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森に癒しを求めて 読む森林浴ミステリー【Book】


騒がしく忙しい都会で過ごしていると、たまに自然が恋しくなる。静かな緑に囲まれて木々や空を眺めながら、優雅なひとときを過ごしたい。森の中で何も考えずぼーっとしたい。毎日頑張っているサラリーマンやOLの皆さんは、誰もが一度はそう思ったことがあるのではないだろうか。

自然には不思議な力がある。例えば、大きな滝や樹木などが“パワースポット”と称され、そのパワーを求めて各地から人々が集まってくる光景はなじみのものだ。また、パワースポットなんて言わなくても、自然の中に身を置くだけで、精神が安定し、心が浄化されたような気持ちになれる。だから自然は素晴らしい!生まれた頃から都会っ子な私でも、自然は大好きで、たまに癒しを求めに訪れたい場所だ。

そんな自然、森を舞台にした物語が『森に願いを』である。
本書は、様々な悩みを抱える者が森に迷い込み、森番の青年と出会い、癒されていく連作短編集である。森に迷い込む者はみな、それぞれ深刻に悩み、未来への希望を失っている。息子が引きこもりになった、就職がうまくいかない、余命宣告を受けた、自殺未遂した、リストラされたなど… 彼らの傷ついた心が最後、どのように変化するのか、見届けてほしい。

キーマンとなるのが森番の青年だ。どこからともなくそっと現れて、優しく声をかけてくるテノール声の青年。必要以上に干渉してくることもなく、でも行けば出会えて、その自然体な関係性が私には心地よかった(主人公たちもみんなきっとそう)。誰よりも森と自然を愛しており、森にも人にも優しい彼にいつのまにか惹かれていた。
また、青年がいないときに出会った、メアリ。彼女もまた優しくて好きになった。二人ともいろんなことを教えてくれた。

主人公たちは何に悩んで森に入り込んできたのか、始めからすべては明かされず、読むにつれて詳細が明らかになっていく構成も面白い。どうしたの?何があったの?と展開が気になり、ページをめくる手が止まらない!という仕掛けだ。また、青年の秘密がラストにかけて明らかになっていく構成も、ちょっとしたトリックになっている。

発行元の実業之日本社では、本書を“〈読む森林浴〉ミステリー”と称しており、なるほどと思った。確かにこれは〈読む森林浴〉だ。森という癒しのなかで、青年の優しさに触れる。そのダブル効果で疲労回復!安らぎを得られるというわけだ。

読み進めていく過程も面白く、読後も心地よく温かい。疲れたり悩んだりしている方は、ぜひこの森に足を運んでみてほしい。森と青年とメアリが、あなたの心と体を癒してくれるだろう。

(フィスコ 情報配信部 編集 細川 姫花)

『森に願いを』(実業之日本社文庫)  乾 ルカ 著 本体価格667円+税 実業之日本社




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