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安倍晋三元首相が残してくれた資産、統治のあり方は日本全体で組織学習すべき


安倍晋三元首相が7月8日の奈良での参院選の街頭演説中、山上徹也容疑者による凶弾に倒れ、亡くなられた。ここに謹んでご冥福をお祈りしたい。

第二次安倍政権は2012年12月26日から辞任する2020年9月16日で7年8ヶ月の長期に及んだ。その期間は憲政史上最長である。その評価の是非はあるものの、大きくは経済や安全保障の問題、細かくは貿易自由化、コーポレート・ガバナンス、女性活躍と働き方改革など、日本が直面する多くの問題に取り組んだといえる。

これらの問題への道筋は待ったなしであり、安倍政権が長期に渡って問題解決に取り組む体制をどのように構築できたのかは、真摯に学ぶべきであろう。

その調査は『検証安倍政権 保守とリアリズムの政治 (文春新書)/アジア・パシフィック・イニシアティブ』に詳しい。検証安倍政権によれば「野党が統治のあり方を組織学習することは、日本の政党民主主義にとって切実な宿題」と述べられている。前向きな議論には、真に牽制の効く対抗軸が必要であることは論を待たない。

一方、与党、改憲勢力も、その統治のあり方を組織学習することに意味があろう。7月11日に実施された第26回参院選において、自民党は単独で改選定数124の過半数である63を確保、与党で過半数124を大きく上回る146になった。また、改憲に前向きな改憲勢力(自民、公明、維新、国民など)も177と国会発議に必要な総議員の3分の2の水準である166を上回っている。改憲の議論という大切な時期を迎えるだけに、議席数に慢心せず、その統治のあり方を学ぶことは必要である。

詳しくは検証安倍政権に譲るが、安倍政権の好循環のシステムは、「いかに求心力を持ち続けるか」ということ、「政治的リアリズム」によると認識している。「経済(アベノミクス)と安全保障問題への対策推進」は、「政治的リアリズム」も絡めた打ち手、それによる「選挙での勝利」が「支持率の向上」や「安倍首相の権力」につながり、「党内/政権内の結束」と「政治資本の増加」の好循環をもたらしたものである。

例えば、第二次安倍政権が発足した2012年12月26日から参院選までの2013年7月21日までにおいては、政治的な軋轢を生みがちなTPP交渉への参加を表明して政治資本をすり減らした一方、金融緩和・財政出動・成長戦略の「3本の矢」からなるアベノミクスを前面に出し、政治的リアリズムを発揮して憲法改正を事実上撤回、政治資本を増加させ、参院選圧勝で求心力を高めた。

次いで2014年12月14日の衆院選までは、国家安全保障会議(NSC)の設置、特定秘密保護法の成立、靖国神社への参拝、集団的自衛権の限定的な行使を容認する閣議決定など政治資本を減らすような独自のカラーを打ち出しながらも、政敵である石破氏から谷垣氏に幹事長を交代し、消費税を先送りするという政治的なリアリズムを発揮して政治資本を蓄積、衆議院を解散して圧勝、求心力をさらに高めた。

2016年7月10日の参院選までにおいても、議論を呼ぶ安全保障関連法を成立させる一方、日韓慰安婦合意や消費税の再延期を表明によって参院選で大勝。いわゆる改憲勢力が衆参両院で改憲発議に必要な3分の2の水準を上回った。

なお、安全保障の政策や消費税は「政治資本の減少」要因であるという前提だが、消費税は財務省系の支持を高めるという側面もある。他方、政権後半のスキャンダルや新型コロナウイルスの蔓延は、「経済(アベノミクス)と安全保障問題への対策推進」も減速させ、負の連鎖を招いたことも事実である。

以上、安倍政権の取り組みを全て取り上げている訳でもないし、事細かな事象は割愛しているが、安倍政権がどのように多くのことを成し遂げてきたかを垣間見ることができる。我々は今、安倍晋三元首相が残してくれた資産、すなわち政策対応、統治のありようについて、日本全体でその教訓の学習を進めていくことが求められている。

フィスコ取締役 中村孝也

写真:つのだよしお/アフロ

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