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三城HD Research Memo(5):4つの新コンセプト店舗を拡充し、業績の回復を図る


■中長期の成長戦略

三城ホールディングス<7455>は持株会社(グループ)としては正式には中期経営計画等を発表していないが、内部的には、中長期の計画値を策定中であり、その内容は、今後数年間で新しいコンセプトの店舗や都心の大型店を増やし、今まで獲得できていなかった若者を中心とした新規顧客を取り込み業績の回復を図るものとなりそうだ。

1. 定量的な目標
(1) 過去の総括
既述のように国内のメガネ市場における現在の同社のシェアは8.2%ほどで第3位となっているが、2000年代初頭には2ケタ以上のシェアを維持して断然のトップであった。しかしその後シェアは徐々に低下し、それに伴い業績も2002年3月期の売上高83,976百万円、営業利益15,533百万円をピークに低下が続いている。特に近年ではZoffやJIN、眼鏡市場などの低価格店や単一価格店などの競合に押され、店舗の縮小が続いている。

同社はこのように業績が大きく低迷した要因として以下※のような点を挙げている。

※以下はすべて主要子会社である三城に関するもので海外子会社等は含まれない。


a) 優良既存顧客への過度の依存
既述のように歴史のある同社のブランド力は高く、多くの優良顧客に認知されていた。これらの顧客の多くは固定客とも言えるリピータであり同社にとっては重要顧客であったが、一方でこれらの既存顧客への依存度が高かったため、新規顧客の獲得意識がややおろそかであり消極的であったと言える。そのため顧客層の世代交代が進むに連れて客離れが起きたと考えられる。

b) 顧客ニーズの変化への対応遅れ
一般の小売業と同様、メガネ市場においても顧客のニーズは変化していたが、これに十分に対応しきれていなかった。つまり、顧客が求める商品や価格、サービスが十分提供できていなかったのだ。結果として客離れ、売上高の減少を招いた。

c) 変革への躊躇
上記のような市場や顧客ニーズの変化を同社もかなり以前から察知はしていたが、実際には過去の成功事例が障害となり既存商品や店舗形態、販売方法などを変えることができなかった。頭ではわかっていても、なかなか変革に踏み切れなかったのである。

しかし、経営陣もさすがにこのままの状態では凋落の一途をたどる可能性があると考え、前々期(2017年3月期)からは以下のような大胆な変革を進めることを決意し実行に移している。

(2) 新社長の就任と新しい店舗コンセプト
同社は2016年2月に主要子会社である三城の代表取締役社長交代及び持株会社役員の異動を発表し、三城の新社長に澤田将広(さわだまさひろ)氏が就任した。澤田氏は、赤字に苦しんでいた豪州の子会社を立て直し、国内では渋谷店などを赤字から短期間に黒字化させた実績を持っており、澤田社長が今後の方向性として取り上げたのが、1)若年層へのアピール、2)大都市好立地店舗の出店、3)郊外店の再生である。

澤田社長は、国内眼鏡事業の再生に当たっては「店舗のあり方を革新的に変える!」をメインテーマとして掲げ、a)音楽・ファッション、b)パリのベルエポック、c)サロンの3つを重要な要素と位置付けている。具体的には、これら3つをテーマにした店舗業態を積極的に改装・新店に投入していくというもの。「音楽・ファッション」は若年層顧客の獲得を、「ベルエポック」は新しい同社のブランディングを、「サロン」は郊外店の再生を各々担うことになる。さらに第4の新業態として、2017年3月期から「Circus」(サーカス)を投入している。さらに2018年3月期には、「サロン」の一部を居心地の良い空間をコンセプトとした「ロッジ風店舗」に改装した。

a) 音楽とファッション:エンターテイメント型店舗(2018年3月期末現在22店)
コンセプトは「Music」であり、代表的な店舗である渋谷店(2012年6月改装)は若年層に訴求する格好の良さを追求、1950年代の仏パリにおけるアメリカを切り口に店装の色調も赤と黒をベースに、ヴィンテージギターやドラムセットを店内や外装にディスプレイするなど、一見メガネ店には見えない点が特徴。若年層のみならず既存のシニア層の顧客も引き留めることに成功し、業績は改装前は同社内店舗で下から1ケタ順位であったが、改装後は同社トップ店舗にまで一気に上り詰めた。同系統の店舗として、心斎橋本店、原宿店、博多マルイ店などがある。

