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村上海賊の島 歴史守るため告げた「別れ」


 瀬戸内海に浮かぶ国史跡・能島城跡(のしまじょうあと)。能島(約1・5ヘクタール)と、隣接する鯛崎(たいさき)島(約0・3ヘクタール)からなり、村上海賊の主要家系・能島村上氏の拠点とされた無人島だ。地元の愛媛県今治市教委は長期的な整備基本計画を決め、保存と活用整備の工事に2022年度から取り組んでいるが、ある樹木との決別が植生管理の最重要課題とされた。その樹木は--。

 春に能島全体を彩ったソメイヨシノ。江戸末期以降に誕生した種で、中世に活躍した村上海賊と直接の縁はないが、島の平らな場所に昭和期に植生された。毎年4月の満開時は、「能島の花見」として対岸からシャトル船が土日の2日間運航され、多くの花見客に愛された。

 だが、ソメイヨシノの根は地表近くにある村上海賊時代の遺構面まで伸び、一部で遺構や遺物が破壊されたことが発掘調査で分かってきた。18年の西日本豪雨と19年の台風でも、島は計6カ所、717平方メートルの土木災害を受けたが、ソメイヨシノの根元部分が平地部に盛り上がり、その結果へこんだ部分に多量の雨水が流れ込んだことが市教委の原因調査で判明した。島にはクヌギなどの高い木も茂って岩礁の亀裂に根が入り込んでおり、斜面崩壊や岩盤崩落の原因の一つと考えられた。

 このため市教委はクヌギなどとともに、ソメイヨシノの伐採に22年夏、着手した。村上海賊時代の遺構面まで、地表から70センチほど離れた場所にある10本ほどを残し、地表から20~30センチと遺構面が近い場所にある約120本は伐採し、根を取り除いた。「能島の花見」が地域に親しまれてきたことに配慮し、2度の地元説明会で理解を求めたうえ、地域にある史跡以外の公園などで能島のソメイヨシノの流れをくむ桜を残すことも考えられている。

 市教委は西日本豪雨などの災害復旧工事を終え、23~24年度は海岸部に自然石や砂を入れて波による浸食の軽減を図る。現地近くで3日間の総雨量426ミリという西日本豪雨時の最大雨量を超える雨にも耐えられるよう、可能な場所には雨水の配水管を土中に入れる工事も既に行い、これまでに延長約500メートルの管を巡らせた。

 島の整備工事では土が露出した部分を覆う植生土囊(どのう)や植生マットを使う。本来は草の種を含ませて育成を急ぐ場合が多いが、瀬戸内海国立公園内にあることから種は含ませず、島に自生する草が育つのを待つ。市村上海賊ミュージアムの白石聡課長補佐は「村上海賊の本拠地として、本来の風景をできる限り残したい」と城跡の保護に意欲を見せている。【松倉展人】

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