シナネンHD Research Memo(10):既存事業の収益拡大、強みを生かした新規事業の創出
5. 事業戦略
シナネンホールディングス<8132>はこうした成長戦略を、新規事業の創出や既存事業の収益拡大といった事業戦略に落とし込んで展開する方針である。なお、2027年度に経常利益100億円を目指しているが、既存事業で約60億円、新規事業で約40億円を達成する計画である。
(1) 新規事業
新規事業では、主として脱炭素社会に寄与する分野への進出を計画している。再生可能エネルギーでは、再生可能エネルギー発電のEPC契約※や運用・保守点検、燃料供給などを請け負い、廃棄物の資源化では、産業・一般廃棄物の処理のほか、燃料・原料・肥料・飼料として再資源化を行う技術の採用や実証実験・プロジェクトに参画する。新燃料では、化石燃料と比較して環境負荷が低いバイオエタノールやSAFなどのバイオ燃料の製造と供給に進出、住宅・建物の脱炭素化では、既存の住宅・建物の脱炭素化につながる商品・サービスの提供やプロジェクトへの参画を進める。現在、千葉県と埼玉県のリサイクルサンターで製造している石炭代替の木質チップに対するニーズが強く、工場がほぼフル稼働状態となっているため、新たなリサイクルサンターを建設する計画である。また、食品残渣の飼料化・肥料化やバイオガスの製品化なども計画している。
※EPC(Engineering, Procurement and Construction)契約:設計、調達、建設・試運転を一括で請け負う契約。
(2) BtoC事業
BtoC事業では、顧客数の拡大や高付加価値サービスの拡充により高収益化をねらう。エネルギー事業では、採用や教育による営業力強化、M&Aなどによる販売店からの商権買い取りや業務受託の促進、保安工事の事業化、カーボンニュートラルLPGの販売、安定電源の調達などにより、直売を中心に顧客数を伸ばす計画である。また、住まいと暮らし事業では、提案営業による新規顧客の開拓、脱炭素に貢献する高効率機器の販売、省エネ改修工事の推進などにより、住宅修繕やリフォームといった高付加価値サービスを拡大する計画である。このなかでBtoC事業最大の成長ドライバーとなりそうなのが販売店の商権買い取りで、販売店の高齢化などにより再編の機運が日増しに高まっており、将来的にこうした傾向は一段と拡がっていくことが予測される。なお、新規事業による事業領域の拡大も検討している。
(3) BtoB事業
BtoB事業では、石油中心から電力・再生可能エネルギーなど総合エネルギーサービスへの転換を図る。市況変動に左右されない電源調達を背景に、環境に留意した高付加価値差別化商品の販売、CPPAの取り扱い拡大(50MW)や蓄電所事業の開始、家庭用再生可能エネルギー機器点検業務の全国展開などにより、電力・再生可能エネルギー事業を石油事業と並ぶ主力事業に育成する。石油事業は、燃料供給施設のM&Aや大型タンクの活用などによる灯油及び軽油の強化、北海道エリアにおける物流機能強化による市場シェア拡大などをテコに、収益を最大化していく方針である。このほか、住宅プロダクツ事業の新築住宅市場への進出、バイオマス燃料や水素、アンモニアなどの販売、EV蓄電池事業、海外における再生可能エネルギー事業など新たな展開も検討している。
(4) 非エネルギー事業
非エネルギー事業では、建物維持管理事業とシェアサイクル事業が成長ドライバーとして期待されている。建物維持管理事業では、2023年10月に本格スタートした建物維持管理4社を統合したシナネンアクシアによりワンストップサービスを実現し、集合住宅の専有部や共用部のメンテナンス、ビルメンテナンスへと業務範囲の拡大を図る一方、各業務領域を深耕することで安定収益の確保と利益率の向上を図る。シェアサイクル事業では、ステーションの開拓を中心に、更なる収益性の向上と新たな収益源の創出を進める考えである。更なる収益性の向上では、利用頻度の高い高収益エリアでのステーション開拓の加速、データ分析力とオペレーション力の強化による運営効率の向上、キャンペーンの積極展開による利用頻度の向上などを進めていく計画である。また、新たな収益源の創出では、「HELLO CYCLING(R)」全体のメンテナンス体制や「ダイチャリ短期設置プラン(R)」のような新たなサービスの開発や、新たなモビリティへの対応を積極化していく考えである。特にシェアサイクル事業は、ニーズが急拡大しているとはいえ、利用率がいまだ低く成長余地の大きい事業といえ、同社の中長期的な成長を押し上げていくことが期待されている。
6. 資本戦略
こうした事業戦略を支える資本戦略の基本方針は、持続的な企業価値向上に向け、健全な財務基盤を維持・活用し、成長投資機会に柔軟かつ機動的に対応してROEを向上するとともに、安定した株主還元を継続することである。このように財務基盤と成長投資のバランスを重視して強固な成長基盤を構築していく方針だが、第三次中期経営計画のなかではとりわけ、収益性と資産効率の改善を通じて株主資本コスト(3%程度)を上回るROE8%以上を安定的に創出する計画となっている。さらに、PBR(株主純資産倍率/現状約0.8倍前後)1.0倍超の実現も目指す。これらを背景に株主還元策を改善、配当性向30%を目安に1株75円を下限に安定配当を維持している現状から、中期的に配当性向を40%に引き上げ、かつ増配していく意向である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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