このようなエンターテイメント型店舗の最大の狙いは「入店客を増やす」ことである。同社の場合、過去のデータを見る限り、入店した顧客が商品を買う「買上げ率」は比較的高いものの、店前を通る客が入店する「入店率」が低かった。このようなエンターテイメント系店舗では入店率が高まっており、売上増につながっている。

b) パリのベルエポック型店舗(同64店)
コンセプトは古き良き時代のパリ「Belle Epoque」。ベルエポックは、1800年代後半から1900年代前半の仏パリの古き良き時代、ムーラン・ルージュがにぎわい、バレエ・リュスがスキャンダルを起こしつつある時代をイメージした店舗。吉祥寺店(2014年8月)が改装第1号。その後も出店や改装が続き2018年3月期末には同様店舗が64店舗まで拡大した。

吉祥寺店では、改装後1週間で入店客数が倍増するなど立ち上がりも鋭く、現在も若年層の拡大がみられるようだ。また、店舗は吉祥寺店のように黄色系の店舗だけではなく、パリのパサージュ通りをイメージした店舗など色々なバリエーションが存在する。一貫しているのは、誘客効果をもたらしかつBelle Epoqueの世界観であり、一見してパリミキと認知してもらえるため、この形態の店舗により新たなブランディングの構築を目指している。今後の出店の主流となる店舗だ。

c) サロン(同24店)
コンセプトは「コミュニティサロン」。地域の人々が毎日来たくなる店、安心してくつろげる空間づくりをテーマとして信頼・絆づくりを大切にし、年配の方やその家族が困った時に相談できる場所となるような店舗を目指しており、運転視力の測定や聴力測定などの機器の充実と、技術力向上に力を入れる。ハイレベル商品とサービスを発信する都市型ビルイン店舗と主に郊外お城型の安心できる店舗の2タイプがあったが、2018年3月期からは新しいコンセプト「居心地の良い空間」を取り入れたロッジ風店舗をオープンしている。ただし現在では、売上高が停滞する店も出始めているため、今後はこのサロンの統廃合も重要な店舗政策になってくる。

d) 第4の新業態:「Circus」(同5店)
さらに同社は、第4の新業態として「Circus」をコンセプトとした店舗を開発した。これは風船やピエロのような可愛らしいディスプレイや商品、仮装したピエロスタッフが賑やかで楽しい空間を演出する店で、ワクワク・ドキドキの感動を顧客と一緒に創り出すことにより、比較的若い顧客層の入店を狙っている。2018年3月までに既に5店(下北沢、仙台クリスロード、池袋Echika、博多、渋谷スペイン坂)が開店しているが、これらの店の動向を見ながら今後の店舗展開を図る。

以上のような新コンセプト店舗は当然だがすべての店舗で当てはまるわけではなく、立地によるのは事実だ。幸い音楽・ファッション型店舗は同社が弱かった大都市圏での立地に適していると考えられ、同社では音楽・ファッション店舗を今後3年間で30店舗程度、ベルエポック店舗は約230店舗を目標にしている。さらに郊外店・地域密着型店舗はサロン型店舗として業績改善を図る計画だ。音楽・ファッション型店舗はオーストラリアでもテスト展開しており、その結果によっては海外でも新コンセプト店舗の出店・改装を加速する可能性もある。

(3) 店舗の統廃合計画
上記のような新コンセプト店舗を含めて、同社では今後5年間で主力である三城の店舗数(2018年3月末744店)を700店まで減らす計画だ。今までの概念を打ち破った新コンセプトの店舗を含めて、店舗の統廃合を計画どおり進めていくことにより、同社が真に「変革」できるか、今後の動向はさらに注目される。

2. 中期ビジョン(2024年に向けて)
また同社は、「中期ビジョン:2024年に向けて」として、以下のような施策を発表している。

(1) 日本市場:メガネ
a) 団塊ファミリーに注目
団塊の世代は白内障予備軍、団塊ジュニアは老眼予備軍、団塊グランドジュニアは近視予備軍なので、これらファミリー層に対して複数個の提案やファッション商品の提案を行う
b) 脱レギュラーチェーン
地域の顧客に合わせたサービス、店づくりを進める
c) 店舗をエンターテイメント、複合サービスの大型店に集約する
d) 真のMade in Japanを求めやすい価格で提供する
e) ネットとリアルの融合による新しいサービスを提供する
f) メディカルとの連携、アイケアを強化する
g) エリアの「営業責任者」を「経営者」(GM)として育てる

(2) 日本市場:新規
a) メガネ、補聴器以外の事業を関係会社に集約する
b) 「物販」からほかが真似できない「サービス」事業へ展開する
c) 収益構造が確立してから持株会社(三城ホールディングス)へ移管する

(3) 海外:メガネ
a) 市場の優先順位を明確にする
b) 不採算事業の撤退を含めた抜本的な見直しを行う
c) エンターテイメントの活用
d) パリミキサービスのブランド化を進める

(4) 海外:新規
a) 医療ビジネスとの協業を進める
b) アセットマネジメント事業の可能性を探る

(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)



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