「第28回全優石想いを込めたお墓デザインコンテスト」の結果発表
2022年7月18日
全優石
お墓参りは、晴れていたらいいよね。かわいくて皆に愛されるお墓がいいな。そんな家族の想いで、てるてる坊主のお墓ができました。「第28回全優石想いを込めたお墓デザインコンテスト」の「大賞」を、長野県諏訪郡の中村 由梨佳さんが受賞しました。母親の実家のお墓を継承するにあたり、せっかく新しい世代が守っていくのだから、かわいくて皆に愛されるお墓がいいなと思ったといいます。昔、子供の頃、遠足の前の日などに窓辺につるした「晴れを願う」おまじないのための人形。子供ほどの背丈のてるてる坊主の周りには、それぞれ表情の違う小さなてるてるてる坊主7体が並びます。家族そろって遊びに来れて幸せな気持ちになれる、特別な場所になりましたと語ってくれました。
「全優石想いを込めたお墓デザインコンテスト」は、北海道から沖縄まで、全国の優良石材店約300社によって構成する墓石業者の全国組織「全優石」(正式名称:一般社団法人 全国優良石材店の会、会長:吉田 岳、事務局:東京都品川区上大崎2-7-15)が実施したもので、今年で28回目です。新しいデザインのお墓、個性的なお墓、オリジナルなお墓など想いを込めたお墓の写真を全国規模で公募しました。応募資格はお墓の所有者かその家族、または家族の了解を得た石材店という条件付きです。今年6月末の締切までに全国の28名から応募が寄せられました。審査の上、大賞1名、特別賞1名、入賞10名が決定しました。審査はお墓のデザインだけでなく、お墓づくりへの想い、エピソードが重要な審査の対象となっています。
大賞の中村さんのお墓づくりコンセプト「お墓参りを楽しく!」という発想は、今どきの価値観を反映していて、家族の素直な気持ちが清々しく感じられます。お墓参りに行くのが待ち遠しく楽しみになるような、こんな明るいお墓がこれからもっと増えたらいいいなというのが審査員評でした。
いずれ自分たちはここで永遠に眠ることになる。少し寂しい、神妙な心持になります。そういう想いをふきとばすように、明るいお墓づくりをされたのだと思います。そして、自分が入ったあとも、忘れずに、みんなでお墓参りに来て欲しいと、切実に思った時、お参りに来てくれる家族を思い晴れていたらいいな、そんな優しい気持ちになれたのかもしれません。
特別賞には1名が選ばれました。群馬県富岡市の谷内山 博さんは、最愛の娘さんを25歳から15年余りの長い闘病の末に亡くし、悲嘆にくれました。人工呼吸器をつけ、寝たきりの療養生活で視線入力装置を使いパソコンを操作、一文字一文字、一生懸命打った文字で「母さん、ありがとう。父さん、いつもありがとう。」と語りかけてくれた。その声に救われ、支えられ、自分たちからも「毎日頑張ってくれてありがとう」を伝えたそうです。墓石には格別の意味がある「ありがとう」の文字を刻み、墓石の傍らには娘さんが大好きだった2匹のイルカの置物を配しています。娘さんを思いやる、本当の心のこもった素晴らしいお墓です。
入賞は10名です。
まず山形県西置賜郡の石原 忠一さんは亡父のためのお墓です。石原さんの自宅には水性植物の姫蓮の田んぼがあるそうです。何代か前のおばあちゃんが嫁に来るとき、親から株を分けてもらい一緒に嫁いできたものらしいとのこと。7月の下旬には花が咲き、それは見事なものだといい、石原さんの家のシンボルみたいな存在だそうです。お墓にはその蓮の花と葉が「さわやかにそよぐ風」に揺れている様を描き、「感謝」の言葉も刻みました。「また墓参りに行きたくなるような」、「心ときめくような、それでいて心安らぐような」、そんなお墓に仕上がったと語ってくれました。
宮城県仙台市の佐藤 岐恵さんは亡くなったお父さんのためのお墓で入賞しました。絵を描くことが好きで、達筆だった亡父の日記帳には、風景や季節の花々などが、たくさんスケッチされていました。その表紙には、亡父の故郷の風景と、「ある日どこかで」の言葉が刻まれています。墓石にはその日記帳の表紙をそのまま刻みました。これからは、どこへでも自由に出かけて、思いのまま、あの頃と同じように筆を走らせてもらいたい…そんな思いでこの墓石を作りました。
