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アクセル Research Memo(8):パチンコ主体のファブレス半導体企業から、革新に貢献する先端テクノロジー企業へ


■今後の見通し

2. 成長戦略と新規事業の動向
アクセル<6730>は今後の成長戦略として、主力の遊技機器市場については市場規模が低迷するなかでも、G-LSIのシェアアップやその他周辺LSIのラインナップ拡充により、機器1台当たりの平均搭載金額を増やしていくことで、安定成長を目指していく戦略となっている。

また、中長期的にさらなる飛躍を目指すため、遊技機器市場で培ってきた高付加価値製品を実現する総合的な開発力を新規事業領域として位置づけた機械学習(AI)、ミドルウェア、セキュリティ、ブロックチェーンの4分野に展開し、これら事業を育成していくことで新たな成長ステージを目指していく戦略となっている。高付加価値製品を実現する総合的な開発力とは、差別化の源泉となる要素技術の研究開発力(動画・音声圧縮、超解像、暗号、AI等)に加え、製品化を担うハードウェア開発力(LSI・FPGA・基板設計力)、ソフトウェア開発力(開発ツール・ライブラリ)を指す。

また、新規事業の基本方針としては、1)外部リソースの有効活用により、早期の事業確立を目指すこと、2)社内の限られたリソースをコア・テクノロジーの開発に集中すること、3)外部リソースやアライアンスを活用しながら事業化を加速していくこと、の3点を掲げており、実際、2019年には新規事業を担う子会社としてaxを設立、開発力強化のためbitcraftを吸収合併したほか、モーションポートレートを子会社化した。これら新規事業の売上目標については2020年3月期の約2億円から、2021年3月期に4億円強、2022年3月期に約8億円、2023年3月期に約16億円強の水準を目指している。

(1) 機械学習(AI)
機械学習領域では、独自開発のエッジ推論向けディープラーニング・フレームワーク「ailia」を中核に展開していく計画となっている。機械学習技術を用いたシステム構築には「学習」と「推論」のプロセスが必要となるが、「推論」のフレームワークを持つAI事業者は少なく、同社の優位点となる。「学習」のアルゴリズムを開発するAIベンチャーとパートナーシップの関係を構築できる立ち位置にあるためだ。2つ目の優位点としては、エッジ側(端末側)にAIを実装するため、AIの処理速度が速くなるだけでなく、通信データ量やコストも抑えることが可能な点が挙げられる。例えば、自動車の自動運転などは瞬時の判断が求められるため、エッジ側での処理が必須となる。

今後の事業展開としては、ソフト開発会社や製造・サービス業向け等をターゲットに、「ailia」の販売と開発支援サービスを行い、次のステップでパートナー企業と用途別ソリューションサービスをパッケージ化して提供、さらに普及させた「ailia」のロイヤリティを獲得し、安定かつ高収益なビジネスモデルの構築を目指している。

また、機械学習分野ではNEDOの公募事業の一環として研究開発を進めている「自動運転」に関するテーマも注目される。2017年から基礎研究を開始し、2018年には「高効率・高速処理を可能とするAIチップ・次世代コンピューティングの技術開発」事業に移行して、完全自動運転の実用化に向けた研究開発を資本業務提携先のティアフォーや複数の大学と共同で進めている。ティアフォーがアプリケーションソフト(完全自動運転・監視)、埼玉大学がミドルウェア、東京大学がコンパイラ・OSの開発をそれぞれ担当し、同社は半導体の設計・開発を担当している。今後のロードマップとしては、2021年頃に試作チップの製造を開始し、2022年以降に実証実験を行った後に製品化を目指している。当面は工場内で走行する物流車両などの用途を想定している。

(2) ミドルウェア製品(AXIP)
ミドルウェア製品は主にゲーミング市場向けに圧縮技術を中心としたミドルウェア製品を提供していく。遊技機器向けG-LSIの開発で蓄積してきたデータ圧縮・伸長技術を生かして、様々な機能の製品をラインナップしており、これらをパッケージとして販売することで付加価値を向上していく。特に、マルチプラットフォームに対応した超解像ミドルウェア「GRADIA」やクロスプラットフォーム対応ディープラーニング・フレームワーク「ailia」、カジノ・アーケードゲーム向けムービーミドルウェア「AXVC」などは同社独自のラインナップ製品として差別化要素になると見ている。

ビジネスモデルとしては企業、アプリごとに固定料金(ライセンス販売)、もしくは売上連動型のロイヤリティビジネスで展開していくことになる。2023年3月期の売上目標として同分野で約8億円を目指している。ゲーム開発用ミドルウェアの市場規模は年間で数十億円規模と見られ成長余地は大きい。ただし、当初の想定よりも成長率は若干緩やかなものになっていると思われ、今後一層の性能向上を進めていくか、新規用途・顧客の開拓かが課題となる。

(3) セキュリティ製品
セキュリティ製品としては、暗号技術を用いたソリューション「SHALO」をUSBドングルに搭載して販売していく予定にしている。情報セキュリティ対策のニーズは年々増大しており、同社製品は高い安定性と、使い勝手の良さに加えて、国内生産による信頼性の高さを強みに売上を拡大していきたい考えで、2021年3月期中の販売開始を予定している。

WindowsやLINUXなど標準プラットフォームのアプリケーション起動許可や、Google/Facebook等のログイン認証用、暗号通貨の管理用としての需要を見込んでいる。競合ベンダーがジェムアルト社(オランダ)や中国企業など外資系企業がメインで、国産ベンダーが少ないため関心を持つユーザーも少なくない。国内セキュリティ市場において同社のターゲットとなる市場規模は、暗号化製品で382億円、アイデンティティ・アクセス管理で922億円になるといい、成長ポテンシャルは大きい。

(4) ブロックチェーン
暗号化技術を用いた事業としてブロックチェーン領域での事業も展開していく。販売ターゲットは暗号通貨の採掘者(マイナー)及びブロックチェーン技術を活用したサービス運営事業者となる。暗号通貨のマイナーに対しては、マイニングボード「VMINE」※の販売を2020年4月より開始している。マイニング専用のASICを開発し、世界最高水準の消費電力当たり性能を達成しているのが特徴だ(2020年3月時点)。また、分離用ウォレットについても2021年3月期中の販売開始を目指し、開発を進めている。

※モナコイン(Lyra2rev2)を含むマルチハッシュ対応のマイニングハードウェア


一方、開発支援ソリューションではブロックチェーン技術を用いたサービスの受託開発支援を展開しており、徐々に売上が立ち始めている。将来的にはブロックチェーン技術の社会実装に必要なインフラ(製品・サービス)の提供を目指していく考えだ。当面はマイナー向けの販売が主力となりそうだ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)




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