全国で相次いだ広域強盗事件のうち、2022年12月に広島市の店舗兼住宅で住人男性らが襲われけがをした強盗事件で、「キム」と名乗る人物が実行役の1人に「殴ったり蹴ったりしないと報酬を渡さない。容赦なくやってください」と電話で指示していたことが、捜査関係者への取材で判明した。警視庁捜査1課は指示役らが金品を奪う強い意思を持っていたとみて、詳しい経緯を調べている。
捜査1課は3日、この事件に指示役として関与したとして、フィリピンを拠点とした特殊詐欺グループのリーダー格とされる渡辺優樹（39）、今村磨人（39）、藤田聖也（39）の3容疑者を強盗殺人未遂と住居侵入容疑で再逮捕した。
一連の事件のうち、指示役とされる容疑者が逮捕されるのは5件目。3容疑者は「ルフィ」「キム」などと名乗り指示を出していた疑いが持たれており、唯一被害者が死亡した東京都狛江市の事件（23年1月）にも関与したとして9月に逮捕されている。
3人の逮捕容疑は22年12月21日午後7時半ごろ、実行役らと共謀し、広島市西区の店舗兼住宅に押し入り、高齢夫婦とその息子に暴行し、現金約250万円や高級腕時計など計約140点（約2439万円相当）を奪ったとしている。息子は工具で頭を殴られ意識不明の重体となり、両親も負傷した。捜査1課は3人の認否を明らかにしていない。
捜査関係者によると、広島市の事件でも「キム」と名乗る人物から実行役に指示の電話があり、スマートフォンのスピーカー機能で、現場に押し入ったとされる6人全員が聞いていたとみられる。
また、「キム」や「ミツハシ」を名乗る人物が、秘匿性の高い通信アプリ「テレグラム」で、事件現場と日付を示すとみられる「広島12/21」というタイトルのグループチャットを使い、実行役に指示をしていたことも判明したという。
東京地検は3日、狛江市の事件について、渡辺、今村、藤田の3容疑者を強盗致死罪などで起訴した。【木原真希、岩崎歩、菅健吾】
