ベルトラ Research Memo(3):コロナ禍の影響により減収となったものの、想定シナリオの範囲に沿った業績進捗
1. 2021年12月期第2四半期の業績概要
ベルトラ<7048>の2021年12月期第2四半期業績は、営業収益180百万円(前年同期比77.2%減)、営業損失612百万円(前年同期は500百万円の損失)、経常損失628百万円(同505百万円の損失)、親会社株主に帰属する四半期純損失649百万円(同715百万円の損失)となった。なお収益区分別では、OTA事業が118百万円(前年同期比84.4%減)、観光IT事業が61百万円(同84.7%増)となった。
旅行業界ではコロナ禍の影響を大きく受けている。多くの国で渡航制限や外出禁止等の措置が取られたことなどにより、2021年1月~6月の出国日本人者数は2019年の同期間と比べ97.9%減の19.9万人と大幅に減少した。また、訪日外客数も2019年の同期間と比へ99.4%減の9.6万人となっている(出典:日本政府観光局(JNTO))。現時点においても、世界各国で入出国禁止等の渡航制限や外出制限などの措置が取られ、旅行者は渡航自体ができない状況が続いており、国内外ともコロナ禍の影響を注視すべき状況に見舞われている。このような事業環境のなかで同社は、ハワイ(北米市場)及び日本国内の需要を捉え、営業収益を積み上げた結果、同社による想定シナリオの範囲に沿って当初想定通りの業績進捗となった。主にHawaiiActivitiesの予約数の回復により、第2四半期会計期間の営業収益は第1四半期比248.3%増となったほか、引き続きコストコントロールを徹底することで、営業費用は第1四半期とほぼ同様に抑えた。
財務面については、固定費を大幅に圧縮するなど徹底的なコスト削減を継続した結果、筋肉質な経営体制を維持できた。具体的には、役員報酬の減額や新規採用の凍結、事業閉鎖による一部人員削減等により、人件費を大幅に削減したほか、広告宣伝費の削減、オフィス移転によるコスト圧縮などを実施した。この結果、2021年12月期第2四半期の固定費は前年同期比52.7%減の792百万円となり、営業収益の減少幅に対して営業損失幅を最小限に抑えられた。なお、前年同期に繰延税金資産の取崩しにより法人税等調整額156百万円を計上した反動により、親会社株主に帰属する四半期純損失は縮小した。
2. 予約数の推移
2021年12月期の国内ツアー月別予約数は、コロナ禍やGO TOトラベル停止などの影響を受け、依然として平常時の事業環境と異なる推移となっている。GO TOトラベルが一時停止したことにより2021年1~2月の需要が減速した結果、第1四半期の予約件数は6,080件まで減少した。一方、コロナ禍の影響が続くなかでも、第2四半期の予約件数は8,334件と第1四半期を上回って推移し、3月は3,290件、5月は3,696件となるなど、回復基調となっている。予約数回復のために同社では、2020年4月以降、GO TOトラベル対象商品を含めた国内ツアー商品の拡充を積極的に実施しており、2020年5月の2,394商品から直近の2021年6月は3,980商品まで拡充している。なお、2021年末には2020年4月比で倍増させる計画だ。
また、コロナ禍でも米国のワクチン接種が進んでいることから、HawaiiActivitiesが好調に推移している。2021年12月期第2四半期の予約数は第1四半期の3倍超にまで増加し、コロナ禍前の2019年度と比較しても、ハワイ訪問者数の回復率を大幅に上回る推移となっている。これは、HawaiiActivitiesの強みである「ハワイに特化した現地ローカルエキスパートなど、グローバル企業と比べても専門性の高い知識を持ったスタッフが従事していること」「現地ならではのネットワークコミュニケーションを生かして、他社では参入が難しい商品を獲得できること」「プロモーションを積極的に打ち出していること」などといった訴求力の高さが寄与していると弊社では見ている。
オープンドアとの資本提携によりキャッシュ増加・負債減少。自己資本比率は64.4%となり、財務安全性を維持
3. 財務状況と経営指標
2021年12月期第2四半期末における流動資産は1,666百万円(前期末比568百万円増)となった。これは主に、オープンドアを引受先とした第三者割当増資などを背景に、現金及び預金が603百万円増加したことによる。固定資産は537百万円(同82百万円減)となった。これは主に、ソフトウェアが56百万円、投資その他の資産が38百万円減少したことによる。流動負債は773百万円(同363百万円減)となった。これは主に、短期借入金が599百万円減少した一方で、前受金が202百万円増加したことによる。固定負債は3百万円(同25百万円減)となった。これは主に、長期借入金が25百万円減少したことによる。純資産は1,427百万円(同874百万円増)となった。これは主に、第三者割当増資等による新株式発行により資本金及び資本剰余金がそれぞれ755百万円増加したことによる。この結果、自己資本比率は64.4%(前期は31.9%)と大幅に回復し、財務健全性を維持している。
営業活動によるキャッシュ・フローは199百万円の支出となった。主に、減価償却費98百万円、仕入債務の増加112百万円、前受金の増加196百万円などの収入要因と、売上債権の増加35百万円、税金等調整前四半期純損失644百万円などの支出要因による。投資活動によるキャッシュ・フローは15百万円の支出となった。これは、固定資産の取得による支出53百万円及び敷金の回収による収入38百万円による。財務活動によるキャッシュ・フローは798百万円の収入となった。これは、株式の発行による収入1,461百万円の増加要因と、短期借入金の減少による支出588百万円などの減少要因による。この結果、2021年12月期第2四半期の現金及び現金同等物の四半期末残高は1,521百万円(前期末比603百万円増)となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 石津大希)
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