オプティム Research Memo(1):ライセンス売上がけん引し、創業来22期連続の増収に向けて好調に推移(1)
オプティム<3694>は、現 代表取締役社長の菅谷俊二(すがやしゅんじ)氏が佐賀大学学生時代である2000年に友人らと起業したAI・IoT技術を得意とするベンチャー企業である。“ネットを空気に変える”がミッションであり、「OPTiM Cloud IoT OS」のデファクトスタンダード化を通じて、第4次産業革命の中心的役割を果たす企業を目指している。従業員数は585名(2021年4月)で、その約7割がエンジニアである。当初から世の中にないサービスを作り出すことを念頭に技術開発を行っており、関連の特許を数多く所有している。大手企業のパートナーは数多く、同社の技術力やポテンシャルは内外からも高く評価されている。2014年に東証マザーズ上場、2015年には東証1部に昇格した。
1. 事業内容
同社の事業は、「Optimal Biz」を主体とする事業(Corporate DX)と、「OPTiM Cloud IoT OS」を活用した事業(Industrial DX)に分けられる。「Corporate DX」は全業種・産業を対象とした社内業務改善・効率化のためのデジタル化を提案する。「Optimal Biz」等の提供を通じて累計18万社以上の顧客基盤を有しているが、この顧客基盤に対して、「OPTiM ID+(プラス)」や「OPTiM Contract」といった新たな提供価値を持つサービスを、販売パートナーを活用して提供する。主力サービスであるデバイス管理「Optimal Biz」は、企業向けのスマートフォン・タブレット・パソコン・IT機器などのセキュリティ対策や一括設定の分野で必要不可欠なサービスで、成長する国内MDM(Mobile Device Management)市場でシェア1位を11年継続している。また、ストック型のビジネスモデルであり、この安定収益が同社の開発投資を支えている。「Industrial DX」は、「OPTiM Cloud IoT OS」を基盤に、個別産業を対象に事業創造のためのデジタル化を推進する。AI・IoTの新プラットフォーム「OPTiM Cloud IoT OS」は2016年に「Optimal Biz」を進化させ完成し、これによりITを使って業界に変革を起こす「〇〇×IT(〇〇に業種が入る)」の取り組みが本格化した。最も成果が顕在化しているのは建設業界である。2017年には小松製作所<6301>(以下、コマツ)を含む4社で建設生産プロセスの新プラットフォーム「LANDLOG」がスタートし、パートナー企業及び顧客が増え続けている。農林水産業では、2016年に農業分野でドローンを活用した害虫駆除の実証実験に成功した。2018年には同社が主導する“スマート農業アライアンス”が全国規模で行われ、米や大豆を始めとする作物が本格的に収穫された。また、学習済みのパッケージサービス「OPTiM AI Camera」製品群は、手軽にAI・IoTを活用できる月額課金プロダクトであり、顧客の導入ハードルを下げることに成功したことにより、普及が進んでいる。
同社は創業来、知財戦略に基づく豊富な技術力及び事業創造力を背景に、常に革新的なサービスを提供し新しい市場を開拓してきた。国内市場ではシェア1位のサービスを擁し、豊富なライセンス収益を基盤としたビジネスモデルを確立している。また、近年ではAI・IoT・Big Dataのマーケットリーダーとして、各産業のトッププレイヤーと強固なビジネスディベロップメントを推進している。
2. 業績動向
2022年3月期第2四半期累計業績は、売上高が前年同期比15.4%増の3,521百万円、営業利益が同75.6%増の571百万円と、創業来22期連続の増収に向けて好調に推移している。売上高の伸長をけん引したのは、ライセンス売上を中心としたストック売上である。ストック売上のうち「Corporate DX」では、「Optimal Biz」が順調に推移したほか、クラウド認証基盤サービス「OPTiM ID+(プラス)」、AIを活用した契約書管理サービス「OPTiM Contract」などがリリースされ、ラインナップが充実した。一方「Industrial DX」では、「OPTiM Cloud IoT OS」を中心に順調に推移した。また、フロー売上では特に、数年前から取り組んでいる農業×IT分野の売上が好調に推移した。利益面では、ストック売上が順調に推移したことによる粗利益増や販管費の抑制により営業増益となったほか、前期から開始しているソフトウェア資産計上も増益に寄与している。なお、営業利益と経常利益・親会社株主に帰属する四半期純利益の乖離が大きくなっているが、これはいずれも一過性の特殊要因であり、これらの要因を除くと前年同期比で約60%増となる。2022年3月期第2四半期は売上・利益ともに計画どおりであり、好調に推移していると言える。
3. 成長戦略・トピックス
「Corporate DX」は、新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)により、オフィス業務のデジタル化によるリモートワーク推進、業務効率化、コスト削減といったニーズが急拡大している。同社は、「Optimal Biz」等の提供を通じて累計18万社以上の顧客基盤を有しているが、この顧客基盤に対して、IoT向け遠隔操作サービスや認証セキュリティサービス、契約書管理サービスといった新たな提供価値を持つサービスを、販売パートナーを活用して提供することを目指す。2021年には、クラウド認証基盤サービス「OPTiM ID+」及びAIを活用した契約書管理サービス「OPTiM Contract」の本格販売を開始し、利便性や高度なセキュリティにより好評を得ている。
「Industrial DX」は、これまでの「〇〇×IT」戦略の推進により、同社のAI・IoTプラットフォームへの接続デバイスや産業向けキラーサービスが飛躍的に増加していることから、デバイスカバレッジの強化や産業用キラーサービスの開発を推進することで、全世界450億台のデバイスへの接続と産業用キラーサービスの提供を目指す。トピックスとしては、2021年5月にスマホ3次元測量アプリ「OPTiM Geo Scan(ジオスキャン)」を本格リリースした。LiDARセンサー付きのスマホやタブレットで土構造物等の測量対象物をスキャンするだけで、高精度な3次元データが取得できるアプリケーションである。従来の光波測量と比較して、測量時間を最大60%削減、費用面では既存の3D測量に比べ80%以上のコスト削減が可能となるほか、人手不足や技術者不足解消にも役立つ。2021年9月には3次元点群データ処理ソフト「スキャン・エックス」とのサービス連携が可能となり、さらに利便性が向上した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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