為替相場の流動性が半分以下になった2021年(染谷エツ子)【FISCOソーシャルレポーター】
●オシレーター系のテクニカルインジケーターがサインを出さないのに動く相場
2021年の3月以降、相場の動きが為替の通貨ペアで全体的に著しく悪くなりました。その動きはNYダウにも著しく表れており、毎年10月以降は日経225や米国株価指数は軒並み上昇することが多かったのですが、今年はレンジ相場で、狭い幅を行き来する動きでした。
特に首を傾げることが多かったのは、相場の動きを予想するのに使用しているテクニカルインジケーターは、勢いが出たと判断していないのに、相場にトレンドが発生していることが増えたことでした。
私は自作のテクニカルインジケーターで相場に勢いが出た時をピンポイントで判断し、トレードする手法を14年ほど使用しています。オシレーター系のテクニカルインジケーターは相場の勢いが出た時を判断しやすく、良く動いていた相場では、東京時間OPEN前に相場に勢いが出てトレード出来、東京時間に勢いが出てトレード出来、欧州時間、NY時間と、1日にトレードしやすい勢いのある動きで4回はトレードして利益が取れるような状態でした。リスク回避の動きの時には、非常に利益の幅が大きく、2020年にコロナウィルスが流行し始めた時にも、リスク回避の動きで利益が大きく取れる事が多くありました。ですが今年は、そういったことが無い、非常に動きの静かな相場でした。
相場はある程度トレンドが発生しているのに、頼りにしているテクニカルインジケーターがサインを示してくれない日が続くことは、私にとって非常にストレスを感じる事になり、正直辛いなと思うことが多かった1年でした。
●2021年とそれ以前の各主要通貨の変動幅
テクニカルインジケーターでは、各通貨ペアの値動きの変動幅で勢いが出たかを計算しています。その変動幅が狭いとサインが出ませんので、主要通貨ペアの変動幅を調べると、2021年は非常に変動幅が狭いことが分かりました。2019年1月から2021年12月27日までの
変動幅を見てみますと、以下のように数字に表れています。
ドル円
2019年の高値は112.389円で安値は104.436円です。変動幅は7.953円となります。
2020年の高値は112.218円で安値101.174円です。変動幅は11.04円となります。
2021年の高値115.512円で安値は102.581円です。変動幅12.93円となります。
ポンド円
2019年の高値は148.858円で安値は126.532円です。変動幅は22.32円となります。
2020年の高値は144.946円で安値124.021円です。変動幅は20.92円となります。
2021年の高値158.204円で安値は148.447円です。変動幅9.75円となります。
ユーロ円
2019年の高値は127.489円では安値は115.851円です。変動幅は11.63円となります。
2020年の高値は127.062円で安値は114.415円です。変動幅は12.64円となります。
2021年の高値は134.111円で安値は125.076円です。変動幅9.03円となります。
豪ドル円
2019年の高値は80.703円で安値は69.942円です。変動幅は10.761円となります。
2020年の79.776円で安値は59.875円です。変動幅は19.90円となります。
2021年の高値は84.875円で安値は77.880円です。変動幅6.99円となります。
NZドル円
2019年の高値は76.776円で安値は66.292円です。変動幅は10.48円となります。
2020年の高値は74.613円で安値は59.469円です。変動幅は15.14円となります。
2021年の高値は82.492円で安値は73.636円です。変動幅8.856円となります。
ドル円は変動幅に動きがありましたが、それ以外のクロス円は、非常に変動幅が狭くなっています。ドル円以外のクロス円は、変動幅が半分以下になったものが殆どでした。豪ドル円は3分の1以下となっています。
●なぜ価格変動が減ってしまったのか
2021年6月3日にバイデン米大統領は、中国企業59社に対する証券投資の禁止を命じる大統領令を発令し、同年8月2日以降、指摘された中国企業に対して、米国の個人や企業は新規投資ができなくなりました。国家安全保障上の理由から、米国の投資マネーが中国の軍事開発や人権侵害に使われるのを阻止する目的としての大統領令発令ですが、中国当局も海外市場に上場している中国企業への監視を強化すると発表しました。国境を越えたデータの流れや安全性に関する規制を向上するほか、証券市場における違法行為を取り締まり、不正な証券発行や市場操作、インサイダー取引を処罰するという内容でした。
