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イモムシは「天の川くらい複雑」 精緻な描写で世界が評価の画家


 「まるで星をちりばめた天の川のよう」。イモムシの美しい模様に魅せられ、描き続けている自称「イモムシ画家」の桃山鈴子さん(51)=三重県四日市市。自宅で飼育しながら、あらゆる角度から観察し、背中からおなかまで「展開図」として写し取る。独自の視点で表現した作品集が国内外で高く評価されている。【松本宣良】

 植物の枝にとまったイモムシを虫眼鏡などでじっくり見ながら、丸ペンで細かい点を置いていく技法で精緻に描く。一見、緑や茶一色のようだが、さまざまな色や模様があり、「天の川の星々を全部、紙に写すぐらいな複雑さを感じる」。日々の生活はイモムシ中心に回っている。脱皮などで模様や形が変化するため一瞬一瞬をおろそかにできず、寝る間も惜しんで作業する時もあるという。

 写真を撮って描くこともできそうだが、基本は対面だ。「すごく神経質なイモムシもいれば鈍感なのもいる。生きているイモムシとの対話が、描きたいという気持ちに通じていく」。ずっと眺めていると、時にイモムシが「すごい大きな存在」になり、自身がちっぽけに見えたりもするという。

 イモムシを初めて飼ったのは、小学校3年生の頃。幼少期を過ごした米国ニューヨークから帰国後、東京での学校生活になじめず、暗い日々を送っていた。偶然、家の庭で米国で大好きだったハチドリそっくりの昆虫とその幼虫を見つけ、「育ててみたい」と思ったのがきっかけだ。

 大学卒業後、美術を学ぶ私塾に通ったり、造園会社で働いたり、鉄の彫刻を制作したり――。やりたいことを模索し苦しんでいた30代半ば、下を向いて歩いていたら、たまたまクロアゲハの幼虫が目に入った。「きれいな模様がちりばめられている体を見て、紙に写し取りたいと思った」。再びイモムシとつながり、今度はライフワークに。半生を振り返れば、「イモムシに助けられ、立ち直って今がある。何か『恩人』でもあるんですよ」

 出版した画集「わたしはイモムシ」(2021年)は、広告デザインの国際賞「ニューヨークADC賞」で銅賞に選ばれ、絵本「へんしん すがたをかえるイモムシ」(22年)も入賞し、世界的に高い評価を受けた。

 コロナ禍を受け4年前に夫の故郷、四日市市に移住してからは、近隣で採集したイモムシを飼って描いている。夢は「世界中にいる、土地固有のイモムシを描けたらいいな」。これからも神秘的な生きものと向き合い続ける。

 ■人物略歴

桃山鈴子(ももやま・すずこ)さん

 東京生まれ。絵を描く用紙はイモムシのフンで染めている。「イモムシのライフサイクルの中の隅っこに自分もちょっと加えさせてもらっている感じ」。虎の皮の敷物のような展開図は「それぞれの部分の模様を頭の中でつなげて描いています」。夫はイラストレーターの伊藤弘通(ヒロミチイト)さん(52)。

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