今月24日投開票のドイツ総選挙で想定通り与党が勝利すれば、ヨーロッパの政治リスクはいったん後退するとみられています。しかし、5月のフランス大統領選を受け発足したマクロン政権のその後の人気凋落をみると、ユーロ買いに安心感は広がりそうもありません。


9月24日のドイツ議会選(630議席)は、EUの守護神とされるメルケル首相の4選が焦点となっています。同首相率いるキリスト教民主同盟(CDU)、姉妹政党のキリスト教社会同盟(CSU)、社会民主党(SPD)による連立政権の維持がメーンシナリオです。勢力拡大を狙うSPDは、党首交代で支持率が一時CDUを上回ったものの、その後は失速。逆にCDUは今年行われた州議会選で3戦全勝し、今回の議会選も第1党を維持する見通しです。


一方、同じ日にフランス元老院(上院)選挙が行われます。全348議席中170議席が、非改選の元老院や下院、地方の議員などで構成される選挙人による間接投票で決まります。マクロン氏が旗揚げした新党「共和国前進」は6月の議会選で577議席中308議席を占める躍進ぶりでしたが、元老院選挙でも他党からのくら替えを含め40-50議席を確保する見通しです。40歳の若き大統領は、こうして政権基盤を強めつつあります。


しかし、それによってフランスの政治情勢はかえって不安定化する可能性もあるのではないでしょうか。マクロン氏の支持率は、就任直後の5月には65%だったのが3カ月後に36%まで急落し、不支持率の49%を下回っています。別の調査では、就任直後の支持率が歴代大統領では最低を記録したオランド氏の58%よりもさらに低い45%にとどまったことから、マクロン氏の不人気ぶりはオランド氏を凌ぐと指摘されています。


不人気の理由は、財政立て直しのための住宅手当の削減など政策面から、政治家としてのキャリアが不十分であるにもかかわらず態度が横柄だといった人格批判にも及び、マクロン氏は早くも窮地に陥っています。強大な権限を持っていても改革を進められなければ、回復著しいユーロ圏経済の腰折れにつながりかねません。また、テロと支持率に相関関係はありませんが、弱体化した政権の方がテロのターゲットになりやすいでしょう。


欧州中銀(ECB)のドラギ総裁は9月7日の理事会後に記者会見し、現行の資産買入れプログラム縮小について次回10月にも判断すると明言しました。同総裁はユーロ高に懸念を表明したものの、ECBの引き締めに反応した市場のユーロ買いで、2015年1月以来、実に1年8カ月ぶりにユーロは1.20ドル台を一時回復しています。ヨーロッパの政治リスクが後退したと思いたい投資家が、ユーロ買いを強めたとみられます。


しかし、10月15日に予定されるオーストリア議会選でも、厳しい移民政策を主張する政党が支持を集めており、軸足の異なる連立政権は交代するかもしれません。また、来年春までに行われるイタリア総選挙は、ユーロ圏離脱を主張する五つ星運動(M5S)の人気が落ちているとはいえ、EU懐疑派と連立を組む展開もありえます。政治情勢の不透明感は完全に払しょくされたわけではなく、ユーロ売り要因であることに変わりはありません。

(吉池 威)

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情報提供元:FISCO
記事名:「【フィスコ・コラム】欧州政治リスクは続きそうな気配が・・・