中国当局が中国企業の米国での資金調達を規制する動きを見せ、米国でも中国企業への投資を規制する動きが同時に強まり、米中の分断が貿易分野から資金へと比重を移してしまったことにより、市場に出回る膨大なチャイナマネーと基軸通貨の米ドルとの通貨の流れが停滞し、結果として、市場全体の動きが停滞してしまいました。このことが、価格の変動を減らす結果となったように思います。それほど、チャイナマネーは膨大だったわけです。
また、コロナウイルスの流行によるやロックダウンや海外渡航の制限は、外貨獲得の必要性を著しく下げてしまいました。このことも、為替相場が動かない要因となっています。
今の米中関係を見ていると、この状態が数か月で改善されると予想できる材料がありませんので、この状況をしっかりと把握し、素早く対策を練る必要があります。
●価格変動幅が減った相場の動きにテクニカルインジケーターを対応させる必要性
先に述べました主要通貨の変動幅を見ても、通貨の値動きは全体的に普段の半分以下になってしまいました。これを、以前と同じようにサインを出すようにするためには、テクニカルインジケーターの相場の勢いを計算する数値を、今までの倍にする必要があると考えました。この対応をして相場を観察したところ、今までテクニカルインジケーターが反応しなかった動きでも、しっかりとサインが出てくれるようになりました。
投資をする上で何かしらのテクニカルインジケーターを使用している方は、是非参考にされて、今の相場の動きにテクニカルインジケーターをカスタマイズされてください。トレードの取組がしやすくなるのではないでしょうか。
●トルコリラの異常な値動き
2021年11月16日時点で、11月18日のトルコ中銀金融政策決定会合では15%への利下げが予想されていましたので、トルコリラは売られ始めていました。18日の政策金利発表で1パーセントの追加利下げを発表して、リラ売りが止まらなくなり、ドルトルコリラでは、2021年11月の最安値の9.47209ドルから18.25796ドルまでの8万7千8百5十8ピプスという、スイスフランショックの4千ピプスよりもはるかに大きな値動きとなりました。2021年12月1日には、トルコ中銀は声明で「不健全な為替相場が形成されているため(外貨の)売却によって市場で直接介入した」と述べました。ドルトルコリラを1万通貨保有していた場合、1ピプス100円ですので、8万ピプス利益が取れた場合は、800万円の利益と考えると夢のようですね。ですが、11月18日の時点でスプレッドは非常に大きく開いており、普通のトレーダーは決して手の出せる状態ではありませんでした。
このような大き過ぎる動きに便乗しようとするのは、ギャンブルに手を出すようなものですので、それよりは、日々の動きで勢いがある時にだけトレードに取り組んだ方が、リスクが少なくて、堅実な取り組みになると思います。実際のところ、トルコリラの取引を停止している業者の多いですので、やはり主要通貨ペアでのトレードを意識されてください。
●2021年を振り返って
2021年は、緊急事態宣言からの行動制限などで、前半は窮屈さや不安を感じる事が多かったように思います。ですが、東京オリンピックが開催され、ブルーインパルスのパフォーマンスを見て、空を見上げることを思い出すことが出来たように思います。オリンピックのスケートボードの競技で堀米優斗選手の滑りの時に見えた青い空を見て、「ああ、日本の空はこんなにも青くて美しいのだ。私たちは、空を見上げて未来を夢見てもいいのだ。外に出てもいいのだ。」と思いながら、なぜか涙が出てきたことがとても印象に残っています。オリンピック以降、考え方がポジティブになったように思います。
「夢を見ることが出来る。それが許される。」このことは今までは当たり前のことでした。当たり前のことが、とても幸せな事なのだと、実はとても有難いことなのだと思えたことは、今後の人生にとても大きな良い影響を与えてくれたと感じています。
私に関わってくださった皆様が、来年は沢山の夢を叶えることが出来、笑顔でいられて、素晴らしい年でありますことを心からお祈りいたします。
私の書きました内容が、皆様のお役に立つことが出来ましたら、私としましても、大変有難いことです。
<RS>
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