳酸球菌※6を分離したこと、また代表的な乳酸桿菌であるL. delbrueckiiについて遺伝的多様性を調査した結果、一部のブルガリア由来株が、地理的に離れた日本のすんき漬け※7から分離されたLactobacillus delbrueckii subsp. sunkii(スンキ菌)と近縁であることを発表しました。

<発表内容>
【演題名】
「生乳から分離されたLactobacillus delbrueckii(ラクトバチルス デルブリュッキ)の亜種判定におけるマルチローカスシーケンス解析とhsp60配列解析の比較」
(Comparison of multilocus and hsp60-sequence data analysis for subspecies determination of Lactobacillus delbrueckii isolates from raw milk)

【方法】
①2019年および2022年にブルガリアの生乳から分離した41のL. delbrueckii 株を対象に、異なる2つの方法(MLSA、hsp60配列解析)を用いて亜種(クラスター)の分布を調べました。
②hsp60配列解析によって推定された亜種(クラスター)の割合を日本での解析結果と比較しました。
③ブルガリアの生乳由来L. delbrueckiiの性質を調べました。

【結果】
①ブルガリアの生乳由来L. delbrueckiiの亜種判定におけるhsp60配列解析の有用性が確認できました。
②日本の生乳から分離されたL. delbrueckiiでは、L. delbrueckii subsp. lactis(ラクティス菌)が含まれるクラスターIの割合が顕著に高かったのに対して※4、ブルガリアの生乳から分離されたL. delbrueckiiでは、L. delbrueckii subsp. sunkii(スンキ菌)が含まれるクラスターIIIの割合が多いことが明らかになりました。
③クラスターIIIに分類された菌株の性質を解析したところ、従来のL. delbrueckii subsp. sunkii(スンキ菌)とは異なる性質を有していることが明らかとなり、この菌株は新規亜種あるいはL. delbrueckii subsp. sunkii(スンキ菌)の新規biovar(生物型)※8である可能性が示唆されました。

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202310171205-O6-AwkeQE5m
*MLSAクラスターはhsp60配列解析から推定されたもの。
**亜種は推定された各MLSAクラスターに対応するもの。
表.生乳から分離されたL. delbrueckiiの亜種分布における日本とブルガリアの比較

 
※1 LB Bulgaricum社
ブルガリア共和国の国営企業で、ブルガリア国内で発酵食品の製造・販売、国外へ乳酸菌スターターの販売をしています。また、当社へブルガリアブランドのライセンスを付与するとともに、本研究以前からも共同研究の取り組みなどを通じて、長年にわたり当社と良好なパートナーシップを築いています。
※2 MLSA(Multilocus sequence analysis)法
複数の遺伝子のDNA塩基配列を連結して分子系統解析を行う方法。近縁の菌株を高精度に識別することができます。
※3 出典:Tanigawa K. and Watanabe K., Microbiol., 157(3): 727-738, 2011.
※4 出典:Tsuchihashi H., et al., J Dairy Sci., 105(3): 2082-2093, 2022.
※5 乳酸桿菌:棒状の形態をした乳酸菌
※6 乳酸球菌:球状の形態をした乳酸菌
※7 赤かぶの葉を塩を一切使わずに「すんき種」を加えて乳酸発酵させた無塩の漬物のことで、木曽地域に古くから伝わる発酵食品
(農林水産省HPより転載:https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/sunki_zuke_nagano.html
※ 8 biovar (生物型):同一の細菌種において異なる性質を持った株を表すときに使用する分類用語

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