グローブライド Research Memo(3):25年ぶりに過去最高の売上高を更新。利益面は2ケタの営業増益を確保
1. 2018年3月期決算
2018年5月11日に発表したグローブライド<7990>の2018年3月期の連結決算は、売上高が85,785百万円(前期比8.4%増)、営業利益が3,768百万円(同10.3%増)、経常利益が3,598百万円(同47.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は2,497百万円(同14.3%増)と2ケタの営業増益を確保。売上高は1993年3月期以来、25年ぶりに過去最高を更新した。
日本国内は、ひと頃に比べて景気が好転するなど、経済指標で上向きが感じられながらも、消費マインドは指標ほどは盛り上がっているとは言えない。そうしたなかにおいて、生活必需品ではない同社の製品を取り巻く環境は、良好とは言い切れないが、フィッシング、ゴルフ、ラケットスポーツを楽しむ人の琴線に触れるような革新的な製品を投入することで、同社は対応している。
フィッシングについては、国内のフィッシング市場は、マーケット全体の動きが、前年推定で2%程度の伸びとなるなど比較的好調だった。そうした環境下で、同社の国内販売は前期比5%を超す伸びを確保。下半期は天候不順の影響がありながらも、同社の革新的な製品に対する消費者のニーズは強く、市場平均を大きく上回る結果となった。
ゴルフは、「ONOFF」など旗艦ブランドの引き合いが好調をキープした。国内市場は各社とも新製品を続々投入したことで活況となり、4%増となっている。同社は2017年春には片山晋吾プロ監修の上級者向けオノフ黒シリーズ、秋にはオノフレディース、2018年はやさしさを追求するオノフ赤シリーズを投入し、販売をけん引した。ブランドの訴求に加え、プロの活躍にも結びついているしっかりしたものづくりが評価されている。半面、ラケットスポーツは、テニス市場が厳しい環境におかれている影響を受け、前期比で3.8%の売上減少となった。
海外では、フィッシングが順調に拡大。欧米のアウトドア市場は好調とは言えないものの、数年前から取り組んできた海外の強化策の成果がここにきて現れている。
地域別に見ると、米州は前期比で5~10%落ち込むほどマーケットが冷え込んでいるものの、そうしたなかで米国は現地通貨ベースで19%の伸びを記録。欧州もフィッシング市場は低迷しながらも8%増を確保した。アジア・太平洋も足下は芳しくないものの、そうしたなかで19%と高い売上増を記録している。なかでも韓国、中国に関しては収益に大きく貢献した。
ゴルフについては、本場アメリカでも有力スポーツメーカーがゴルフ用品から撤退するなど世界的に不況とも言える厳しい状況。一時のタイガー・ウッズのような傑出したプレーヤーが存在しないことが背景にある。だが、主力の韓国向けが好調だった。
利益面では、為替変動の影響で原料費などコストが増加。売上原価は前年の50,307百万円から54,957百万円にアップし、原価率は63.6%から64.1%に上昇した。為替影響のほかに、海外の販売増に伴うボリュームゾーンの価格帯製品が増えた点が原価率上昇の要因として挙げられる。これまで海外では、高級品が主体だったものの、シェアを高めるために、中、普及価格帯の製品の投入も進めた。
実際に、市場が冷え込むなかでも、売上を伸ばす結果が出ているなど、戦略は当たっている格好。しかし、高級品に比べて廉価品は当然のことながら利益率が低く、原価率の悪化につながった。また、海外の拡販体制強化費やブランド訴求の投資費など先行投資を積極的に行なったが、販管費・一般管理費を対売上高比率で32.1%から31.5%に削減したことで、営業利益率は前期の4.3%から4.4%にアップした。
営業外収支は、為替相場が落ち着いたことで、前期に258百万円計上した為替差損がなくなったほか、特許訴訟の和解金271百万円を計上したことなどから、経常利益は前期比で47.1%の大幅増益となった。
売上高は1993年3月期以来、実に25年ぶりに創業来最高を記録するなど、これまで長い間雌伏の時期にあったものの、ここから新たな飛躍期に入ったと言える状況となっている。
2. 2019年3月期見通し
2019年3月期の見通しについては、売上高が90,000百万円(前期比4.9%増)、営業利益が4,000百万円(同6.1%増)、経常利益が3,700百万円(同2.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益が2,600百万円(同4.1%増)と連続増収増益を見込んでいる。
前期に続いて、国内では主力のフィッシング事業は革新的な商品を投入し、マーケット平均の伸びを上回る成長を目指していく。小売店向けには、イベントや販売促進活動など市場活性化策を積極的に行い、顧客の取り込みに力を注ぐ考えだ。
さらに、拡大するEC市場への対応がポイントになる。サプライ製品などは実物を取り扱っている実店舗が引き続き主流になるとみられるものの、リール、釣竿など高額品がネット販売にシフトしつつあり、EC市場への対応は喫緊の課題。子会社で小売事業を営む(株)ワールドスポーツではオムニチャネル構築への取り組みが行なわれている。
ゴルフについては、自社ブランドを大切にしながら、“ファン”である顧客に上質な製品・サービスを提供することで、着実な売上高増加を目指す。具体的には、「ONOFF」や「FOURTEEN」などのファンクラブで会員特典の試打会などを通じ、ブランド価値を高めると同時に製品をアピールする。ただ、2019年3月期は、新製品の端境期となるため、売上は若干、弱含むと想定している。それでも、海外向けの主力である韓国は、引き続き好調となることが予想され、国内の鈍化を海外でどれだけカバーするかがポイントになりそうだ。
ラケットスポーツ市場に関しては厳しいとみている。足許では、通常5月になると、新入生を中心に新たに部活、クラブに入る中高生、大学生が買い求めて活況となるが、今年は出足が遅れているようだ。オンコート需要に一服感がある中、「PRINCE」はオンコートからオフコートまでラケットスポーツライフを提案するブランドとして革新的なラケットや洗練されたアパレルなどの提案で販売を強化していく。
利益面では、売上拡大に向けた先行投資費用の増加が続くが、増収効果とコストダウンなどで吸収し、営業利益増を見込んでいる。
財務面では、短期借入金が前期比で135百万円、長期借入金が603百万円それぞれ増加したものの、利益の積み上げによって利益剰余金が1,923百万円増加したことなどで、2018年3月期の自己資本比率は30.8%と前期末の27.7%から改善した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水野 文也)
<NB>
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