BBT Research Memo(6):プラットフォームサービス事業、マネジメント教育サービス事業を両輪に収益拡大図る
2. 成長戦略
ビジネス・ブレークスルー<2464>は中期的な成長戦略として、プラットフォームサービス事業とマネジメント教育サービス事業を両輪として、収益を拡大していく方針を打ち出している。各事業の取組み施策は以下のとおり。
(1) プラットフォームサービス事業
同社では今後も年数校ペースでプリスクールを山手線内やその周辺で開設し、最終的には東京23区を中心に10~15拠点まで拡大し、IB認定取得校となるなど「アジアNo.1のインターナショナルスクール」を目指している。プリスクール等の開設に当たっては独自開設のほか、M&Aの活用など全方位で検討することによって、スムーズに展開していく方針となっている。弊社では同社の構想が予定どおり進めば、拠点展開による売上高だけで2018年3月期実績の19億円から約2倍となる40億円程度まで成長する可能性があると見ている。
プラットフォームサービス事業では、拠点展開に加えてIB認証取得によって蓄積したノウハウやコンテンツを生かしたプラットフォームサービスを展開していくことも計画している。IBの認証取得を目指す学校だけでなく、同様の探究型学習を志向する他の教育機関にもプラットフォームサービスとしてノウハウやコンテンツを提供し、国内での国際バカロレア認定校の普及促進やグローバル人材の育成に貢献していくことを目指している。
プラットフォームサービス事業では、大きく分けて2つのサービス提供を計画している。1つ目は、生徒向けの学習プログラムを遠隔型で可能なものについてはコンテンツ化して「AirCampus®」を通じて提供していくというもの。2017年4月よりサザンクロス大学(豪州)と同社及び子会社のアオバの3者の共同プロジェクトにより、ブレンド型教育(対面型教育と遠隔型教育のミックス)の開発を進めている。現在も「A-JIS」の高等部でブレンド型教育を試験的に実施しており、科目別に学習指導法などの課題点を抽出し、ブラッシュアップを進めている段階にある。今後2年程度かけて最適な形に仕上げ、早ければ2020年頃にも学習プログラムのオンライン提供サービスを開始したい考えだ。
また、2つ目のサービスとしてはアクティブ・ラーニング型学習を志向する学校に対して、教員の育成を支援するサービスを提供していくというもの。こうした教育は、教員についても指導内容等が従来と変わってくるため、一定程度の研修が必要となってくる。同社は、グループの各校・園で取り組んできた実績やノウハウを基盤として、ブレンド型教育を現場で実践できるような教育システムを確立した後に、教員向けのサービス提供を開始する考えだ。
また、政府では成長戦略の1つとして「国際的に活躍できるグローバルリーダーの育成」を旗印に掲げており、その一環として2020年度より教育制度改革がスタートする。制度改革のポイントとしては、従来の受け身の学習ではなく生徒自身が主体的・能動的に考え、答えを導き出すアクティブラーニングが積極的に取り入れられるほか、英語教育もより実用性の高い授業となる。こうした教育制度改革の方向性は現在、同社が進めているIB認証取得やバイリンガルプリスクールの拠点拡大、プラットフォームサービスの事業展開などに沿った内容であり、同社にとっては事業を拡大していく好機になると弊社では見ている。
(2) マネジメント教育サービス事業
a) 個人向け教育サービス
個人向けに関してはBBT大学で2017年4月より開始した「履修証明プログラム」など、リカレント教育※のニーズに対応したプログラムを開発・提供していくことで売上成長を目指していく。
※社会人になってからも、学校などの教育機関に戻って学習し、また社会へ出ていくということを生涯続ける教育システムを指す。
2018年6月に政府が発表した「未来投資戦略2018」では、今後のAI時代に対応した人材育成と最適活用を進めていくための具体的施策の1つとして、大学等でのリカレント教育の整備・促進を掲げている。国内ではリカレント教育の比率が2%台とOECD加盟国平均の20%台に対して大きく遅れていることから、国の補助金制度※なども活用してリカレント教育の普及に取り組んでいる。今回の「未来投資戦略2018」では、リカレント教育の受講者数を2015年の約49万人から2022年度までに100万人まで拡大していくことを目標として掲げており、リカレント教育に適している遠隔教育サービスを提供する同社にとっては追い風になると考えられる。
※2014年度より厚生労働省にて「専門実践教育訓練」給付制度が開始されており、指定プログラムの受講生に対して一部補助金が支給されている。また、2015年度より文部科学省にて「職業実践力育成プログラム」(BP)認定制度が開始され、同様に認定プログラムの受講生あるいは企業に対して一部補助金が支給されている。