群馬県安中市の原 幸弘さんは、辛い時代を生きた祖父母のための蘇った「新婚生活の場」としてのお墓作りで入賞しました。結婚してすぐに招集され、生まれくるわが子を見ることもなく南の島で戦死した祖父。祖母は忘れ形見の母を一人で育ててくれた。その祖母は103歳で天寿を全うした。祖父母の77年ぶりの新婚生活のふさわしいお墓として、大きな伊達冠石の自然石をど~んと置いたお墓を建立しました。祖父の無念を少しでも和らげたいという鎮魂のお墓です。
埼玉県さいたま市の菊地 眞保美さんは、亡夫のお墓で入賞しました。新婚時代、訪ねて来てくれた父親から「表札が無いから書いてやる」と白い紙に夫の姓名を書いてもらった。それから3回引っ越したが、夫はそれを大切にしまいコピーを玄関前に貼り付けていた。よほどの想い入れがあったに違いない。墓石にはその字をもとに家名を彫り、夫の故郷の山河 栗駒山を刻んだ。素朴だが、心に食い入るお墓に仕上がっています。
神奈川県藤沢市の吉田 敏晴さんは、祭り好きだった亡妻への最後の心尽くしで、大好きだった「神輿」を彫刻しました。「影彫り」という技法で、専用のノミを打つ際に強弱をつけることで、写真のようなリアルな陰影の仕上がりになります。明るく面倒見が良く、誰からも慕われた妻の為に多くの人達がお参り出来る、とても素敵な所に立派なお墓が出来た事を感謝していますと語ってくれました。奥様への何物にも代えがたい贈り物となっています。
神奈川県横浜市の新谷 義幸さんは、故人にゆかりのみなとみらいの花火大会を石塔両脇に影彫りしてもらいパッと明るく彩りました。墓誌板にはステンドグラスと「笑いなさい」の言葉。お墓参りに来て下さった方に、笑顔になってほしくて彫刻したといいます。
山梨県北杜市の田中 賢次さんは、奥様の実家と自分のための両家墓で入賞しました。
逆さL型の石が小さい黒い石を抱きかかえるようなデザイン。黒い石には胡蝶蘭が、L型の石には「感謝」の文字が刻まれます。足元に目をやると敷石にさりげなく「来てくれてありがとう」のメッセージが刻まれています。石碑に手を合わせると自然に故人への「感謝」の気持ちが私たちの中に湧いてきます。またお墓参りを通じて、故人のやさしい気持ちが小さな子供たちにも受け継がれていくようだと語ります。
岐阜県多治見市の酒井 利夫さんは、亡き母のお墓で入賞しました。医師からは「桜が咲く頃まではもたないでしょう」と余命宣告を受け、年明けに桜を見る事なく母はこの世を去りました。スイスが最も感動的だったという母の言葉を思い出し、母が撮影したマッターホルンを忠実に再現、母が大好きだった真っ赤な薔薇をかたどったステンドグラスを配した。足元には母がいつでも満開の桜が見られる様にと、左右から桜の枝を伸ばし、枝にはメジロをとまらせました。失ったかけがえのない人への、家族ならではの精いっぱいの気持ちです。
長崎県雲仙市の中村 和美さんは、病気で亡くなったご主人のためのお墓で入賞しました。ちょうど桜の満開の時期で、亡きご主人を乗せた車内で「桜の花がきれいよ。」と声をかけながら見たのを覚えているといいます。忘れられないその桜の花を石塔に彫刻し、お互いの名前の共通漢字一文字「和」を刻んであります。よほど亡くなった時期の桜が印象的だったのでしょう。
熊本県熊本市の菊池 秀城さんは、両家墓で入賞しました。若い時からガーデニングが好きで、お墓は自然風のガーデニング墓にしたいと思っていたという。「お墓参りが楽しくなるようなお墓」を目指し、お参りに来てくれた人が丸く囲んで座り、ピクニック気分で弁当でも食べられるように中央部を円形の形にし、外柵は座りやすくベンチ代わりになる高さの設定です。これならお墓の周りで故人をしのび、いつまでも話がはずむことは間違いなさそうです。
審査を終え、総評として全優石の吉田 岳会長は以下のコメントを寄せています。
かつてお墓は、どなたかが亡くなられてから建てるのが一般的でしたが、平均寿命が延びたことなどにより、近年では自分や、一緒に暮らしたご家族が入る「あの世での住まい」という感覚でお墓をお建てになられる方が増えています。このため、お墓を悲しい場所、寂しい場所とはとらえずに「お墓に行けば大切な家族に会える」、「いつものように楽しく、笑顔で会いにきてほしい」というような思いを持たれる方が増えていると思います。こうした考えに合わせて、お墓の形状も、慰霊碑や位牌をベースにしたものばかりではなく、最近では、家族の想い出や、感謝の気持ちを表現した、楽しく、明るいデザインも増えてきています。
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