ロイター通信は28日、台湾当局の情報として、台湾を代表するロックバンド「メイデイ（五月天）」に対し、中国当局が「台湾は中国の一部」という自国の主張を支持する公式な発表を行うよう圧力をかけたと報じた。メイデイは中国や日本でもライブを開催するなど内外で高い人気を誇る。ロイターは、台湾の安全保障当局関係者の証言や内部文書に基づく情報としてこの問題を報じ、来年1月13日の台湾総統選への介入だとの台湾当局の見方を伝えた。
報道に対し、中国政府で台湾政策を担当する国務院台湾事務弁公室は28日、台湾メディアの取材に報道官名の書面で「徹頭徹尾、フェイクニュースだ」と回答。ロイターが根拠にした内部文書は民進党政権がでっち上げたものだと批判した。
メイデイを巡っては、中国のインターネット上で今年11月の上海公演で「口パク」行為があったとの疑惑が浮上。その後、中国メディアは、違法行為の可能性があるとして上海市当局が捜査に着手したと伝えた。これもメイデイ側に対する圧力の一環だと台湾側はみているという。所属会社は口パクを否定している。
ロイターの報道を受けて、民進党の総統候補、頼清徳副総統の陣営は「中国は手段を選ばず、全力で選挙に影響を及ぼそうとしている」と批判するコメントを発表。最大野党・国民党は「事実なら両岸（中台）の正常な交流の助けにならず、厳正に抗議する」とした一方、報道の影響は甚大として、情報源とされる政府関係者に社会へ説明するよう求めた。
2016年の総統選でも芸能界を巻き込む騒動があった。当時、台湾の女性芸能人が韓国テレビ番組の収録で「中華民国（台湾）」の国旗にあたる「青天白日満地紅旗」を持っていたことが中国で問題視され、ネット上で抗議が拡大。投票日前日に女性が謝罪動画を公開する事態になった。この際は台湾で女性への同情が広がり、民進党の蔡英文総統が大勝した選挙結果に影響を与えた可能性が指摘されている。【台北・林哲平】
