千葉銀行 Research Memo(1):2018年3月期業績は「役務取引等利益」の増強などにより増収増益
1. 事業概要
千葉銀行<8331>は千葉県を主要な地盤とする地域金融機関として、地元の中小企業及び個人向け取引を主体としている。国内店舗数は181店舗(内、千葉県内は160店舗)。預金残高は12兆170億円、貸出金残高は9兆8,160億円と千葉県内で最大規模を誇るとともに、全国の地方銀行の中でも2 位(単体総資産ベース)にランキングされる(2018年3月期末実績)。創業以来、地域経済の発展への貢献と一貫した堅実経営により着実な成長を遂げてきた。足元の業績についても、厳しい事業環境の中にあって、恵まれた地の利や積極的な営業展開により好調に推移している。また、「千葉・武蔵野アライアンス」や「TSUBASAアライアンス」など、新たな地銀連携の形による提携戦略にも注目が集まっている。
2. 2018年3月期の業績
2018年3月期の連結業績は、経常収益が前期比2.7%増の2,340億円、経常利益が同1.1%増の784億円、親会社株主に帰属する当期純利益が同2.0%増の537億円と増収増益となった。マイナス金利政策の影響などにより厳しい収益環境が続くなかで、足元業績は好調に推移していると評価できる。銀行単体でも、貸出金利回り低下により「貸出金利息」が減少したものの、法人ソリューション関連収益の拡大や与信関係費用の低位推移などにより計画を上回る増益となっている。また、計数面だけでなく、武蔵野銀行とのアライアンスを始め、他の地銀との提携(システム共同化やFinTech活用に向けた動き)においても一定の成果を残すことができた。
3. 中期経営計画について
2017年4月から第13次中期経営計画「ベストバンク2020 Final Stage −価値共創の3年」をスタートした。前中期経営計画で掲げた2020年の目標である「リテール・ベストバンク」グループへの総仕上げとして、「お客さまとの共通価値の創造」、「全ての職員が輝く働き方改革の実現」、「持続的成長に向けた経営態勢の強化」の3つの課題に取り組む。計数目標についても、厳しい収益環境が続くなかで、戦略的アライアンスの推進のほか、中小企業向け貸出や各種手数料収入の増強などにより、持続的な成長を目指している。また、株主還元についても、安定配当と機動的な自己株式取得により、当中計期間中の株主還元率50%程度をめどとしている。弊社では、中期経営計画初年度となる前期業績が順調な滑り出しとなったことに加え、1)地盤に恵まれていること、2)幅広いグループ機能など他行にはない強みをもっていること、3)新たな収益ドライバーが軌道に乗ってきたことなどを評価している。中期経営計画の達成に向けては、戦略的アライアンスにおけるシナジー創出、ポテンシャルの大きい戦略的営業地域(東京23 区)への展開、手数料収入の積み上げ等による収益力の強化がカギを握るものと捉えている。また、当中期経営計画期間中には、同行の将来像はもちろん、業界再編の方向性もある程度見えてくることが想定され、その動向にも注目している。
4. 2019年3月期の業績見通し
2019年3月期の連結業績予想について同行は、経常利益を前期比1.9%増の800億円、親会社株主に帰属する当期純利益を同1.3%増の545億円と増益を見込んでいる。銀行単体についても、役務取引等利益や債券関係損益の増加、コストコントロールの徹底などにより増益を確保する見通しである。弊社では、足元の収益状況等から判断して、同行の業績予想は十分に達成可能であるとみている。注目すべきは、中期経営計画最終年度となる2020年3月期に向けて、いかに収益基盤の強化を図っていくのかにあり、具体的な施策やその進捗をフォローしたい。
5. ESGの取り組み
持続可能な社会の実現とともに、同行グループ自身の持続的な成長のため、ESGの取り組みにも注力している。特に、コーポレート・ガバナンスについて、取締役会は社外取締役3名を含む9名の取締役で構成(社外取締役が占める割合は3分の1)され、社外取締役が過半数を占める指名・報酬・経営諮問委員会を設置。その一方で、グループチーフオフィサー制度を導入し、監督機能と業務執行機能の両面をバランスよく強化。また、ダイバーシティの推進(特に女性の登用)や地方創生への貢献にも積極的に取り組んでいる。
■Key Points
・2018年3月期は厳しい収益環境が続くなかで増収増益を実現
・中小企業向け貸出や法人ソリューション関連取引などが好調に推移
・2019年3月期も増益を見込む一方、中期経営計画達成に向けて収益基盤の強化にも取り組む
・戦略的アライアンスの進展のほか、ESGの取り組みなどにも注目
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)
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