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サイオス Research Memo(5):クラウド関連事業の拡大に向け、開発・マーケティング強化を継続(1)


*15:25JST サイオス Research Memo(5):クラウド関連事業の拡大に向け、開発・マーケティング強化を継続(1) ■今後の見通し

2. 2023年12月期の重点施策
サイオス<3744>はオンプレミス向け製品・サービスの収益依存度を引き下げ、安定した収益が見込めるクラウド関連事業を拡大することで、収益基盤の改善を図る方針である。

(1) SaaS事業への投資継続
成長性の高いSaaS事業で複数のサービスを育成することで収益成長を目指す。具体的には、既に収益化している「Gluegentシリーズ」のほか、Med Tech領域の「INDIGO NOTE」、HR Tech領域の「Your Desk」「OurEngage」が挙げられる。

a) Gluegentシリーズ
「Gluegentシリーズ」については、さらなる成長に向けて「Gluegent Flow」「Gluegent Gate」の機能強化及び拡販施策を推進する。

このうち「Gluegent Gate」は、ゼロトラスト※1時代における最適なアクセス管理システムである。ゼロトラスト時代では高水準のセキュリティと利便性が要求されるが、「Gluegent Gate」であればいずれも実現可能だ。ゼロトラストを前提に多要素認証とアクセス制御を行い、複数の認証方式を自在に組み合わせることも可能であることから、安全性が飛躍的に高まる。また、ユーザーはシングルサインオン※2で複数のシステムにログインできるため、使い勝手が良いと好評だ。2011年のサービス提供開始以降、累計導入実績は25万ユーザーと好調に推移している。2023年12月期は、ゼロトラストにおけるクラウドネットワーク・脅威検知・端末管理ソリューションとの連携機能の開発を進める。また、ゼロトラストベンダーや、ゼロトラストモデルの情報セキュリティソリューションに注力している大手SIerとのアライアンスを強化することで、大企業への販売を強化する。

※1 社内外のネットワーク環境における従来の「境界」の概念を捨て去り、守るべき情報資産にアクセスするものはすべて信用せずにその安全性を検証することで情報資産への脅威を防ぐという、セキュリティの新しい考え方。
※2 1組のID・パスワードによる認証を1度行うだけで、複数のWebサービスやクラウドサービス等にログインできる仕組み。


一方、「Gluegent Flow」は2021年に電子契約サービスと連携し、クラウド上で稟議から契約締結までを完結できるワークフローシステムへと強化されたことで、ユーザー側の手間とリスクの軽減を実現した。初心者でも操作しやすいシンプルな画面、Google WorkspaceやMicrosoft365との連携、導入から運用フェーズまでのサポート体制といったユーザビリティの追求が評価され、顧客満足度の高いサービスとして複数のアワードを受賞している。2011年のサービス提供開始以降、導入実績は順調に推移している。2023年12月期は、ユーザーが抱える課題を解決できるよう、他社サービスとの連携強化や新機能の実装に取り組む。また、販売パートナーとの連携強化のほか、リード(見込み顧客)獲得件数や成約率といったKPIを設定し、PDCAサイクルを回すことで顧客獲得につなげる方針だ。なお、リード獲得施策としては、自社ホームページの拡充やオンラインセミナーの開催、Web広告などデジタルマーケティングを強化する。

「Gluegentシリーズ」は、製品開発及びマーケティング強化により順調に成長している。ARR推移を見ると、2022年12月は前年同月比12.7%増の650百万円、直近5年間の年平均成長率は15.7%に拡大した。

b) Med Tech
Med Tech領域では、都内で精神科病院を運営する医療法人社団成仁の監修・設計の下、精神科病院のDXを支援するクラウド型電子カルテサービス「INDIGO NOTE」を開発し、2022年に提供開始した。同製品は次世代医療情報交換規格「HL7(R)FHIR(R)(Fast Healthcare Interoperability Resource)」を国内で初めて採用し、厚生労働省標準規格に準拠して記述することで、データの二次利用性(医療機関や行政機関との情報共有化、臨床研究等への活用等)を確保した。精神科病院の運営に不可欠な機能を網羅していることに加え、マイクロサービスアーキテクチャー(機能ごとに細かくサービスを分割して開発・運用を行う手法)により各機能を独立したサービスとして稼働させることで、柔軟な機能アップデートを実現した。なお、フルクラウドのサブスクリプションモデルとなるため、初期導入コストの大幅な削減が実現し、これまでコストが理由で導入を進められなかった医療機関にも適用できるほか、時間や場所、端末の制限なく利用できる。

2023年12月期は、継続的に機能の改善・拡充を図るとともに、APIを活用して他システムとの連携を強化する。また、精神科学会や展示会へ参加することで認知度向上及びリードの獲得を図り、国内の精神科病院へのサービス展開を加速する。2022年12月期には、日本医療情報学会など4件の学会へ参加したほか、国際モダンホスピタルショウやGoogle主催のオンラインセミナー「Healthcare & Life Sciences Spotlight」に登壇した。

厚生労働省の「医療施設調査(2021年)」※によると、国内の精神科病院は2021年時点で1,053施設、一般病院の精神科は1,778施設、診療所も含めると7,000施設を超える。電子カルテの普及率は2020年時点で一般病院(精神科病院除く)で57.2%、診療所で49.9%、400床以上の大規模病院では90%を超える。一方、精神科病院は一般診療科と比較して入力情報が多岐にわたることもあり、普及が遅れているようだ。同社は、医師や看護師などの業務負担を軽減する利便性の高いシステムを開発することで課題を解決し、導入を推進していく方針だ。

※出所:厚生労働省「令和3(2021)年医療施設(動態)調査・病院報告の概況」及び「電子カルテシステム等の普及状況の推移」


なお、精神科病院向けの電子カルテサービスは10社程度が参入している。業界トップの(株)レスコは精神科病院向けのパッケージ品「Alpha」を221施設に、診療所向けクラウド型サービス「Warokuクリニックカルテ」を104施設にそれぞれ導入しているほか、精神科病院向けクラウド型サービス「Warokuホスピタルカルテ」を2022年2月にリリースした。「INDIGO NOTE」は後発となり、機能改修を進めている段階であるが、複数の医療機関から引き合いがあるようだ。フルクラウドのサブスクリプションモデルとなるため、業績寄与は一定以上の導入後となるが、シェア拡大の見込みは高く、今後の動向が注目される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

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