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アートネイチャ Research Memo(8):中期的な価値創造に向けた成長戦略を展開


*16:38JST アートネイチャ Research Memo(8):中期的な価値創造に向けた成長戦略を展開 ■中期経営計画

4. 成長戦略
これまで述べてきた環境認識とアートネイチャー<7823>の強みを背景に、価値創造に向けた成長戦略を展開する計画である。現在、コロナ禍においても需要を着実に捉えてきた同社にとって、同業他社に対し一気に攻勢に出るチャンスとなっている。このため、以下で詳述するが、男性向け事業で他社との差別化戦略の推進、女性向け事業では新たな顧客接点の創出及び事業間の連携を強化、女性向け既製品事業では出店数の拡大と既存顧客に対する販売戦略の強化、その他事業では認知度拡大に向けた取り組みの強化、そして新領域での事業開発を推進する計画である。そのうえで、すでに毛髪市場でトップシェア(35%程度)と推測されるが、さらにシェアを40%へと拡大するとともに、出遅れていた女性向けでもトップの座を狙う。

男性向け事業では、他社との差別化戦略を推進して1.5%成長を維持する計画である。そのため、これまでも高付加価値商品を提供してきたが、さらに価格で負けない高付加価値商品を開発するとともに、原材料高に対する既存モデルの価格改定、安心して来店できる環境整備、人員増強による受入体制の強化、ウィッグ訴求のプロモーション強化(新たなCMキャラクターを採用)、シニア層以外への認知拡大に向けた取り組み強化――などを推進する。同業他社は、コロナ禍の痛手で新商品を開発する余力に欠けるように見受けられ、特に常時身につけるため品質指向の傾向が強いウィッグにおいて、自社内に蓄積してきた技術と毎年2回新製品を投入する開発力で圧倒的な差をつける考えである。

女性向け事業では、新たな顧客接点の創出と事業間連携の強化により5.4%成長を確保する計画である。そのため、フィーリンを超えるメガヒット商品の開発、原材料高に対する既存モデルの価格改定、自社アプリ強化などによる新たな顧客接点の創出、女性向け既製品事業との連携強化によるハイブリッド店や広告の展開、新たな催事の開発――などを推進する。特に前中期経営計画のヒット商品であるフィーリンの買い替え需要が始まりつつあるが、確実にその需要を確保することが重要な目標となっている。また、新たな顧客接点の創出では、広告による反響営業に加え、SNSやオンラインを活用した新たな営業チャネルを構築する方針である。女性向け既製品事業との連携では、これまで連携が限定的だったため代替の既製品を提案しきれず成約に至らなかったケースもあり、ハイブリッド店の強化などによって機会損失を防ぐ考えである。

女性向け既製品事業では、出店数の拡大と既存顧客に対する販売戦略の強化により12.7%成長を達成する計画である。そのため、既製品ウィッグユーザーの潜在需要を刺激するオーダーメイド品質の商品投入、原材料高に対する既存モデルの価格改定、未出店エリアへの出店拡大(2026年3月期末までに9店舗を出店する予定)、女性向け事業との連携強化、リピート販売体制の強化――などを推進する。特に、新規購入後にメンテナンスなどで継続的に来店してもらい、然るべきタイミングで追加購入を図ってリピート売上を増やしていく計画である。リピート売上を拡大するには顧客を確実にフォローする体制が重要で、商品供給体制やアフターメンテナンスの内容見直しなど生産性向上に向けた取り組みにより応対時間を捻出し、人材の育成や顧客アプローチ手法の見直しなどにより成約率の向上を図る。

その他事業の通販・海外事業では、アートネイチャーブランドの認知拡大に向けた取り組みの強化、アフターコロナにおける海外での営業活動の再開、収益性を重視した運営の徹底などを推進する。この結果、前述したように、中国国内における販売事業から撤退している。また、新領域の事業については、本業に隣接した「美と健康」に係る事業を開発・拡充し、2026年3月期に売上高で30億円(最大100億円)を目指す。

なお、サステナビリティ推進において直近の重要な意思決定は、バングラデシュでの新工場設立決議である。設立の目的は、コロナ禍でロックダウンの長引いたフィリピン一国集中による生産リスクの分散や、自然災害、政治リスク、経済発展に伴う労働者雇用確保などへの備え、今後の事業拡大及び生産台数増加に伴う生産ラインの確保、オーダーメイドウィッグと既製品ウィッグの生産能力の増強にある。一方、中期経営計画における資金計画は、女性向け事業への積極投資、既存店舗の移転リニューアル・改修、ITシステム投資など持続的な成長に向けた積極的な事業投資に年間30億円、魅力ある配当など株主還元の向上に年間10億円を計画、これに対しておおむね年間30億円~50億円が見込まれる営業キャッシュ・フローで充当する予定である。さらに、新領域の事業の獲得や拡充に対して3年間の上限として100億円を検討しているが、これには手元資金(2024年3月期第2四半期末の現金及び預金残高202億円)を充てる予定である。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)

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