アルプス技研 Research Memo(3):コロナ禍による稼働工数の減少や新卒稼働の遅れは限定的。足元では回復傾向
アルプス技研<4641>の2020年12月期上期の連結業績は、売上高が前年同期比5.4%増の17,483百万円、営業利益が同8.6%増の1,785百万円、経常利益が同26.4%増の2,139百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同18.3%増の1,426百万円と増収増益となった。また、期初予想に対しては、売上高が下回った一方、利益面では上回る結果となっている。
売上高は、コロナ禍においても堅調な需要に支えられ、アウトソーシングサービス事業及びグローバル事業がともに伸長した。特に、主力のアウトソーシングサービス事業は、稼働人数の増加や契約単価の上昇が増収に寄与した。ただ、売上高が計画を下回ったのは、コロナ禍の影響により稼働工数が減少したことに加え、新卒採用者の稼働に遅れが生じたことが理由である。また、グループ会社のアルプスビジネスサービス(ABS)及びパナR&Dについても、底堅い需要や成長分野の拡大、グループ連携(特に採用面)などにより、堅調に推移しているようだ。
損益面では、技術者数の増加に伴って原価率が上昇したものの、募集費や旅費交通費、教育研修費など販管費の抑制が奏功し、計画を上回る営業増益を実現している。営業利益率も10.2%(前年同期は9.9%)に改善した。
財務面では、自己株式の取得に伴う現金及び預金の減少等により、総資産は前期末比3.3%減の18,883百万円に若干縮小した。一方、自己資本についても利益剰余金を積み増したものの、自己株式の取得により同3.5%減の11,712百万円に減少したことから、自己資本比率は62.2%(前期末は62.4%)とほぼ横ばいで推移した。また、流動比率は187.7%と高い水準を維持しており、財務基盤の安全性は十分に確保されている。
各事業における概要は以下のとおりである。
(1) アウトソーシングサービス事業
アウトソーシングサービス事業は、売上高が前年同期比4.4%増の17,033百万円、セグメント利益が同7.0%増の1,726百万円と増収増益となった。重視する業績指標(単体)である技術社員数は3,977人(前年同期末比202人増)、稼働人数は3,579人(同19人増)、契約単価※1は4,098円(同67円増)とそれぞれ増加し、業績の伸びに寄与した。一方、1人当たりの平均稼働工数が161.9時間(同3.0時間減)と減少したのは、1)ここ数年の働き方改革による趨勢的な構造要因と、2)コロナ禍を含めた一過性の特殊要因(在宅勤務の増加や残業抑制、5月大型連休に伴う有休取得増加)の2つ要因が考えられるが、今回は2)の影響が大きかった。また、稼働人数の伸びが19人増にとどまったのも、コロナ禍の影響により新卒採用者(合計233人)の稼働決定に遅れが生じたことが理由である。上期平均稼働率で見ても93.3%(前年同期は94.1%)※2とやや低調に推移した。ただ、足元では徐々に回復傾向にあるようだ。業種別では、コロナ禍のもと、自動車関連のR&D投資は大手中心に維持されているものの、開発スピードには一部に鈍化傾向が見られる。一方、需要が拡大している半導体、医療系、ソフト開発など好調分野の構成比が高まっている。損益面でも、増収及び経費削減により増益となり、セグメント利益率も10.1%(前年同期は9.9%)に改善した。
※1 顧客との契約に基づく「1時間当たりの単価」。売上を構成する「実単価」と異なり、残業代は含まない。
※2 特に、第2四半期(2020年4月−6月)における平均稼働率は89.2%(前年同期は90.2%)となっており、新卒採用者の稼働決定の遅れを反映している。
(2) グロ−バル事業
グローバル事業は、売上高が前年同期比67.2%増の450百万円、セグメント利益が同102.4%増の57百万円と増収増益となった。工事案件が計画どおりに検収されたことが業績の伸びにつながった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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