早稲アカ Research Memo(5):2020年3月期の売上高目標242億円は1年前倒し、経常利益目標21億円射程圏
2. 中期経営計画
早稲田アカデミー<4718>は2017年6月に2020年3月期までの中期経営計画を発表している。基本戦略としては、10年後に難関中学・高校・大学受験の進学塾として、すべての指標でNo.1を実現していくための基盤づくりの期間としてこの3年間を位置付け、「既存事業の強化」「新規事業の創出・発展」「グループシナジーの強化」の3つの戦略を推進している。経営数値目標としては最終年度となる2020年3月期に売上高242億円、経常利益21億円を掲げていたが、M&Aで集学舎を子会社化できたこともあり、売上高については1年前倒しで達成できる勢いとなっている。また、経常利益に関しても今後の生徒数増加や新基幹システムの導入効果が顕在化してくることで、2020年3月期の21億円は達成可能な水準にあると弊社では見ている。基本戦略の概要と進捗状況については以下のとおりとなる。
(1) 既存事業の強化
既存事業の強化施策としては以下の5つの柱を掲げている。
a) 人材採用・育成強化
人材開発部を2017年4月に新設し、非常勤職員(アルバイト)の採用及び研修を同部門で一括して進めている。非常勤職員の採用総数を前年同期比で大幅に増やすことができ、2019年3月期の広告宣伝費減少の要因ともなっている。特に、卒塾生採用プロジェクトとして、アルバイト紹介制度等の取組みを強化したことで、卒塾生の採用数が大幅に増加したことが注目される。採用数全体に占める比率では2割弱の水準から3割強に上昇したことになる。卒塾生に関しては、「早稲田アカデミー」の指導方針について身を以て体験しているため、研修にかかる時間も短縮でき、結果的に労務費率の向上に寄与することになる。同社では正社員についても、卒塾生の採用増に取り組んでいく方針だ。
そのほか、人材採用ではニーズが高まっている英語教師の育成システムの構築や次代経営幹部の育成、人事報酬制度改革などにも取り組んでいる。
b) 指導ツール・指導システムの改善
2017年4月に従来の2本部体制(管理本部、運営本部)から4本部体制に変更、新たに教務本部(指導システム・カリキュラムの改善、教材・マニュアルの開発・整備)と教育事業本部(授業品質向上のための講師指導、成績向上のための環境づくり)を設置し、サービス品質向上に取り組んでいるほか、ICTを活用した授業・サービスの開発に取り組んでいる。
運営本部には人材開発部と営業戦略部が2018年3月期に新設された。営業戦略部については出校戦略に関わる市場調査や顧客からの問い合わせ等を担当している。また、教務本部には新たに国際部を新設している。国際部では、主に海外の大学を志望する塾生や帰国子女の塾生に対するサポート業務を行っており、顧客満足度の向上につなげている。
c) 合格実績の飛躍的伸長
難関御三家中での合格者実績でNo.1を目指しているほか、都立高・県立高校受験市場への本格参入(都立・県立高校志望者向けコースの新設・拡大)により、都立・県立難関高校でも圧倒的な合格実績を目指していくことを目標として掲げている。また、大学受験では東大現役合格者100名(2017年63名)を当面の目標とする。
また、都立・県立難関高校への取り組みについては、都立の日比谷高、西高、国立高の3校合計で193名とNo.1の合格者実績を出しており、今後も首都圏エリアで難関公立高校を志望する生徒を取り込むことで、中学部の一段の生徒数拡大を図っていく方針だ。公立高校を志望する学生は中学校も公立中学校に在籍しているケースが大半のため、こうした生徒層を小学生段階から囲い込むために、小5〜6年生を対象にKコースを開設しており、生徒数の獲得に注力している。2018年3月期は小学5年生で60%を超える増加を見せるなど、取り組みの成果が出ているものと考えられる。
d) 業務効率の改善・働き方改革の推進
2017年8月に稼働した新基幹システムを中心とした業務効率の向上により、働き方改革が進むほか、地域やブランド特性に合わせた営業日・営業時間の設定により、校舎運営の効率化を進めている。
e) コーポレートガバナンスの強化
2017年4月より組織を再編し、持続的な成長・発展を推進していくほか、監査等委員会設置会社への移行、内部統制システムの再構築を図っている。
(2) 新規事業の創出・発展
英語教育サービスは、2020年度からスタートする次期学習指導要領で小学校での英語教育の拡充が進むほか、大学入試制度でも英語において4技能(読む、聞く、書く、話す)をバランスよく評価していくシステムに変更されることが決まっている。特に、「聞く、話す」の技能が今まで以上に重視されるようになるため、小学生段階から英語のコミュニケーション能力の習得ニーズが高まっていくことが予想される。
こうした市場環境を受けて、同社では小学1年生から中学3年生までを対象とした英語教室「English ENGINE」を2017年1月に立ち上げた。現在、南大沢教室(東京都八王子市)1教室だけだが、カリキュラム内容や運営ノウハウなど、ある程度蓄積できたことから、2018年7月に2教室目となる月島教室(東京都中央区)を開設することを発表している。中央区はタワーマンションがここ数年で立ち並び、現在、最も学生人口が増加している地域として注目されているエリアで、早期に定員に達することが予想される。
生徒当たり単価は平均で約30万円/年のため業績への寄与は軽微だが、長期目標として英語塾部門全体で2028年度に売上高30億円を目標として掲げている。小1~3年生を対象とするElementaryコースでは2年間で英検3級取得を目指すカリキュラムになっており、小4~中学3年生を対象とするUpperコースでは2年間で英検準2級~2級取得を目指すカリキュラムとなっている。英語教育サービスのニーズは今後も伸びていくのは間違いないが、いかに英語講師の人材を確保し育成するシステムを構築できるかが、事業拡大のカギを握ることになる。
(3) グループシナジーの強化
子会社の野田学園や水戸アカデミー、また2018年からグループ入りした集学舎について、同社が持つ教務ノウハウや指導ツール等を共有していくことでシナジーを強化していく方針となっている。野田学園については、高校既卒生中心のビジネスモデルから現役生の医学部合格者を伸長させるビジネスモデルに転換していく過渡期と位置付けている。一方、水戸アカデミーや集学舎については同社との教材・カリキュラムの共有や夏期合宿連携等によりシナジーを創出し、更なる合格実績伸長とともに塾生数を拡大し、業績向上を目指していく方針だ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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