昭和産業 Research Memo(1):2024年3月期第2四半期の営業利益は期初の通期予想をほぼ達成
1.2024年3月期第2四半期の連結業績
昭和産業<2004>の2024年3月期第2四半期の連結業績は、売上高175,582百万円(前年同期比7.4%増)、営業利益7,352百万円(同217.2%増)、経常利益8,558百万円(同158.4%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益5,730百万円(同194.2%増)となった。原料穀物相場やエネルギーコストが引き続き高値圏で推移するなか、コスト上昇に見合う価格改定を実施し、適正価格での販売を優先してきたことにより増収増益となった。2024年3月期通期の期初計画に対する第2四半期の進捗率は、売上高が48.8%、営業利益が98.0%、経常利益は99.5%と順調に進捗している。
2.セグメント別業績
同社は、2023年4月より営業組織を、「プロダクトアウト型」からマーケットイン志向の業態別・顧客別の「ワンストップ型」の体制に改編し、事業管理体制を変更した。それに伴い、報告セグメントの区分も変更しており、従来の「製粉事業」「油脂食品事業」「糖質事業」「飼料事業」の4区分のうち、「製粉事業」「油脂食品事業」「糖質事業」を「食品事業」に統合した。食品事業の内訳は、「製粉」「製油」「糖質」のカテゴリに分かれ、「製粉」は小麦粉、プレミックス、パスタ、焼成パン、ふすまを、「製油」は食用油、大豆たん白、冷凍食品を、「糖質」は糖化製品、コーンスターチ、加工でん粉を扱う。
食品事業の売上高は143,530百万円(前年同期比9.0%増)、営業利益は7,320百万円(同230.4%増)となった。新型コロナウィルス感染症の5類移行に伴い外食や飲料用途などの需要が回復してきた一方で、コンビニエンスストア向けの日配品や内食需要は価格上昇による買い控えなどにより、物量面では厳しい状況が続いた。しかし、原料穀物相場の高値圏での推移や円安進行による輸入コスト、エネルギーコスト上昇に見合う、適正価格での販売を優先したことにより、各カテゴリとも前年同期比で増収となった。
食品事業の製粉カテゴリでは、輸入小麦の政府売渡価格が2023年4月に平均5.8%(税込価格)引き上げられたことを受け、小麦粉製品において、価格改定を実施した。業務用については、組織改編によるワンストップ型の提案営業により大手外食チェーンとの小麦粉の新規取引が実現するなど、小麦粉の販売数量は前年同期を上回っている。また、外食市場の回復などによりパスタの販売数量も前年同期を上回ったが、プレミックス、ふすまの販売数量は前年同期を下回った。一方、家庭用の小麦粉、プレミックス、パスタについては、価格改定による買い控えなどもあり販売数量は前年同期を下回っている。製粉カテゴリ全体では、価格改定により前年同期比で増収増益となった。
製油カテゴリは、長寿命オイルや油染みの少ないベーカリー用オイルなど機能的に価値のある商品提案や課題解決型営業により、価格に見合った高付加価値商品の販売量が伸び、利益に寄与した。また、上述したベーカリーなど製粉事業チャネルへの提案や、糖質事業チャネルである飲料メーカーにカフェ飲料のコクの底上げを実現するため油脂を提案するなど、他事業チャネルを生かした提案も強化しており、こうした顧客のニーズや課題に対応したことで適正価格での販売も浸透した。しかし、価格上昇に伴う需要減退の影響を受けるなか、適正価格での販売を優先させたことなどもあり、販売数量は業務用・家庭用ともに前年同期を下回ったものの、製油カテゴリ全体では、価格改定の浸透により前年同期比で増収増益となった。
糖質カテゴリは、外食や業務用の重要が回復してきたが、糖化製品の販売数量は前年同期を下回った。コーンスターチ、加工でん粉の販売数量についても、工業用途などの需要が減少し前年同期を下回った。しかし、価格改定がようやくコストの上昇に追い付いたほか、同社と敷島スターチ(株)、サンエイ糖化(株)が一体となった生産拠点の最適化や、事業構造改革を進めたことによる効果が現れ、「粉あめ」「結晶ぶどう糖」「オリゴ糖酸」等の差別化製品の拡販も寄与した結果、糖質カテゴリ全体で前年同期比増収増益となったとともに、食品事業の大幅な回復を牽引した。
飼料事業の売上高は29,693百万円(前年同期比1.6%増)、営業利益は119百万円(同23.2%減)となった。2022年秋に感染が確認された鳥インフルエンザの感染拡大や2023年夏の猛暑が配合飼料の販売に影響し、配合飼料及び鶏卵の販売数量は前年同期を下回った。一方、円高の進行や原料価格が高値で推移するなか、コスト上昇に見合う適正価格での配合飼料の価格改定を進めたことで増収となった。グループ会社である昭和鶏卵(株)の預託農場への飼料販売、鶏卵生産及び販売と、一気通貫したレイヤー事業基盤の強化により生産性は向上し、収益の確保に寄与している。また、高付加価値製品の「人工乳」「オリゴ糖配合飼料」の販売も順調に推移した。しかし、前期に大幅に増加した(一社)全日本配合飼料価格畜産安定基金へのメーカー側の拠出金の負担も大きく影響し、減益となった。
不動産業、保険代理業、自動車リース業、運輸・倉庫業などを行うその他の売上高は、2,358百万円(前年同期比7.5%減)、営業利益は660百万円(同5.6%減)となった。倉庫業については、貨物獲得競争が激化するなかで、商社や主要顧客との取り組みを強化したが、貨物取扱量は前年同期を下回った。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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