システムサポート Research Memo(3):ソリューション事業を主力に、ストック型ビジネスを展開(1)
2. 事業内容
同社グループは、システムサポート<4396>と連結子会社6社で構成されており、事業セグメントとしてはソリューション事業、アウトソーシング事業、プロダクト事業の3つのセグメントで開示している(2023年6月期以降事業セグメントを変更、詳細は後述)。直近5期間の事業セグメント別売上構成比の推移を見ると、ソリューション事業が80%台、アウトソーシング事業が10%台、プロダクト事業が4%前後とほぼ安定して推移している。この間の全売上高は約1.6倍に拡大しており、3つの事業セグメントがバランスよく成長してきたことになる。
また、セグメント利益率(売上総利益率)について見ると、主力のソリューション事業が20%台前半、アウトソーシング事業が30%台前半で安定して推移しており、プロダクト事業は50%台後半と相対的に高い利益率となっている。このなかで、注目されるのはソリューション事業の安定性だ。システム開発業界ではプロジェクトの延伸や不具合の発生に起因して、収益性が安定しない企業が多いなか、同社は一定水準を維持している。これは同社が高い技術力とプロジェクト管理能力を有していることの証左といえ、同社の強みの1つであると弊社では考えている。
(1) 事業セグメント別の事業内容
a) ソリューション事業
ソリューション事業では、独立系のIT会社として顧客企業のITシステムのコンサルティング・設計・開発・運用保守を中心に、各種クラウドサービスやERPパッケージの利用・導入に係る技術支援やデータベース等のインフラ構築などを行っている。顧客は業種・業務を問わず幅広く、かつ開発の一連の工程をワンストップで対応できることが強みとなっている。
2022年6月期の売上構成比では、ERP関連(主にSAPの構築、導入・利用支援等)が21.3%、データベース関連(Oracleデータベース設計、構築、保守・運用など)が14.2%、クラウド基盤関連(Microsoft Azure、AWS、Google Cloudなどのクラウドサービスの導入・利用支援)が12.9%、ServiceNow関連が11.2%、その他のITシステム関連(請負開発)が40.4%となっている。ここ数年はクラウドサービス市場の拡大を背景に、クラウド基盤関連とServiceNow関連の売上高が高成長を続けており、両分野の売上比率は2018年6月期の10.4%から2022年6月期は24.1%まで上昇している。
全事業の売上のうち最終顧客からの直接取引の比率は2021年6月期で67.4%となり、残りは大手SIベンダーなどを経由した二次請けとなる。直接受注案件については利益率が比較的高く、また顧客との関係もより深くなる傾向がある。一方、二次請けについては、金融機関向けシステムやERP構築など大規模プロジェクトが中心となる。収益性については直接受注案件より低くなるものの、これら大規模プロジェクトは長期間にわたって売上に貢献するため、エンジニアの稼働率を一定水準維持していくための安定ビジネスとして位置付けられる。なお同社のリピート率は74.4%と高水準となっている。
また、ソリューション事業の人員のうち8割以上はエンジニアで占められ、技術者集団となっていることが特徴と言える。クラウド関連やデータベース関連などの案件は、Microsoft Azure、AWS、ServiceNow、Oracleなどからの顧客紹介案件が多いが、紹介を受けるためにはそれぞれの領域で認定技術者を多く抱え、顧客満足度の高い開発実績を持つことが重要となるため、同社は認定技術者の育成に注力している。こうした取り組みの結果、Microsoft Azure、AWS、OracleなどのAwardでは数多くの表彰を受けている。
b) アウトソーシング事業
アウトソーシング事業では、子会社のイーネットソリューションズが運営している国内3ヶ所のデータセンター(東京、金沢)における運営サービスが売上の7割程度を占める。企業のプライベートクラウドのインフラ用あるいはBCP対策・データバックアップ管理用として利用されている。また、データセンターの顧客獲得のためのフック役となる付加価値サービスとして、2006年から地震情報と連動して社員の安否確認メッセージを自動で配信する緊急通報・安否確認サービス「Safetylink24」の提供を開始したほか、2010年には電子ワークフローシステム「ActionPassport」、2017年には日本アイ・ビー・エム(株)の「IBM Watson Explorer」(AIを活用した検索・分析プラットフォーム)を月額料金制で手軽に利用できるサービス「Magic Insight」の提供を開始している。データセンター運営事業は、預かるデータが増えると月額売上も積み上がる収益構造となっていることが特徴だが、設備能力増強時には減価償却費が増加し、一時的に利益面で影響が出る場合もある。なお、2022年6月時点で、データセンターの利用顧客数は約1,000社となっている。
そのほかの売上としては、ソリューション事業で開発に携わったシステムに関する顧客企業への教育やヘルプデスクの運用保守、データ分析・入力サービスなどが含まれている。
c) プロダクト事業
プロダクト事業では、同社グループによるプロダクト(ソフトウェア)の開発及び販売、サービス提供を行っており、顧客ニーズに応じたカスタマイズ開発にも対応している。販売については直販が多いが(「建て役者」についてはOEMが多い)、販売代理店も活用している。現在の主力製品は建築業向けの「建て役者」と卸・小売業界向けを中心としたモバイル受発注システム「MOS」で、それぞれ売上高の3割程度を占めている。不定期にカスタム開発案件を受注することもあるが、クラウド(SaaS型)サービスによる月額課金が売上の大半を占めており、契約件数の積み上げによって収益が増加するストック型ビジネスモデルとなる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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