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赤い文字の「共産党スローガン」が町中に溢れる、中国南部・王林の路地裏を歩いてみた【村田らむ】



中国では国家主席の任期の規定をなくす憲法改正を可決した。つまり今までは国家主席でいられるの は10年までだったが、今後はいつまでもトップでいられる。習近平総書記の長期政権が実現しそうである。


中国、14年ぶり憲法改正 習氏の長期政権に道 https://t.co/JfdLIpzLdf

— 朝日新聞(asahi shimbun) (@asahi) 2018年3月11日

そんな習近平総書記のスローガンは「中華民族の偉大な復興」である。


2017年の夏、僕は中国南部に旅行した。桂林を経由して玉林にたどり着いた。


僕は路地裏を探索するのが好きなので、ウロウロと歩き回りたい。中国ではほとんどのスマートフォンのアプリが使えないが、それでもGPSは使えた。つまりグーグルマップで現在地を知ることができた。だから一人で歩いても良かったのだが、ガイドをやとっていたので話しながら歩いた。


「私、玉林に来るのははじめてですね。私は桂林出身の漢民族なんですが、玉林は少数民族であるチワン族の自治区です」


少数民族は、発音、服装、食べ物などが違うという。見た目も昔は違ったが、今は血が混じっている人も多くなり、分からなくなってきているそうだ。


ひょっとして少数民族は差別されているのかな? と思ったがそうでもないらしい。


「少数民族が漢民族になるのは簡単です。申告すれば漢民族になれます。ただ漢民族が少数民族になることはできません。少数民族は学校の入試試験が簡単になるなど、優遇措置があるのでうらやましがられてますね」


とのことだ。


桂林は漢民族が主流だが、そこから南は少数民族が増えるそうだ。


デパートなどが並ぶ表通りから、裏通りに入る。予想通りとても良 い雰囲気だ。



古い建物、グチャグチャな電線、旧正月のお祝いに門の両脇に貼られた貼られた赤い対聯(ツイレン)。


特に良いのが、壁に直接赤いペンキで書かれたスローガンだ。壁に赤字でスローガンが書かれているのは、いかにも共産国家という感じがする。



テンプレート(型)を使って書いたものが多かったが、手書きで書かれたものもあった。


「犯罪はダメですよ、ギャンブルはやめましょう、などと書いてありますね。こちらは一人っ子政策について書かれています」


と一つ一つ解説してもらった。


裏通りだけに、犯罪抑止のものが多いようだ。落書きもテンプレートを使ったものが多く、仕事の内容と電話番号がそこらじゅ うに書かれていた。「淋病、梅毒治せます」と書かれた張り紙もあった。



表通りには、国のスローガンがよく書かれていた。玉林駅には中国共産党が2012年以降広く宣言している『社会主義核心価値観』がでかでかと貼られていた。


『富強、民主、文明、和諧・自由、平等、公正、法治・愛国、敬業、誠信、友善』


である。


これは街中の様々な場所に貼られていた。中国共産党の強さを知ることができる。



内容は別に普通のことを言っているのだが、そこら中に貼られているのを見るとなんとも怖い感じがした。


「あ、この古い文字は毛沢東時代のものですね。だいぶ消えてしまっていますが『毛沢東バンザイ』みたいなことが 書かれています」国民党と共産党が内戦をしていたのは60年くらい前の話だから、その頃のスローガンなのだろう。ということは建物はもっと古いものになる。


「明~清時代の建物もたくさんありますよ。特に珍しくありません。普通に家として使っていますね」




清が成立したのが1636年。ラストエンペラー溥儀が退位したのが1912年だから、少なくとも100年の歴史がある。下手をすると400年以上の古い建物もあるということだ。面白い。


路地裏でカシャカシャ写真を撮っているのは不信だったらしく、住人のおばあさんに話かけられた。ガイドが代わりに答えてくれた。


「何してるんだと聞かれたので、日本人は裏通りの写真を撮るのが好きなんだと答えておきましたよ」


なんか変な誤解を中国にバラまいてしまったなと思っていたら強い立ちくらみがした。


玉林は緯度でいえば沖縄よりも南になる。激しい日差しに軽い熱中症になってしまったらしい。デパートに緊急避難して、しばらく涼ませてもらった。



 

村田らむ <ライター / 漫画家 / カメラマン / イラストレーター>

1972年生まれ。キャリアは20年超。ホームレスやゴミ屋敷、新興宗教、富士の樹海などへの体験取材、潜入取材を得意としている。著書に『ホームレス大博覧会』(鹿砦社)、『ゴミ屋敷奮闘記』(有峰書店新社)など多数。

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