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日経平均は続伸、円高一服が支えも米長期金利の基調転換は要警戒


 日経平均は続伸。81.71円高の27902.11円(出来高概算4億9969万株)で前場の取引を終えている。

 5日の米株式市場でダウ平均は482.78ドル安(−1.40%)と大幅反落。ISM非製造業景気指数が予想外に改善したため、長期金利の上昇を警戒した売りが先行。また、ウォール・ストリート・ジャーナル紙のFedウォッチャーが、賃金の上昇を受けてペースは減速も来年も利上げ継続の可能性が高いことに言及したことで、金利先高観が再燃し一段安となった。ナスダック総合指数は−1.93%と大幅続落。米国株安を受けて日経平均は116.34円安からスタート。ただ、先週末にかけて日本株の下落につながっていた急速な為替の円高進行が一服してきたことや、中国での経済再開への期待感も引き続き投資家心理を改善させ、寄り付き直後からは下げ渋る展開となった。朝方早い時間帯に上昇転換した後は前日終値近辺でのもみ合いが続いていたが、引けにかけては上げ幅を広げた。

 個別では、レーザーテック<6920>、アドバンテスト<6857>、東エレク<8035>など半導体関連株がハイテクの中で逆行高。為替の円安を受けて三菱自<7211>、マツダ<7261>、SUBARU<7270>の自動車関連のほか、任天堂<7974>が大きく上昇。米長期金利の上昇を背景に第一生命HD<8750>、T&DHD<8795>、三菱UFJ<8306>、みずほ<8411>など金融も高い。

 ほか、三菱重<7011>、川崎重<7012>、IHI<7013>の原発・防衛関連、三井物産<8031>、住友商事<8053>の商社、日本製鉄<5401>、JFE<5411>の鉄鋼などが上昇。第1四半期決算での定期顧客件数の伸長が評価につながったファーマフーズ<2929>、業績予想の大幅上方修正と増配を発表したダイコク電機<6430>がそれぞれ急伸。バイオ医薬品の受託生産強化のための投資が伝わっているタカラバイオ<4974>は大幅高。月次売上が好感されたクスリのアオキ<3549>、エービーシー・マート<2670>も高い。

 一方、ソフトバンクG<9984>、ソニーG<6758>、メルカリ<4385>、リクルートHD<6098>、HOYA<7741>、エムスリー<2413>、ZHD<4689>などのハイテク・グロース株が総じて軟調。東証プライム市場の値下がり率上位にはMSOL<7033>、SREHD<2980>、ギフティ
<4449>、マネーフォワード<3994>、Sansan<4443>などの中小型グロース株が多く入った。ほか、サッカーワールドカップでの日本の敗退を受けてサイバー<4751>、ハブ<3030>など関連株が大きく下落している。

 セクターでは保険、鉄鋼、海運が上昇率上位となった一方、鉱業、サービス、精密機器が下落率上位となった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の40%、対して値下がり銘柄は55%となっている。

 日経平均は朝方の売り先行後は下げ渋って反発に転じている。下向きの5日移動平均線が25日線を上から下に抜けるデッドクロスが示現しそうな一方、75日線がしっかりと下値支持線として機能していて、前日の米国株が大きく下落していたことを踏まえると、かなり健闘していると言えそうだ。

 一方で、大きく下落しているのがマザーズ指数など新興市場の銘柄だ。マザーズ指数は前日に1.5%と大きく下落したが、本日も1%を超える下落率で推移。前日は、ロックアップ解除への警戒感が高まったANYCOLOR<5032>をはじめ、急落する銘柄が散見され、荒い様相となった。今月半ばから本格化する新規株式公開(IPO)ラッシュを前に、換金売り圧力なども新興株には重石として働いているようだ。

 また、来週の米連邦公開市場委員会(FOMC)を前に神経質になりやすいタイミングにおいて、これまで低下基調にあった米10年債利回りが反発に転じてきていることも新興株をはじめ、グロース株の上値抑制要因として働いていると考えられる。米長期金利が反発に転じた理由は、言わずもがな、米国で相次いだ強い経済指標だ。

 先週末に発表された米11月雇用統計では、雇用者数の伸びが市場予想を大幅に上回っただけでなく、平均賃金の伸びが前月比で予想の2倍となったほか、労働参加率が低下するなど、総じて逼迫した労働市場が続いている様子が示唆された。加えて、前日に発表された米11月ISM非製造業景気指数は56.5と、10月(54.4)からの低下が想定されていた市場予想(53.5)に反して大きく上昇した。先週、ISM製造業景気指数の50割れで景気後退懸念が強まっていたことを踏まえれば、こうした懸念が緩和されたとポジティブに捉えたいところだが、むしろ、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策の舵取りやマーケット関係者の先行きの予想を困難にする結果として捉えられ、あまり喜べない。

 ISM非製造業景気指数の項目をみると、景況感が64.7と10月(55.7)から大きく上昇。年末商戦による駆け込み需要などが影響した可能性もあるが、やや強すぎる印象だ。加えて、支払価格の項目は70.0と10月(70.7)から僅かに低下したものの、依然として拡大・縮小の境界値である50を大幅に上回る状態で、サービス分野のインフレ圧力のしぶとさが窺える内容となった。

 製造業指数で50を割り込み、景気後退懸念が強まる一方、労働市場やサービス分野では需要の過熱感が残っていて、これではFRBは利上げを続けざるを得ないだろう。また、市場の予想通り、来年3月会合で利上げが打ち止めになったとしても、すぐには利下げに転じることは期待しにくい。かえって、非製造業景気指数の方も50を割り込んでくれていた方が、利下げ転換期待が高まって株式市場には好都合だったかもしれない。

 米10年債利回りは10月下旬に一時4.3%を超えた後は低下が続き、先週末には3.49%
まで低下していた。しかし、前日は3.59%へと反発。週足チャートでみると、ちょうど26週移動平均線の手前から上昇する形となっている。7月にも同線が下値支持線として機能し、そこから10月下旬まで大幅上昇した経緯があり、目先は金利の反発基調が続きそうだと考えられる。

 来週に米11月消費者物価指数(CPI)や米FOMCを控えているタイミングでもあることから、グロース株は、今週は小休止となりそうだ。こうした中、緩やかながら、中国での経済活動正常化への動きが期待されていることもあり、今週はリオープン・インバウンド関連などの内需系企業に相対的な妙味が出てきそうだ。
(仲村幸浩)
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