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中沢研究室を中心とする研究グループの論文が情報処理学会「論文賞」を受賞。


脳波を用いたバイオメトリクス認証の研究により認証制度や利便性を向上。
中沢研究室を中心とする研究グループの論文が情報処理学会「論文賞」を受賞。
情報処理学会ジャーナル544編のうちの7編として選定される

金沢工業大学 情報工学科の中沢実研究室を中心とする研究グループの論文が、情報処理学会の2020年度「論文賞」を受賞しました。

受賞したのは、情報処理学会の英文論文誌「Journal of Information Processing Vol.28」に掲載された、山下正人さん(大学院2021年3月修了、中沢研究室)、中沢実教授(情報工学科)、西川幸延教授(同)、阿部倫之教授(同)による「Examination and It’s Evaluation of Preprocessing Method for Individual Identification in EEG」(脳波による個人識別のための前処理法の検討とその評価)です。
情報処理学会において、論文誌ジャーナル・JIP(Journal of Information Processing)・論文誌数理モデルと応用・論文誌データベースの4誌(544編)から傑出したものとして7編のうちのひとつに選ばれ、今回の論文賞の受賞に至りました。選定理由として、「研究分野の読者に洞察を与え、実用化に向けて大きな影響を与える可能性がある」と評価されています。

論文内容
近年、人間の脳活動を利用してコミュニケーションやロボット操作などを行うBMI(ブレイン・マシン・インターフェース)の技術が広く普及しています。その背景には、脳に電極を埋め込むことなく、脳波の生データをリアルタイムに計測できる非侵襲的な脳波計デバイスがプロダクトとして発売されていることがあります。BMIの研究は、本研究室でも障がい者や難病患者の自律走行車いすの支援を目的として行われていましたが、今回はBMIを利用する際に個人認証を考慮している研究へと変えています。

また、個人認証には、IDやパスワードを使った方法が主流ですが、近年の個人認証方法としては、生体情報(指紋や顔など)を使ったバイオメトリクス認証も増えてきています。バイオメトリクス認証は、IDやパスワードを用いた認証方式に比べて、なりすましが難しいという利点があります。しかし、指紋や顔などの生体情報は、常に外部にさらされている情報であるため、カメラによって盗まれる可能性があり、偽造にもつながる可能性があります。

このような問題に対処する方法として、脳波を用いたバイオメトリクス認証が検討されています。脳波は身体の内部情報であり、専用の装置を装着しないと測定できないため、盗難の可能性は極めて低いと考えられます。脳波を用いたバイオメトリクスの研究は、すでにいくつかの事例がありますが、研究の多くは、特徴抽出や学習モデルの改良による認証精度の向上を目的としており、測定した脳波のノイズ等を除去する前処理に着目した事例はほとんどありません。

今回の論文では、画像刺激時の脳波を利用した生体認証システムを提案しました。同時に、認証システムにおける前処理(デジタルフィルタ、アーティファクト対策、エポック)の方法を検証するために、認証技術の精度性能の目安となるEER(Equal Error Rate:等価エラー率)の値を用いて、認証精度の変化を評価しました。その結果、提案した前処理を行うことで、認証精度が向上することがわかりました。また、本システムを利用することで、利便性や安全性が向上することが示されました。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202106176387-O1-rrDAI6f5
認証システムの概要図

受賞論文
「Examination and It’s Evaluation of Preprocessing Method for Individual Identification in EEG」
著者:
 山下正人さん(大学院工学研究科情報工学専攻博士前期課程2021年3月修了)
 中沢実教授(工学部情報工学科)
 西川幸延教授(工学部情報工学科、基礎実技教育課程)
 阿部倫之教授(工学部情報工学科)

受賞理由
BMIは、人間の能力を拡張するために、人間の脳と外部機器との間の直接的な通信手段です。近年、脳波データをリアルタイムに計測する非侵襲的な機器が民生品として発売され、機械学習を用いた脳波データの解析手法が盛んに研究されています。本論文では、画像刺激提示時の脳波データを用いたBMIベースの新しい生体認証システムを提案し、その評価を行います。BMIを用いた提案システムは、盗聴されにくく、98%の個人識別精度を達成しています。本論文は、この研究分野の読者に洞察を与え、実用化に向けて大きな影響を与える可能性があります。よって、本論文は優秀論文賞に値する。

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