リカレント教育に関しては企業内での需要も増加していくことが見込まれている。例えば、銀行等の金融機関ではRPAツール等の導入により発生する余剰人員を他の付加価値サービス業務にシフトしていくための教育研修需要が発生している。同社におけるリカレント教育向けのプログラムとしては、2018年1月に文部科学省の「職業実践力育成プログラム」で8プログラム、また同年4月には厚生労働省の「専門実践教育訓練指定講座」で5プログラムが認定を受けており、2019年3月期はこれらプログラムで受講者数拡大が期待される。
その他、2年連続で入学生徒数が減少したものの、BBT大学についても3年前と比較して入学生のトレンドに明らかな変化が出てきているようで、この変化を分析して今後の生徒数拡大に向けた施策に生かしていく方針となっている。トレンドの変化として、高校3年生では専願でBBT大学に出願する生徒が増えたことが挙げられる。理由としては、「起業するために必要な知識を時間の制約を受けずに習得したい」「学びたいカリキュラムが他の大学にはない」と言う声が多い。また、経営者でも「自社の事業をさらに拡大するために経営学を学び直したい」とのことで入学するケースが増えており、3年前と比較すると多様な生徒が明確な目的意識を持って入学しているという。こうした需要の変化を踏まえて、プログラムの開発に注力していくことになる。
b) 法人向け教育サービス
一方、法人向け教育サービスに関しては、人材採用難が続くなかで企業の人材育成に対する投資が拡大する傾向にあり、2017年度の国内市場規模は前年度比2%増の5,170億円と拡大基調が続いたと見られる。同社の事業領域であるeラーニング市場については700〜800億円程度と見られ、まだ全体の2割にも達していないが、ここ数年は通信インフラ環境が整備されてきたことや、場所と時間の制約がないeラーニングのメリットが認知されるようになり、導入企業も増加傾向となっている。
同社の売上成長率もここ1〜2年で加速しているが、これは主要顧客における1社当たり売上高が増加していること、並びに顧客の裾野が広がっていることが挙げられる。大型受注案件の寄与が大きかったと見られるが、今後も同様の規模での受注が続く可能性がある。また、上位20社の売上構成比率で見れば2015年3月期の50%から2018年3月期は41%まで低下している。21番以下の顧客での売上深耕が進んだことに加え、顧客数が増加したことが要因となっている。
現在、顧客数としては400~500社程度だが、今後は営業体制の強化、デジタルマーケティングの活用等によって顧客数の拡大を進めていくほか、中長期的には1社当たり売上高で10百万円超の規模となる顧客数を100~200社まで増やしていくことを目標としている。このため、今後は既存の10,000時間超にわたるコンテンツの中から、法人のニーズが強いコンテンツを抽出し、法人向けコンテンツとして再編集して提供していく計画となっている。遠隔型と集合型の両方のサービスを提供できる強みを生かすと同時に、提案力を強化していくことができれば、今後も2ケタ成長が続くものと予想される。
■株主還元策
ビジネス・ブレークスルー<2464>は株主還元策として、配当と株主優待を実施している。配当については各期の経営成績や企業体質の強化と今後の事業展開に向けた内部留保の充実等を総合的に勘案して、配当性向を意識しつつ継続的な配当を実施していくことを基本方針としている。ただ、今後は配当実績、配当性向、配当利回りなど総合的に検討して配当を決定していく意向を示している。2019年3月期の1株当たり配当金については、前期比横ばいの10.0円(配当性向50.1%)を予定している。
また、株主優待制度も導入しており、2017年9月より内容を拡充している。優待内容は、保有株数に応じて自社教育プログラムの受講料に対する優待割引、及び同社グループで運営しているオンライン英会話の無料レッスン利用、熱海の宿泊施設である「ATAMIせかいえ」の優待割引宿泊等で、3月末と9月末の年2回実施する。仮に、1,000株を1年間保有した場合、配当金で1万円、英会話の無料レッスンで14,400円相当、宿泊施設の割引額で44,000円相当となる。
■情報セキュリティ対策
同社は情報セキュリティ対策として、ハード面での対策ではサーバーをISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)に準拠したデータセンターにて運用管理しており、ネットワーク管理については365日24時間体制で有人監視し、不正な動きがあった場合は瞬時に外部アクセスを遮断できる体制を整えている。そのほか、社員のPCにはウイルス対策ソフトや監視ソフトを導入しているほか、HDDデータや通信データの暗号化等の対策も行っている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<TN>
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