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子供用玩具の砂が第3の粉粒体候補に!? 〜混ぜると頑強に!混合比により砂の力学特性を制御〜


概要
 砂、小麦粉や米、ビーズなど、細かい粒子が多数集まってできた系は、私たちの身の回りに多く存在します。これらは粉体ないしは粉粒体と呼ばれています。粉粒体を構成する一粒一粒は固体ですが、その集合体である粉粒体は、液体的に振る舞うことも、固体的に振る舞うこともあります。特に、粉粒体に少量の液体が加わった場合は、乾いた粉粒体に比べて極めて頑強になることが知られています。
 東京都立大学大学院理学研究科物理学専攻の谷茉莉助教、藤尾穂香大学院生、栗田玲教授らの研究グループは、硅砂の一粒一粒がシリコンオイルでコーティングされ、子供用玩具として販売されている砂が、濡れた粉粒体と同様に強い相互作用を示すことに着目し、この玩具の砂に通常の砂を混合すると、子供用玩具の砂が20%程度で、砂の力学特性が大きく変化することを明らかにしました。
 流れや安定性の異なる粉粒体の発見やこれらを制御することは、コンクリートなどの新奇材料の開発や、トンネル工事や土砂崩れ防止などの土木や災害関連分野まで、広い範囲に関係する問題です。簡単にかつ安定的に砂の力学特性を制御できることを示したこの研究結果は、これらの多くの分野への貢献が期待されます。

ポイント
1. 市販の子供用玩具の砂粒同士が強く相互作用することに着目し、この砂を通常の砂に混合して、力学特性を調べました。
2. 通常の砂に子供用玩具の砂が20%程度加わると、混合砂の力学特性が大きく変化することを明らかにしました。
3. 新奇材料の開発や、土木や災害関連分野までに広い分野への貢献が期待されます。

■本研究成果は、2月22日付けでJapan Physical Societyが発行する英文誌J. Phys. Soc. Jpn. に発表されました。本研究の一部は、学術振興会科学研究費補助金(若手研究No. 20K14431および基盤B No. 17H02945,20H01874)の支援を受けて行われました。

 
研究の背景
 砂場や砂丘の砂、小麦粉、米、ビーズなど、我々の身近には細かい粒子が集まった系が多く存在します。これらは粉体ないしは粉粒体と呼ばれています。粉粒体は、例えば砂時計の中を流れる砂のように流体的な振る舞いをすることもあれば、漏斗(ホッパー)の出口で詰まったり硬い土壌のように固体的な振る舞いをすることもあります。粉粒体の示す様々な現象を説明できるような、粉粒体の基礎方程式が確立されていないのが現状です。
 このような粉粒体に更に液体が加わると、粉粒体の力学的な特性は大きく変化します。これは、液体が砂粒の間を橋渡し(液架橋)することで、粒子間の実効的な相互作用が大きくなるためです。粉粒体、特に、濡れた粉粒体の力学特性とその制御は、食品や穀物の輸送から、土砂崩れ等の自然災害までに関係する重要な問題です。
 近年、シリコンオイルコーティングされた砂が子供用玩具として販売されています。濡れた砂の場合は、液体の重力や蒸発の影響により、安定的な相互作用を保つのが難しい一方で、この子供用玩具の砂の場合には、経年変化が少なく、安定的に力学特性を制御することができます。乾いた粉粒体、濡れた粉粒体についで、このコーティングされた砂を第3の粉粒体候補として着目し、通常の硅砂を混合させ、混合比と力学特性の変化を調べました。

研究の詳細
 東京都立大学大学院理学研究科物理学専攻の谷茉莉助教、藤尾穂香大学院生、栗田玲教授らの研究グループは、子供用玩具の砂に、通常の硅砂を混合し(図1(a))、混合比と力学特性の変化を調べました。この子供用玩具の砂は、硅砂の一粒一粒がシリコンオイルでコーティングされていることが知られています。このシリコンオイルコーティングされた砂(子供用玩具の砂)を顕微鏡で観察したところ、コーティングされた粒子同士を接触させてから引き離した時に、液体の“糸”が生成されることがわかりました(図1(b1))。この“糸”は、粒子同士が接触していた時に、液架橋ができていたことを示しています。一方で、このコーティングされた砂粒を、通常の砂粒(コーティングされていない砂粒)と接触させてから引き離しても、同様のはっきりとした“糸”は観察されませんでした(図1(b2))。コーティングされた砂同士のみに強い相互作用が働くということがわかったので、谷助教らは、2種類の砂の混合比αを変えることで、混合砂の力学特性が変化するのではないかと予想し、自重耐久性を調べる3つの実験を行いました。

