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冨士ダイス Research Memo(6):持続的成長に向け、業務効率化、国内市場の深耕、海外売上拡大を目指す(1)


■中長期の成長戦略

1. 業務効率化
冨士ダイス<6167>はこれまできめ細かい顧客対応を実行するために、積極的に生産拠点づくりを行ってきたが、IT化や物流網の進化などを考慮し、国内は生産特性を考慮した製品、生産拠点の集約、再構築を進めている。既に熊本製造所に新工場を建設し複雑形状製品を中心に集約。また郡山製造所は単純丸物形状の製品を主力に、光学部品向け超精密加工品なども手掛ける工場に、岡山製造所は大型品中心に母材供給などに注力する。加えてIT化による情報一元化やロボット導入による自動化ラインの構築などで生産効率10%以上の改善施策を実行中である。

また生産工程では研削加工工程において、岡山製造所で砥石の仕様改善により加工効率が向上、2017年度比で特定製品における円筒研削の加工時間が最大47%も削減できた。開発した砥石研削システムは外販せず、今後、他の工場でも導入し、加工時間の短縮で実質的な生産能力増に結び付ける予定である。

2. 成長分野への注力
同社は新製品・新技術の開発をスピードアップさせるために産学連携や他社との連携・協働を進める方向にある。現在、成長分野への研究、開発に注力しているが、具体的には次世代自動車開発、航空・宇宙、医療・化粧品、環境・エネルギー、その他新素材開発などである。

会社側では成長分野の進捗状況を開示しているが、具体的にサンプル出荷を始めたものや、実際に販売を始めたものも多い。

(1) 成長分野の進捗状況
まず次世代自動車向けでは車載燃料電池用金型が既に販売開始となっている。さらにモーターコア用抜き金型では従来から放電加工性に優れたフジロイVシリーズを多くの顧客に提供しているが、電磁鋼板の薄板化に伴い、耐摩耗性と耐ピッチング性(表面疲れによって欠けなどを起こしにくい)を向上させた新材種を開発、2016年に特許取得し、2017年にサンプル出荷、2019年は従来使用されている材料と比較して長寿命化につながるかを客先にて連続使用試験中である。またターボ用機械部品も要求性能面やコスト優位性からサンプル出荷が始まり、客先での実用に向けての試験が行われている。

航空宇宙向けではタービン向けセラミックス加工工具が量産体制構築に向け進展中である。医療・化粧品向けは分析マイクロチップ用金型が2016年末からサンプル出荷を始め、金型の仕様決定の段階に進むとみられる。またドラッグデリバリーシステム用金型も医療分野だけでなく化粧品等にも適用拡大できるため、新分野として注目される。

環境・エネルギー関連では熱伝導率550W/m・kと業界最高の熱伝導率(銅タングステン合金の3倍水準)を誇る高熱伝導素材(FHT:ダイヤモンドと銅の複合材料)を開発、放熱対策が急務な先端半導体回路基板の放熱基板を2019年より実装耐久試験用に出荷している。

その他では、5Gを睨み、微小なレンズエレメントを複数配置したマイクロレンズアレイ用金型も顧客企業と共同で開発。光利用効率向上、集光、光拡散を制御でき、大容量通信部分での適用が期待される。従来から強みを持つ光学ガラス用超硬金型に加える形で、次世代自動運転、防犯監視カメラ等向け赤外線レンズ用金型が性能評価を実施中である。赤外線レンズ素材は通常のガラスと比較して熱膨張率が大きいため、従来のバインダーレス超硬合金製の金型と比較して熱膨張率が赤外線レンズ素材に近い耐酸化性硬質サーメットを開発し、複数の顧客で評価が進んでいる。早ければ2019年中頃にも販売実施する。自動運転などへの応用で潜在需要が大きい分野として注目される。また高圧発生装置用素材供給においては人工ダイヤモンドなどの合成に利用される遅れ破壊しない超硬合金を開発しており注目度が高い。

このほかにも加工工程の削減、加工時間短縮、型レスによって直接モノづくりが可能になる、3Dプリンターを利用した間接積層造形技術開発を進めており、複雑製品の同時造形や粉末歩留り100%による省資源、省エネ促進を目指している。

このように、次世代自動車、先端半導体、5G通信、先端医療向け等、潜在市場が大きい分野に多くの開発品の具体化が進んでおり、今後の同社収益を支える事業として大いに期待が持てる。

なお、同社においては売上高研究開発費比率が必ずしも高いとは言えないなかで、冶金技術を中心に新製品開発が進んできたが、今後は自動車分野などで共同開発案件も増えると見られ、研究開発センター施設などを含め、研究開発費比率を高める必要があると思われる。また自動車、半導体分野では同社が不得意とする量産に向けた研究開発成果をいかに売上増大に結び付けていけるかに課題がある。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)



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