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社会保険料は「4~6月の残業」より「居住地と働き方」で金額が変わる


正社員として入社する際は、労災保険や雇用保険などの労働保険と、健康保険(40歳以上は介護保険にも加入)や厚生年金保険などの社会保険に、加入する場合が多いと思います。

この中の労災保険料は原則として、勤務先が全額を負担するため、従業員の負担はありません。

それに対して雇用保険料と社会保険料は、勤務先のみが負担する雇用保険二事業の保険料を除き、従業員と勤務先が折半して負担するため、給与から所定の金額が控除されます。

例えば雇用保険の「一般の事業」で働き、健康保険は「東京都の協会けんぽ」に加入する、40歳未満の会社員の月給が20万円だった場合、ここから控除される保険料(2022月5月時点)は、次のような金額になります。

雇用保険料:600円

健康保険料:9,810円

厚生年金保険料:1万8,300円

一方で同条件の会社員の月給が30万円だった場合と、40万円だった場合の保険料は、次のような金額になります。

【月給が30万円だった場合】

雇用保険料:900円

健康保険料:1万4,715円

厚生年金保険料:2万7,450円

【月給が40万円だった場合】

雇用保険料:1,200円

健康保険料:2万110円

厚生年金保険料:3万7,515円

以上のようになりますが、このように保険料の金額を並べてみると、社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料)は雇用保険料より、かなり金額が高いとわかります。

そのため給与から控除される保険料を安くしたい場合には、社会保険料をターゲットにした方が良いのです。

社会保険料をターゲットに

2022年度から始まる「年金の新制度」は、組み合わせて利用した方が良い

社会保険料を定期的に改定する「定時決定」

月給から控除される社会保険料は、入社する時の月給を元にして算出します。

この月給には基本給だけでなく、家族手当、住宅手当、通勤手当、役付手当などの、各種の手当も含めます。

そのため扶養家族の多い方は独身の方より、社会保険料が高くなりやすいのです。

結婚によって扶養家族が増えたり、4月などに定期昇給があったりすると、月給の金額が増えるため、それに合わせて社会保険料の金額を、改定する必要があります。

例えば結婚して家族手当を受け取るようになり、月給の金額が約2万円以上増えた場合、随時改定という仕組みにより、家族手当を受け取った月から起算して4か月目に、社会保険料の金額を改定するのです。

一方で月給の金額の増額が、ここまで達しなかった場合には、定時決定という仕組みにより、4~6月の月給の平均額を元にして、社会保険料の金額を改定します。

この定時決定は毎年実施されており、原則的には7月1日時点で、社会保険に加入している方が対象になります。

定時決定によって定められた社会保険料は、随時改定が必要になるくらいの月給の変動がなければ、9月~翌年8月まで適用されます。

ただ社会保険料は原則として、翌月の月給から控除するため、定時決定の場合は10月から、随時改定の場合は5か月目から、月給から控除される社会保険料の金額が変わるのです。

個人の努力だけで残業を減らすのは難しい

定時決定で4~6月の月給の平均額を算出する際は、上記のように基本給だけでなく、各種の手当も含めます。

また各種の手当の中には、4~6月(例えば月末締めで翌月10日払いなら3~5月)の、残業手当も含めます。

そのため社会保険料の金額を安くしたいなら、4~6月には残業しない方が良いと、主張する方がいるのです。

ただ業種や職種によっては4~6月頃に、年間で仕事がもっとも忙しい時期を迎えます。

これに加えて企業規模が小さいほど、残業時間が長くなりやすいため、個人の努力だけで残業を減らすのは、なかなか難しいと思うのです。

また社員口コミサイトを運営している、オープンワークが行った調査によると、2012年から2021年の間に、国内企業の月間平均残業時間は半分、有休消化率は1.5倍になったそうです。

このように月間平均残業時間が、かなり減っている現状から考えると、残業を更に減らす余地は、少ない可能性があります。

居住地や働き方を変えると社会保険料が安くなる

通勤時間の長い方が居住地を変えて、勤務先の近くに住むようにすると、通勤手当が少なくなります。

また働き方を変えて、在宅勤務のテレワークを選択したり、エリア限定の社員になったりした場合にも、通勤手当が少なくなります。

個人の努力で残業を減らすより、4~6月の月給の平均額が、以前より低くなる場合があるのです。

これに加えて通勤時間が短くなったり、通勤日数が減ったりすれば、ストレスの緩和になるだけでなく、時間的な余裕ができます。

そのため社会保険料の金額を安くしたい場合には、4~6月の残業を減らすより、居住地や働き方を変えた方が良いと思うのです。

社会保険料の金額が安くなった時に生じるデメリット

将来的にデメリットもある

会社員として働いている方が、所定の受給要件を満たした場合、国民年金から支給される老齢基礎年金と、厚生年金保険から支給される老齢厚生年金を、原則65歳から受給できます。

後者の老齢厚生年金の金額は、勤務先から受け取った月給と賞与を平均した額と、厚生年金保険に加入した月数で決まります。

また月給が20万円、30万円、40万円の方が厚生年金保険に、1か月加入した時に増える老齢厚生年金の目安は、次のような金額になります。

20万円:1,096円

30万円:1,644円

40万円:2,192円

このように月給の金額が多いほど、将来に受給できる老齢厚生年金の金額が増えるのです。

そのため残業手当や通勤手当を減らして、給与から控除される社会保険料を安くすると、将来に受給できる老齢厚生年金の金額が、少なくなってしまう場合があります。

また健康保険から支給される次のような手当金も、12か月間の月給を平均した額で算出するため、金額が少なくなってしまう場合があります。

  • 業務外の病気やケガで仕事を休んだ時に支給される「傷病手当金」
  • 出産で仕事を休んだ時に支給される「出産手当金」

こういったデメリットがあるため、老後資金の準備が十分でない方や、近いうちに出産する予定がある方などは、給与から控除される社会保険料の金額を、あまり安くしない方が良いと思うのです。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)

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