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神奈川歯科大学、低脂肪摂取時にフラクトオリゴ糖の効果が発揮されることを発見



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神奈川歯科大学病理・組織形態学講座 環境病理学分野 槻木 恵一教授、神奈川歯科大学短期大学部 歯科衛生学科 山本 裕子准教授らの研究グループは、先行研究で判明している唾液中Immunoglobulin A(IgA)*1レベルを上昇させるというフラクトオリゴ糖*2の効果が、高脂肪摂取時には現れず、低脂肪摂取時に発現することを初めて明らかにしました。これにより、唾液中IgAレベル上昇には、フラクトオリゴ糖摂取により大腸で産生された短鎖脂肪酸だけでなく、食事中の脂肪量が影響していることが判明しました。
さらに低脂肪・フラクトオリゴ糖摂取時に、カテコールアミン、ドーパミンおよびノルエピネフリンの合成における律速酵素で、交感神経活性化のマーカーであるチロシンヒドロキシラーゼ*3濃度が、顎下腺で上昇することを見出しました。唾液中IgAは、口腔という粘膜免疫の最前線で上気道感染症予防に重要な役割を果たしています。易感染性である高齢者や基礎疾患を有する者が上気道感染症由来の肺炎を予防するにあたって、フラクトオリゴ糖のような難消化性糖類*4を摂取するだけでなく、1965年頃の日本の低脂肪メニュー摂取を心がけることによる、唾液中IgAレベル上昇の効果が期待されます。
本研究成果は2021年4月10日に「Nutrients」に掲載されました。


【研究の背景】
IgAは粘膜免疫の主役であり、呼吸器・消化管の粘膜表面で感染防御機能を担っています。「呼吸器と消化管の入り口」として重要な役割を果たす口腔の唾液中には多種の抗菌物質が含まれていますが、中でもIgAが最も主要な抗菌物質で、唾液中IgAが上気道感染症の感染防止に大きく関与していることは数多く報告されています。超高齢社会の日本では上気道感染症から引き起こされる高齢者の肺炎の増加が社会問題となっており、早急な予防対策が求められています。唾液中IgAレベルを食事要因で上昇させることができれば、易感染性である高齢者や基礎疾患を有する者の肺炎予防に簡便で効果的と考えられますが、食事内容が唾液中IgAレベルに与える効果は未だ十分に判明していません。
特に免疫機能を低下させることが報告されている高脂肪食摂取が唾液中IgAレベルに与える影響は明らかにされていません。


【これまでの研究の経緯】
本研究グループでは大腸でIgA産生を増加させる難消化性糖類に注目し、ラットに4週間フラクトオリゴ糖を摂取させると盲腸内容物中IgA濃度だけでなく唾液中IgA分泌速度も上昇すること、フラクトオリゴ糖摂取時に盲腸で産生が上昇する短鎖脂肪酸*5が唾液中IgA分泌速度上昇に影響していることを明らかにしました。またポリデキストロース*6摂取により大腸で産生が増加し、血中に吸収された短鎖脂肪酸が唾液中IgA分泌速度に影響を与えていることを見出しました。これら一連の研究により、腸管が唾液腺に影響を与えている「腸-唾液腺相関」という新しいメカニズムを発見しました。しかし唾液中IgAレベルを低下させる要因は明らかになっていませんでした。


【研究の成果と意義】
本研究では、ラットを用いた動物実験により、脂肪摂取量の違いとフラクトオリゴ糖摂取の有無が唾液中IgA分泌速度に与える影響を検討しました。ヒト栄養指導への応用を想定して、高脂肪飼料は脂肪含有量をカロリー比40%(現在のヒトにおける高脂肪摂取上限)、低脂肪飼料は脂肪含有量をカロリー比14%(1965年の脂肪摂取量)に設定しました。ラットを「低脂肪・無繊維飼料摂取」、「低脂肪・フラクトオリゴ糖添加飼料摂取」、「高脂肪・無繊維飼料摂取」、「高脂肪・フラクトオリゴ糖添加飼料摂取」の4群に分け、肥満の影響を排除するため各群の摂取熱量を等しくなるように調整して飼料を摂取させました。
10週後、低脂肪・フラクトオリゴ糖添加飼料摂取群の唾液中IgA分泌速度、顎下腺チロシンヒドロキシラーゼ濃度(交感神経活性化のマーカー)、血清中IgG濃度(全身免疫状態の指標)が高値となりました(図:1)。唾液中IgA分泌速度と顎下腺チロシンヒドロキシラーゼ濃度および血清中IgG濃度には正の相関が認められました(図:2)。また脂肪摂取量と血清中IgG濃度および顎下腺チロシンヒドロキシラーゼ濃度には負の相関が認められました(図:2)。
本研究により、唾液中IgA分泌速度にはフラクトオリゴ糖摂取により盲腸で産生が増加した短鎖脂肪酸だけでなく、食事中の脂肪量が影響していることが判明しました。脂肪摂取量が全身免疫状態や交感神経活性化に関係しており、その結果唾液中IgA分泌速度に影響を与えている可能性が見出されました。唾液中IgA分泌速度を上昇させるには、フラクトオリゴ糖のような難消化性糖類を多くし、かつ1965年頃の日本の低脂肪なメニューを摂取することが効果的であることが明らかになりました(図:3)。

画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/261268/LL_img_261268_1.jpg
図:1
画像2: https://www.atpress.ne.jp/releases/261268/LL_img_261268_2.jpg
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画像3: https://www.atpress.ne.jp/releases/261268/LL_img_261268_3.jpg
図:3
【今後の展開】
本研究により、唾液中IgA分泌速度には盲腸で産生された短鎖脂肪酸だけでなく、脂肪摂取量が影響を与えていることが判明しました。易感染性である高齢者や基礎疾患を有する者に対して、「高発酵性の食品だけでなく低脂肪のメニュー摂取を心がけることが、唾液中IgAレベルを上昇させ上気道感染症予防につながる」という食事指導を行う際のエビデンスを得ることができました。今後、難消化性糖類や脂肪だけでなく、唾液中IgAレベルに影響を与える食品の探索と、食事要因による唾液中IgAレベル変化のメカニズム解明を続けていく予定です。


【論文】
英文タイトル:Effect of High Fat and Fructo-Oligosaccharide Consumption on Immunoglobulin A in Saliva and Salivary Glands in Rats
タイトル和訳:高脂肪とフラクトオリゴ糖摂取がラットの唾液中IgAレベルと唾液腺に与える影響
掲載誌 :Nutrients
DOI :10.3390/nu13041252


【研究支援先】
本研究は、文部科学省科学研究費補助金No.15H06809, 17K11694の支援により行われました。


【用語解説】
*1:Immunoglobulin A(IgA)
免疫グロブリンのクラスの一つで、分泌液の主要抗体タンパク質

*2:フラクトオリゴ糖
スクロースのフルクトース側に、フルクトースが最大3個までくっついたものの総称

*3:チロシンヒドロキシラーゼ
ノルアドレナリンとアドレナリンの前駆体であるドーパミンの前駆体

*4:難消化性糖類
ヒトの消化酵素により消化されない糖質

*5:短鎖脂肪酸
脂肪酸の一部で、炭素数6以下のもの。具体的には酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、酪酸、イソ吉草酸、吉草酸、カプロン酸、乳酸、コハク酸を指す

*6:ポリデキストロース
トウモロコシ由来のブドウ糖を主原料とし、人工甘味料ソルビットとクエン酸を加えて生成された人工の水溶性食物繊維。血糖値の上昇抑制、血中コレステロール減少、腸内環境改善といった効果が知られている。
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