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すぐ始めたい人のための「先物取引入門」(7)「コモディティ価格を動かす要因」(高井ひろえ)


こんにちは!フィスコマーケットレポーターの高井ひろえです。

連載「先物取引入門」では、商品先物取引に関心がある方、取引を始めてみたい方に向けて商品先物取引の基礎と楽しさ、奥深さをお伝えしています。今回は、『コモディティ価格を動かす要因』に焦点を当て考えてみます。

■ 需給バランスを変化させる要因
商品先物市場では金や原油、とうもろこし、ゴムなどさまざまな商品(コモディティ)を取引していますが、価格を動かす決定的な要因はなんと言っても需要と供給のバランスです。需要(買いたい人)が供給(売りたい人)を上回れば価格は上昇しますし、その逆なら価格は下落します。このこと自体は直感的にもご理解いただけるはずです。


では、そのコモディティの需給バランスを崩して、どちらか一方に傾かせる要因とはどのようなものでしょうか。

例えば、農産物取引では「天候相場」という言葉があります。生育時期に必要な雨が降らない、日照時間が不足する、病害虫が発生する——ことは収穫量の多寡に直結し、需給バランスを崩すため、結果としてとうもろこしや大豆の価格を高くしたり安くしたりします。


しかし、より大づかみに言って、ほぼすべてのコモディティの需給に共通して影響するのは、世界経済の好不況、紛争や戦争などの地政学的リスク、為替の変動といった事柄なのです。そしてそうした情報に、私たちは新聞やテレビ、ネットを通じて毎日触れています。相場を動かす情報は、私たちの身の回りにあふれているのです。

■ 世界のダイナミズムが市場を動かす

日本時間の6月15日早朝、世界を揺るがすニュースが飛び込んできました。米国のドナルド・トランプ大統領が、約500憶ドル(約5兆5300億円)に相当する中国からの輸入品に対して制裁関税の適用を承認したというのです。

実は、この話には伏線があります。米国は4月の段階で中国からの輸入品1,300品目の「暫定リスト」を作っていました。ただ、その段階では「具体的にどうする」という点が欠けていたのです。しかし、今回は違います。「7月6日から」、まずは「818品目の中国製品に25%の課税を発動」することを明らかにしたのです。

こうなると中国も黙ってはいません。翌16日(日本時間の土曜日)にはすぐさま米国に対する報復措置を発表、米国と同額の約500憶ドル規模にのぼる米国製品や農産品等に25%の追徴課税を科すと発表しました。

経済の規模で世界1位と2位を占める米国と中国の間で貿易を巡る摩擦がエスカレートする恐れがにわかに高まりました。世界を巻き込む「貿易戦争」への拡大も危惧され、世界経済の混乱が予見されるに至ったのです。


世界の金融市場はこの一連の動静に敏感に反応しています。株も為替もコモディティも例外はありません。ただしその影響が可視化したのは日本よりも欧米が先でした。日本は土日を挟んで海外の動静を眺め、18日の月曜日に反応しています。

■ ニュースを見る視点をちょっと変えてみたい
東京商品取引所(TOCOM)の様子を見てみましょう。

18日の金先物価格は前日比78円安の4,541円に、原油先物価格は2,140円安の47,010円へと急落しています。6月中の前日比の1日当たり平均額は金が約17円、原油は約504円ですから、この日の急落ぶりがおわかりいただけるはずです。


この事例は、政治的混乱に伴う世界経済の不透明感の高まりから、投資家も実需もマーケットから一斉に資金を引き上げ、結果として価格が大きく下げの方向に向かった典型的なケースです。


しかし今回の金や原油の下げは、必ずしも「米中貿易摩擦」だけが原因ではありません。同時期に米国は中国のみならずEUやカナダ、メキシコそして日本を含む多数の国々に制裁関税を課すと表明していますし、FRB(米連邦準備理事会)の利上げ決定、ECB(欧州中央銀行)の量的緩和打ち切り、OPEC(石油輸出国機構)と非OPECの協調減産を巡るやり取りなどが同時並行的に起きていて、こうしたことも金や原油価格の変動とは無関係ではありません。


さらに直近では、米国のイラン核合意からの離脱、それに伴う経済制裁の一環として世界各国へのイラン産原油輸入ゼロ化を求める動きがあり、こうしたことも世界経済の混迷に拍車をかけています。


ニュースを見るとき、新聞を読むときに、ちょっとだけ相場の動きに思いを馳せると新しい見方、読み方ができます。ちょっと新しい自分を発見するのに商品先物相場をお役立てくださいね。

“すぐ始めたい人のための「先物取引入門」”は、商品先物取引の基礎をフィスコの見解でコメントしています。

フィスコマーケットレポーター 高井ひろえ



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