 
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202102241375-O3-1yuM1MdJ

 
 まず、混合砂200gをふるいの上に乗せ、ふるいを振るう前にメッシュの上に残った砂の量を調べました(図2)。コーティングされた砂の割合αが0.2程度までは、全ての砂が自発的にメッシュを通り抜けるのに対し、αが0.2程度より大きくなると、ほとんどの砂が自重に耐えてメッシュの上に残ることがわかりました(図2(a))。また、ふるいのメッシュサイズ(図2(a)の青(S)、赤(L)の違い)や、コーティングされた砂の種類(図2(a)の赤(L)と緑(L-k)の違い)には依らない性質であることがわかりました。さらに、混合比αの砂が通り抜けられる最小の直径サイズDcも、αが0.2程度で急激に増加することがわかりました(図2(b))。この最小直径サイズDcは砂が作るクラスターサイズを反映していると考えられるため、コーティングされた砂の割合が0.2程度でクラスターサイズが急激に増加することがわかります。

 
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202102241375-O2-9hpqoz31

 
 さらに充填率を調べたところ、砂を押し固めた場合の充填率(RCP(注1))はほぼ一定であるのに対して、砂を容器に静かに注ぎいれた場合の充填率(RLP(注1))は、混合比αが0.2程度で大きく減少することがわかりました(図3(a))。また、安息角(注2)もαが0.2程度で増加することがわかりました(図3(b))。

 
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202102241375-O1-39FkQ67R

 コーティングされた砂の割合αが0.2程度で、砂が作るクラスターサイズが急激に増加し、砂の自重に対する力学特性が大きく変化するという事実は、コーティングされた砂がネットワークを形成したと考えるパーコレーション理論(注3)と合致しており、自重耐久性の変化はこのネットワーク構造によって引き起こされていると考えられます。また、この考え方は、高分子がネットワークを形成することで弾性を有するゲル(注4)と類似しています。

研究の意義と波及効果
 今回の研究により、子供用玩具の砂(シリコンオイルコーティングされた砂)を通常の砂に20%程度混合することで、砂の自重耐久性が著しく増加することが明らかになりました。そのメカニズムは、相互作用するコーティング砂がネットワークを形成し、自重に対して強くなるためだと考えられます。
 濡れた粉粒体など、相互作用する砂の力学特性はまだわからないことが多くあります。コーティングされた砂と通常の砂を混合した複合粉粒体を用いた研究は、これまでに報告例がなく、今後の研究発展も期待されます。粉粒体の力学特性の理解と制御は、コンクリートなどの新奇材料の開発や、トンネル、土砂崩れなど、産業から土木や自然災害対策などまで、広く関係する問題です。粉粒体の混合比と力学特性変化に関する本研究成果は、これら関連分野への応用につながることが期待できるものと考えています。

【用語解説】
(注1)RCP(random close packing)、RLP(random loose packing)
RCPは砂をランダムに最密に充填した状態のこと。RLPは砂をランダムにスカスカに充填した状態のこと。RLPの充填率は、砂の相互作用が自重に対して耐えられるかどうかを反映する。

(注2)安息角
砂山を作った時にできる斜面と水平面の角度のこと。

(注3)パーコレーション理論
対象とする物質が系内でどのように繋がるか(ネットワークを形成するか)、ネットワークが系の特徴にどのように反映されるかを確率的に議論する理論。例えば、2種類の粒子をランダムに配置させた時に、3次元系であればどちらかの粒子が約20%程度で系全体につながったネットワークを作ることができる。

(注4)ゲル
高分子がパーコレーションした状態で、ゼリーのような弾性を持つ。吸水性も良く、コンタクトレンズやおむつなどに使われている。

【発表論文】
“Transition Behavior in Silicone-coated Sand Mixtures”
Marie Tani, Honoka Fujio and Rei Kurita
J. Phys. Soc. Jpn. : https://journals.jps.jp/doi/10.7566/JPSJ.90.033801(2021)
DOI: 10.7566/JPSJ.90.033801

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