馬渕磨理子が実践!トレードステーション利用術:製薬業界で進むM&A
『馬渕磨理子が実践!トレードステーション利用術』と題して、私が普段のトレードで使っている分析ツール「トレードステーション」について、その活用方法を、最新のニュース情報も交えながらお話しする連載です。
■武田薬品工業、シャイアー買収 世界トップ10入り
国内製薬企業は市場規模では欧州企業に劣ります。2017年の売上高でみると、世界の医療用医薬品市場は、米国が3,047億ドル(38.6%)、欧州が2,013億ドル(25.5%)、日本が664億ドル(8.4%)となっており、米国や欧州と比べて日本企業が売上高で劣っていることが分かります。
日本企業でも、売上高利益率が1割を超える高収益企業が多いですが、最近はこれまで支えてきた高血圧、脂質異常症、糖尿病といった生活習慣病分野の大型新薬の特許が相次ぎ切れており、高収益を維持できなくなっています。このため、各社はガンや精神疾患など、有効な治療薬が少ない領域への投資に注力しています。
また、買収や外部連携を通じて、新薬候補品(パイプライン)を拡充する動きが目立ってきています。1月8日には、武田薬品工業<4502>がアイルランドの製薬大手シャイアーを約6兆2,000億円で買収しました。これは日本企業による海外企業のM&Aとしては過去最大です。買収によって同社の売上高は約3兆円規模となり、世界トップ10社に入ることとなりました。
国内市場では、製薬費が安い後発医薬品(ジェネリック医薬品)の普及が進んでおり、厚生労働省では2020年秋までに、後発医薬品の浸透率を80%以上に高める方針です。2019年に予定されている消費増税に伴い、10月に薬剤改定が実施される可能性があります。後発医薬品は国策もあり、追い風と言えます。
■アメリカ政治から見る、ヘルスケア分野の状況
製薬企業やヘルスケアは、景気変動に影響を受けにくい「ディフェンシブ関連銘柄」です。2019年は市況が見通しにくい状況が続く可能性が高いため、ディフェンシブ株が好まれる傾向にあります。また、ヘルスケアにとってもう一つのプラス要因が、昨年の11月に行われたアメリカ中間選挙です。共和党が議会を制した場合はオバマケアの改廃を加速させる懸念があり、一方、民主党が議会を制した場合は国民皆保険制度の移行に向けて、薬価引き下げとなるリスクがありました。しかし、結果は上院が共和党、下院が民主党のねじれ状態になったことで、懸念されていたことが払拭されたため、ヘルスケア業界にとっては追い風の側面があります。
アメリカ株の値動きの影響を受けて日本株も動くため、アメリカで堅調が予想されるセクターには注目したいところです。
■製薬企業銘柄について
がん領域など新薬候補品が充実している中外製薬<4519>は、2001年にロシュと提携して以降、販売チャネル拡大に成功しています。輸出売上高が順調に推移し、18年12月期上期営業利益の進捗率は66%と堅調です。
塩野義製薬<4507>は、インフルエンザ治療薬「ゾフルーザ」の開発でロシュと提携しており、抗HIV薬のロイヤリティ収入にも成長が見込めそうです。
エーザイ<4523>は、抗がん剤の開発でメルクと提携しており、両社が持つ抗がん剤の併用治療法は相乗効果が示唆されています。また、アルツハイマー型認知症治療薬についてもバイオジェンとの共同開発を進めています。
また、改めてがん治療として注目されているのが、CAR-T細胞療法です。2017年8月にノバルティスの「キムリア」が米国初の遺伝子療法としてFDAに承認されました。国内では、タカラバイオ<4974>が同療法の研究開発を行い、大塚HD<4578>とCAR-T細胞治療薬について共同開発の契約を締結しています。
そのほか、底堅い値動きをしている大日本住友製薬<4506>、関節機能改善剤の科研製薬<4521>と生化学工業<4548>、ヒト成長ホルモン製剤のJCRファーマ<4552>などは、患者2,500万人の膝治療で、再生医療は商用段階に入るとの報道の影響を受けじわじわと上昇しています。
(その他の代表的な『製薬企業関連』の銘柄リストは、『マネックス証券トレードステーションのHP コラム・レポートのページ』からダウンロードできます。)
次回も、このような形で、話題のニュースから読み解いたテーマとトレードステーションのツールについてお話しします。
※「馬渕磨理子が実践!トレードステーション利用術」は、米国TradeStation Groupが開発したトレーディングツール「トレードステーション」の日本語版(マネックス証券が提供)を馬渕磨理子の見解で注目し、コメントしたものです。開発会社や日本語版提供会社との見解とは異なる場合があります。
(フィスコ企業リサーチレポーター 馬渕磨理子)
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