福岡県古賀市の国道交差点を車で右折中、赤信号で進入してきた対向車線のバイクに衝突して運転者にけがをさせたなどとして、自動車運転処罰法違反（過失致傷）と道路交通法違反（不申告）に問われたナイジェリア国籍の男性被告（53）＝同市＝を無罪とした1審・福岡地裁判決（10月）について、福岡地検は控訴期限の10日までに控訴しなかったと明らかにした。男性の無罪が確定した。
判決によると、男性は2021年10月7日午後7時ごろ、古賀市中央の国道3号で普通乗用車を運転中、交差点を右折しようとした際に、対向車線を直進してきたバイクと衝突。バイクを運転していた30代男性が骨折などのけがをした。
バイクは赤信号を無視して交差点に進入していたが、福岡地検は「見通しが困難だったのに安全を十分に確認しなかった。事故発生を警察に申告しなかった」として、ナイジェリア国籍の男性を起訴した。
1審判決は「事故はバイク側のほぼ一方的な過失で生じた。被告には、赤信号を無視して進入してくることまで予見し、安全を確認すべき注意義務はない」などとして男性の過失を否定した。
その上で、事故を通報しなかったとする道交法違反についても、事故の原因はバイク側にあり、先に現場を立ち去ったのもバイク側だったことなどから「刑罰をもって臨むほどの違法性があるとはいえない」と判断。いずれも無罪とした。
この事故では、捜査当局がバイクの赤信号無視を把握しないまま、22年3月に男性を略式起訴。福岡簡裁が罰金30万円の略式命令を出したが、男性は不服として正式裁判になった。弁護側の指摘を受け、検察側が再捜査した結果、バイクの赤信号無視が判明し、起訴状の内容を変更（訴因変更）していた。
福岡地検の細野隆司次席検事は「判決内容を精査した結果、控訴しないこととした」とコメントした。【志村一也】
