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海外では「市民の足」 ライドシェアを英国と中東で使ってみた


 運転手不足が深刻化する中、一般のドライバーが自家用車を使って有料で乗客を運ぶ「ライドシェア」の解禁に向けた検討が政府内で進んでいる。日本ではタクシー業界の反対もあって実現してこなかったが、欧米やアジアでは既にタクシーと同様、市民の「足」となっている。ライドシェアとはどんなサービスなのか。英国で記者が体験してみた。

ボタンを押して5分で配車

 2023年10月のある日、私は困っていた。ロンドン郊外の町ブレッチリーでの取材を終え、大学都市オックスフォードに移動しようとしたが、鉄道会社の都合で急きょ接続の列車が運休してしまった。

 直線距離では約45キロ。鉄道では乗り換えを含め2時間以上かかるが、車だと1時間で着く。タクシーは近くに1台も通っていない。

 そこで私は、米配車サービス大手「ウーバー・テクノロジーズ」による配車サービスを利用した。スマートフォンのアプリを操作し、目的地をオックスフォードに設定してボタンを押すと、すぐに数台の車が画面上に現れる。運転手の名前、顔写真、目的地までの料金も表示される。その1台を選ぶと、5分後に韓国製の起亜(キア)自動車が到着した。

運転手はギグワーカー

 「オックスフォードですね。約1時間です」

 運転するのはイラン出身のザーラさんという40代の女性。普段は飲食店に勤務するが、フルタイムではないため、空いた時間でウーバーの仕事をしている。公共交通機関の少ないロンドン郊外などの地方では、一定の需要があるという。

 ウーバー運転手は、インターネットで仕事を請け負う「ギグワーカー」の代表格だ。その場限りの演奏を意味する俗語「ギグ」から派生した言葉で、好きな時間に自由に働ける仕事の形を指す。

 英国にはウーバーの他、エストニア企業の「Bolt(ボルト)」など複数の配車サービスがある。ロンドンで15年からウーバー運転手をしているモハメド・トフォズルさん(50)は、「競争は激しいですが、ロンドンは観光客が多く、常に需要があります」と話す。ほぼ毎日働けば、多い月で3000ポンド(約56万円)以上の月収になるという。

マナー悪い運転手も

 私が初めてウーバーを利用したのは、中東を担当するカイロ特派員だった19年6月。出張先のサウジアラビア西部ジッダでタクシーがつかまらず、ウーバーを呼んだ。国土の9割が砂漠で、夏場の気温が40度に上るサウジでは、日陰のない場所での長時間待機は体力を消耗するため、車が到着してほっとしたのを覚えている。エジプトでもウーバーは重宝した。タクシーは「ぼったくり」をする悪質な運転手もいたが、ウーバーは最初から料金が表示される「明朗会計」のメリットがあった。

 確かに便利だが、批判もある。配車サービスの運転手はタクシー運転手ほど特別な訓練を受けていないため、「急な割り込みをするようなマナーの悪い運転手もいる」(トフォズルさん)のも現実という。インドでは14年にウーバー運転手が乗客の女性をレイプしたとして、その後、終身刑を言い渡される事件もあった。

 一方、ロンドンでタクシー運転手になるには難しい試験がある。ロンドン交通局によると、「中心部チャリング・クロス駅から半径6マイル(約9・6キロ)の320通りの道」などを全て暗記する必要があるという。ロンドン名物の黒塗りタクシー「ブラックキャブ」は17世紀の馬車がルーツとされ、古風で大きな車体が有名だ。その仕事に誇りを持つ運転手も多く、「私たちはどんな道も頭に入っている」「ウーバー運転手は渋滞の抜け道すら知らない」との声も聞く。

コストかさみ料金上昇

 ただ、配車サービスは利用者にとってメリットも大きい。ロンドン在住の60代の日本人男性は、「アプリを通じて手配でき、表示された料金が引き落とされるので、不当に高く請求されることはありません。ペット同乗可能な車があるのもありがたいです。ブラックキャブ(タクシー)よりも安価で助かっています」と話す。

 ロンドン市内で、試しに同じ距離を移動して料金を比較してみた。ウーバーが16・8ポンド、タクシーは23ポンドだった。中東でも同様で、総じてウーバーの方が安かった印象だ。

 ただ、ウーバーの料金も徐々にタクシーに近付いているとの指摘もある。英最高裁は21年2月、ウーバー運転手はウーバー社の「従業員」であり、「個人事業主」ではないと指摘。英メディアによると、この司法判断を受けてウーバー社には運転手への最低賃金以上の支払いや有給休暇付与に加え、多額の税金を払う必要も生じたため、運営コストが上昇。料金も上がっているという。【篠田航一】

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