かつて京都府福知山市―旧大江町河守の12・4キロを結んだ私鉄「北丹鉄道」の1923年開通から、22日で100年を迎える。地元鉱山の閉山や自家用車の普及などの影響を受け、71年に運行を休止したが、現在の京都丹後鉄道・宮福線の礎となっている。福知山市内では北丹鉄道100周年記念展が開かれている。
「自転車の方が速いくらいだった」「先頭車両が先に行ってしまい、1両がおいてけぼりに」。30日まで100周年記念展示が行われている福知山市大江町河守の市立図書館大江分館には、住民らが北丹鉄道の思い出を投稿するコーナーが設けられている。
「『待ってー』と言えば（列車が）待ってくれたと母が言っていた」「乗り遅れたら走って追いかけて乗り込めた」「北丹鉄道に乗り戦場へ向かう父を見送ったすぐ後に玉音放送があり、父はとんぼ返りで北丹鉄道で帰ってきた」などの証言も寄せられている。
記念展では、図書館が所蔵する北丹鉄道関連書物など資料約20点を展示。開通100周年の22日は、図書を借りた先着30人に手製の「北丹鉄道しおり」がプレゼントされる。
福知山城公園に8月オープンした福知山鉄道館「フクレル」は、第1回企画展示「北丹鉄道の記憶」を開催中だ。1933年の福知山西駅の時刻表のほか、70年の運賃表、ディーゼル機関車の銘板、駅名看板の実物などを展示している。企画展は年内開催の予定。
北丹鉄道は、福知山と宮津を鉄道で結ぶという1890年代の運動から、1923年に開業にこぎつけた。だが、目標とした日本海まで線路がつながることはなく、71年に営業休止となった。
しかし、88年に第三セクター「宮福鉄道」が開通。19世紀末以来の地域の願いは、現在の京都丹後鉄道・宮福線に引き継がれている。【庭田学】
