昭和産業 Research Memo(1):価格改定が浸透し2024年3月期第1四半期の営業利益は82.5%増
1. 2024年3月期第1四半期の連結業績
昭和産業<2004>の2024年3月期第1四半期(2023年4月~6月)の連結業績は、売上高89,799百万円(前年同期比11.3%増)、営業利益3,313百万円(同82.5%増)、経常利益4,042百万円(同85.4%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益2,783百万円(同95.2%増)となった。原料穀物相場やエネルギー価格は引き続き高値圏で推移しているが、繰り返し進めてきた価格改定が浸透し、コストの上昇に追い付いてきたことにより増収増益となった。また、第1四半期は新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)が落ち着きを見せ、行動制限の解除などで外食や飲料用途などの需要が回復してきたこともあり、各段階の利益は、今期予想を大きく上回る進捗となった。通期計画に対する第1四半期営業利益の進捗率は44.2%となった。
2. セグメント別業績
同社は、2023年4月より営業組織を「プロダクトアウト型」からマーケットイン志向の業態別・顧客別の「ワンストップ型」の体制に改編し、事業管理体制を変更した。それに伴い、報告セグメントの区分も変更しており、従来の「製粉事業」「油脂食品事業」「糖質事業」「飼料事業」の4区分のうち、「製粉事業」「油脂食品事業」「糖質事業」を「食品事業」に統合した。食品事業の内訳は、「製粉」「製油」「糖質」のカテゴリに分かれ、「製粉」は小麦粉、プレミックス、パスタ、焼成パン、ふすまを、「製油」は食用油、大豆たん白、冷凍食品を、「糖質」は糖化製品、コーンスターチ、加工でん粉を扱う。
食品事業の売上高は73,665百万円(前年同期比12.1%増)、営業利益が3,353百万円(同69.9%増)となった。コロナ禍による行動制限の解除などにより外食や飲料用途などの需要が回復してきた一方で、コンビニエンスストア向けの日配品や内食需要は価格上昇による買い控えなどにより、物量面では厳しい状況が続いた。一方、原料穀物相場の高値圏での推移や円安進行による輸入コスト、エネルギーコスト上昇に伴い、適正価格での販売を優先したことにより、各カテゴリとも前年同期比で増収となった。なお、各カテゴリの売上高、利益等の金額は非開示としている。
製粉カテゴリは、輸入小麦の政府売渡価格が2023年4月に平均5.8%(税込価格)引き上げられたことを受け、6月納品分から原材料価格の上昇に物流費とエネルギーコストの上昇を織り込んだ小麦粉製品の価格改定を実施した。業務用については、組織改編によるワンストップ型の営業提案により大手外食チェーンとの小麦粉の新規取引が実現するなど、小麦粉の販売数量は前年同期を上回った。また、外食市場の回復などによりパスタの販売数量も前年同期を上回ったが、プレミックス、ふすまの販売数量は前年同期を下回っている。一方、家庭用の小麦粉、プレミックス、パスタについては、価格改定による買い控えなどもあり販売数量は前年同期を下回った。製粉カテゴリ全体では、価格改定により前年同期比で増収となった。
製油カテゴリは、長寿命オイルや油染みの少ないベーカリー用オイルなど機能的に価値のある商品提案、課題解決型営業により、価格に見合った高付加価値商品の販売量が伸び、利益に寄与した。また、こうした顧客のニーズや課題に対応したことで適正価格での販売も浸透した。しかし、適正価格での販売を優先させたことや価格上昇に伴う需要減退などもあり、販売数量は業務用・家庭用ともに前年同期を下回った。製油カテゴリ全体では、価格改定の浸透により前年同期比で増収となった。
糖質カテゴリは、外食や業務用の需要が回復してきたが、糖化製品の販売数量は前年同期を下回った。コーンスターチ、加工でん粉の販売数量についても、工業用途などの需要が減少し前年同期を下回った。しかし、価格改定がようやくコストの上昇に追い付き、糖質カテゴリ全体で前年同期比増収となった。
飼料事業の売上高は14,967百万円(前年同期比8.6%増)、営業損失は7百万円(前年同期は104百万円の損失)に改善した。2022年秋に感染が確認された鳥インフルエンザの感染拡大が配合飼料の販売に影響し、配合飼料及び鶏卵の販売数量は前年同期を下回った。一方、原料価格の高値圏での推移、円安の進行などによるコストの高止まりに伴い配合飼料の価格改定を進めたことに加え、鶏卵価格も受給逼迫から価格が高値で推移したことにより飼料事業全体で増収及び損失改善となった。さらに、グループ会社である昭和鶏卵(株)の預託農場への飼料販売、鶏卵生産及び販売と、一気通貫したレイヤー事業基盤の強化により生産性は向上し、収益の確保に寄与している。また、高付加価値製品の「人工乳」「オリゴ糖配合飼料」の販売も順調に推移している。しかし、前期に大幅に増加した(一社)全日本配合飼料価格畜産安定基金へのメーカー側の拠出金の負担も大きく影響し、黒字転換には至らなかった。
不動産業、保険代理業、自動車リース業、運輸・倉庫業などを行うその他の売上高は、1,166百万円(前年同期比3.6%減)、営業利益は302百万円(同1.4%減)となった。倉庫業については、貨物獲得競争が激化するなかで、商社や主要顧客との取り組みを強化したが、貨物取扱量は前年同期を下回った。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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